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読売新聞│配信日:2019年9月9日│配信テーマ:洋楽  その他  

[ALL ABOUT]コラブロ 響く劇的ハーモニー


 ◇Pop Style vol.663
 ミュージカルの名曲を絶妙なハーモニーで歌う男性グループ、コラブロ。イギリスのオーディション番組での優勝を機にスターの座をつかんだ4人が、11月に約1年半ぶりとなる来日公演を行う。ロンドンにいる彼らは、音楽と日本への愛を存分に語ってくれた。
 
 4人が迎えてくれたのは、ロンドン郊外のハムステッドで行われた音楽フェス。北部の標高の高い地域で、さながら軽井沢のよう。自然豊かな環境でリラックスしていた彼らは、実にフレンドリーに取材に応じてくれた。「Tシャツやジーパンでオーディションに出たのは、ミュージカルの固定観念を変えたかったからなんだよ」とマットさん。
 2014年、彼らが英国の人気番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出演した時、審査員たちは嘲笑するような表情を浮かべていた。さっきまで街で遊んでいたようなラフな姿の兄ちゃんたちが、間違ってステージに上がってしまったかのよう。彼らが本当にミュージカルを歌う——? ところが、「レ・ミゼラブル」の「STARS」を歌い出すと、会場はざわめき、審査員たちは目を丸くした。あまりに素晴らしい歌声、一人一人の声は個性が異なるのに、合唱すると溶け合って一つになる絶妙なハーモニー。皆、立ち上がって惜しみない拍手を送った。
 ■「好相性」予期せず
 その後、破竹の勢いで勝ち上がり、同番組でも有数の高い得票率で優勝を決めたコラブロだったが、番組に挑戦した時は結成からわずか1か月だったというから驚く。「初めてみんなでハーモニーを奏でた時、声の相性の良さに自分たちでもびっくりしたんだ。予想していなかった。全くの運だったよね」と、マットさんは振り返る。
 彼らはほとんどが見知らぬ同士。メンバーを募るため、SNSを通じてオーディション開催を呼びかけたのは、マットさんとジェイミーさんだった。求める理想のメンバーは「面白い人」。ミュージカルの審査のように、歌も踊りもできる人という画一的な基準を設けたくはなかった。なぜなら、彼らはミュージカルの聖地、ウエストエンドの舞台に立つという夢を果たせなかった人たち。「ウエストエンドで演じるのは、狭き門。とても難しい。だから違う形でやることに決めた」と、ジェイミーさんが振り返る。
 集まったメンバーは皆、幼少時に音楽やミュージカルで活躍した経験があった。華やかな世界の入り口をのぞいたことがあるだけに、ずっと憧れを抱き続けてきた。しかし、台所用品のセールスマン、日本料理店の従業員などそれぞれ別の仕事に就き、複数の仕事を掛け持ちしている者もいた。「演技をして舞台に立つことはとても楽しかったよ。8歳の時、(ミュージカルスターの)マイケル・ボールのバックで、ロイヤル・アルバート・ホールでコーラスをしたこともあった」と、マイケルさんは幼い頃に思いをはせる。ジェイミーさんは13歳の時、スクール版「レ・ミゼラブル」で、マリウスを演じた思い出を大切に心にしまっている。だから、3作目のアルバム「ホーム」で、マリウスのソロナンバー「カフェ・ソング」を満を持して収録している。
 ■全英チャート1位
 ミュージカルを愛する彼らにとって何より名誉だったのは、ブリテンズ・ゴット・タレントでの優勝後、まもなく出したデビュー作が、全英チャートで1位を獲得したことだ。しかも、8週連続1位だった人気シンガー・ソングライター、エド・シーランさんを抑えての快挙。英国はビートルズを生んだロック大国だ。「ミュージカルの音楽がポップのチャートで1位になることは特別なこと。ミュージカルシンガーでもほとんど成し得なかったことだ」とマットさんは胸を張る。
 ■仲間への深い敬意
 メンバーはそれぞれ、ミュージカルへの愛を注ぎながら、仲間たちにも敬意を示す。「ジェイミーの声は力強い低音で、ビブラートが豊か」「マイケルは成長が著しい。会計士を目指す道から転進し、歌の経験が多かったわけではないのに」「マットは適応能力がすごい。歌う電話帳というぐらい幅広い」「トムは聖歌隊の経験から美しい高音を出す。思いつかないようなハーモニーも考える」
 4人が調和するのは、ハーモニーを奏でる時だけではない。あるメンバーがソロパートを担っている時、それぞれ優しい目で見守るのだ。その理由をトムさんが話してくれた。「だって、僕らは観客の中で一番いい席で歌声を聴けるのだから」
 
 ■来日公演 11月11、12日
 ◆コラブロ「Live in Japan 2019」
 11月11、12日、東京、よみうり大手町ホール。両日とも開場午後6時、開演同6時半。全席指定 9800円(税込み)※未就学児入場不可
 問い合わせ・読売新聞東京本社事業開発部(03・3216・8606、平日午前10時〜午後5時)
 
 ◆超高層ビル「ザ・シャード」… ロンドンでお気に入りの場所
 4人が拠点にするロンドンで、お気に入りの場所はどこだろう?
 マットさんが挙げたのは、「ザ・シャード」。天空を突き刺すような外観が目を引く、高さ約310メートルの超高層ビルだ。「中にあるシャングリ・ラホテルも素晴らしいよ。もちろん、最上階へも行ったことがある。あそこから見るロンドンの夜景は美しい」
 アーティストやメディア関係者が集まる会員制クラブ「グルーチョクラブ」が好きと言ったのは、ジェイミーさん。グループを率いる存在だけに、大人の社交場で人脈を広げているようだ。
 「ブリテンズ・ゴット・タレントが行われた会場だったから。ここで夢をつかんだ思い出は忘れられない」と、マイケルさんが示したのはパラディウム劇場。100年以上の伝統がある神殿風の外観の劇場で、渡辺謙さんが昨年、「王様と私」を演じた。
 トムさんが挙げたのは、1871年開場の「ロイヤル・アルバート・ホール」。今年4月20日、コラブロのツアー千秋楽公演の会場であり、アルバムタイトルにしたのだから当然だろう。が、さすがはトムさん、理由はそれだけではなかった。「僕らの公演の約1か月後に、個人的にコンサートを見るために訪れたんです。『Distant Worlds』という、ゲームの『ファイナルファンタジー』のシンフォニー公演が行われたんですよ」
 
 ◆LOVE JAPAN Jポップ、アニメ、和食大好きの日本通 「NARUTO」観劇、「アイ・ライク・鍋」
 公演のためにたびたび来日しているコラブロは、すっかり日本通。音楽番組「ミュージック・ステーション」には2度出演しており、「Perfume」「Mr.Children」「Hey!Say!JUMP」「西野カナ」「ゲスの極み乙女。」と、共演者の名前をしっかり覚えていた。
 好きなアーティストには、マキシマムザホルモン、MIYAVIさんなど意外な名前も。特に、英国の日本料理店で働いていたトムさんの愛は深い。「ポケットモンスター」などアニメも好きで、来日した際は「NARUTO」の舞台も見たという。日本人キャストが演じたミュージカル「レ・ミゼラブル」も鑑賞したという話に及ぶと、トムさんが「夢を見ていたわ〜」と、「夢やぶれて(I Dreamed A Dream)」を口ずさんでくれた。2ndアルバムの日本盤には、同曲の日本語詞歌唱を収録しており、来日公演でも歌う予定だ。
 日本で楽しみにしていることを尋ねると、メンバーは一斉に「The food!」。「アイ・ライク・鍋」というジェイミーさんが口火を切ると、しゃぶしゃぶ、天ぷら、すし、ざるそば、焼き鳥、串カツ、ラーメンと止まらない。ファンを楽しませつつ、大いに日本を満喫してほしい。
 
 ◆最新アルバム「ロイヤル・アルバート・ホールへの道」(ソニー)
 4作目となるアルバム。今年2月から始まった約50公演におよぶツアーの終着点が、憧れの殿堂、ロイヤル・アルバート・ホール。収録曲は、「マリア」(ウエスト・サイド物語)、「オン・マイ・オウン」(レ・ミゼラブル)、「アルゼンチンよ、泣かないで」(エビータ)、「自由を求めて」(ウィキッド)、「ジャージー・ボーイズ・メドレー」など。日本盤には、Little Glee Monsterの「世界はあなたに笑いかけている」(英語歌唱)、安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」(日本語歌唱)のカバーがボーナストラックとして収録されている。
 
 ◇こらぶろ 英語表記は「Collabro」で、「コラボレーション(協力)」と「ブラザー」を合わせて命名。5人組として、2014年にデビューアルバム「スターズ」を発表し、初登場で全英1位に輝く。15年の2作目「アクト・ツー」も最高位2位を記録。16年に1人脱退してからは4人組として活動を続けている。
 
 ◆プレゼント 
 コラブロの4作目のCDアルバム「ロイヤル・アルバート・ホールへの道」を、読者3人にプレゼントします。9月4日更新のポップスタイルブログ中の応募フォームにキーワード「ブロス」と必要事項を記入。QRコードからも応募できます。締め切りは8日午後11時。発表は発送をもって代えさせていただきます。
 
 ◎次回の「ALL ABOUT」 田代万里生&平方元基 意外にも初共演 2人だけの舞台
 
 ◇文・清川仁
 
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読売新聞2019年9月 4日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:清川仁

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