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毎日新聞│配信日:2019年8月26日│配信テーマ:その他  

<Interview>梶浦由記 原点はオペラ、壮大美麗 メディア音楽席巻、ツアー開催


 ある閉じた世界の中で誰もが知る人がいる。いわゆる専門家であるが、学術や古典ならまだしも、ポピュラー音楽の世界ではかなり珍しい。作詞作曲編曲家で鍵盤楽器を演奏するプロデューサー、梶浦由記は、まさにその珍しい人物の一人。肩書を見ると“裏方”のようだが、今年15回目を迎えた「Yuki Kajiura Live Tour」で中心に座る。ツアー真っ最中の梶浦に「一体何者?」と聞いた。

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 梶浦は、ポップユニット「See−Saw」で1993年にプロデビュー。95年の解散後、アニメ、ゲーム、映画など、メディア関係の音楽の制作にかかわるようになる。2001年「See−Saw」を復活させ、02年の「あんなに一緒だったのに」がテレビアニメ「機動戦士ガンダムSEED」のエンディングに採用され大ヒットした。だが、「See−Saw」は再び活動休止。03年から、ソロプロジェクト「FictionJunction」シリーズを起動し、以後、メディア音楽でチャートの上位を独占するようになる。作曲家・梶浦の名は、一般的には14年上半期のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」の音楽で記憶されるのではないか。

 繊細なメロディーと壮大でファンタジー感あふれるクラシカルな美麗なサウンドが特徴的で、まさにアニメのような見たことのない大きな風景が広がる音楽が特徴的である。

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 「山と合唱が趣味の父は、ドイツ歌曲を娘のピアノ伴奏で歌うのが大好きだった。父の仕事でドイツに駐在した時は、毎週のように生のオペラを一家で聴きに行っていた。それが、私の音楽の原点。きれいで大きくて派手な音楽世界が大好き。劇伴やサントラが今も続けられる理由かな」。なるほど、アニメは現代のオペラなのか。

 「でしょうね。オペラも、まず『本』が大切だし。よく考えられた『本』はストーリーはもとより、セリフ、キャラクター、プロットどれをとっても一つ一つが際立ち感情移入ができる。いい『本』に音楽を付けるのは感動なんです」。今の状況は大満足なのだ。でも、演奏も行うのはなぜか。

 「大体、アニメ1本で35〜40曲作る。相当大変な作業なんです。演奏している梶浦は他人です」と大笑いする。「絶対友達になれない二人ですね。作曲家の梶浦はコンサートの準備なんか大嫌い。でも演奏家の梶浦は拍手されるの好きなんですよね。作曲家は『使い捨ての音楽』を作っていると思っていた。でも、演奏してみたら『生で聴きたかった』という曲のファンがいる。あ、『使い捨てではなく、積み重ねの音楽』を作ってたんだ、と演奏して初めて分かった」と演奏家・梶浦の存在理由を自ら確認する。

 ツアーは、ほぼ満席だが、11、16、17の各日は東京・中野サンプラザ、25日には台湾公演を控える。10月19、20日には千葉・舞浜アンフィシアターで、テレビアニメ「プリンセス・プリンシパル」の音楽を生で届けるコンサートを行う。閉ざし続けるのはもはやむずかしいようだ。【川崎浩】

毎日新聞2019年8月 8日東京夕刊(1版)掲載 執筆記者:川崎浩

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