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読売新聞│配信日:2019年9月9日│配信テーマ:その他  

[イマ推しっ!]UKロック 大物の素顔 トシ矢嶋さん写真集


 1970年代後半から約30年、イギリスに在住したトシ矢嶋さんの写真集「LONDON RHAPSODY」が発売された。セックス・ピストルズ、ジェフ・ベックさん、ポール・ウェラーさんら、UKロックの大物たちの写真は、世に出る前の若かりし頃だったり、めったに見せない素顔だったり、貴重なものばかりだ。(清川仁)
 矢嶋さんは75年に渡英し、ロンドンの音楽情報を雑誌を通して日本に伝え、80年代は高橋幸宏さんのラジオ番組内にコーナーを持った。その頃には、シャーデーの魅力にいち早く注目し、日本市場への橋渡しやアルバムジャケットの制作もした。
 写真集で驚くべきは、後に大化けするアーティストたちのあどけない素顔がとらえられていることだ。デビュー3か月後のセックス・ピストルズの取材では、汚いアパートで共同生活をしていたメンバー4人を撮影。マネジャーに取材アポを得たのに、メンバーからは「聞いていない」とドアを閉められそうになり、即座に足をはさんだという“武勇伝”も。「向こうは4人がかりで閉めるもんだから本当に痛いし怖かった」と苦笑する。ストレイ・キャッツで人気を博す前のお金に困っていたブライアン・セッツァーさん、カルチャー・クラブ結成前で、クラブの服装チェックやDJをしていた頃のボーイ・ジョージさんなどの表情もとらえている。「ボーイ・ジョージはセンスに合わない客を容赦なく帰していたよ」と振り返る。
 渡英のきっかけは、東京・青山の高級スーパー「ユアーズ」でアルバイトをしていた時、常連の加藤和彦さんと親しくなり、後押しされたこと。加藤さん率いるサディスティック・ミカバンドのアルバム「黒船」をプロデュースした大物、クリス・トーマスさんの知己も得て、取材嫌いのジェフ・ベックさんの自宅を訪ねることもできた。
 大物たちのツテあってこそ? いや、矢嶋さんが才人たちの懐に入り込む人柄や出会いの嗅覚を備えているからにほかならない。「目当てのTシャツを店でロッド・スチュワートと取り合ったり、家具のコンランショップに通っていたら(創業者の)テレンス・コンランに声をかけられ、新しく作るレストランに誘ってもらったり」などという話からは、矢嶋さんのセンスの鋭さがうかがえる。ポール・ウェラーさんとは自宅に招かれるほど親しい関係になり、「ファッション談議で盛り上がり、『日本のリーバイスのコーデュロイがほしい』という頼みに応えたらすごく喜ばれた」と語る。
 「撮られることを意識した姿は写したくない。何げなく話しながら撮影し、『もう終わったの』と聞かれたものです」
 写真集は、リットーミュージックから。ほかに、ポール・マッカートニーさん、クイーン、ボブ・マーリーさんなども。

読売新聞2019年9月 4日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:清川仁

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