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読売新聞│配信日:2019年8月5日│配信テーマ:その他  

[評]吉田拓郎ライブ 声量十分 通好みの選曲 


 吉田拓郎が、北は宇都宮から、西は名古屋までを回ったライブツアー。体調不良もあり、近年はライブを「日帰りできる範囲」で行っていた吉田。体調が安定したことを示すのか、範囲を拡大した。
 1人舞台に現れた吉田はギターの弾き語りで「大いなる〜今日までそして明日から」を披露。声量は十分。調子の良さを感じさせる。ドラムは村石雅行、キーボードは武部聡志などと重厚な布陣。吉田の字余りの歌を、安定感ある演奏で支えた。ギターやキーボードのソロ回しもたびたび繰り広げられ、スリリングな演奏が楽しめたのも収穫だった。
 曲の合間に吉田は「名古屋に行ったのも、新幹線に乗ったのも10年ぶり。富士山が見えて興奮しましたね。名古屋では2泊して、楽しかった」と、旅で得た喜びをとうとうと語った。2、3曲ごとに、時にギターをかき鳴らしながら、ラジオのような軽妙なトークを聴かせ、観客を沸かせた。
 今回のライブのコンセプト(基本理念)は「本人が作詞作曲した曲しか歌わない」ことだそう。ただ気になったのは、お茶の間の誰もが知っているようなヒット曲は控えめだったこと。メジャーな自作曲も数え切れないほどあるのに、若干渋めの選曲に感じられた。もちろん、おそらく吉田と同世代の観客が大半の会場は、筋金入りのファンばかり。熱狂していたのは間違いない。
 吉田は「音楽っていうのは本当に素晴らしいもの。音楽はやめない」と宣言。全ての曲を歌い終わると、各方面の客席に向かって、長く、長く頭を下げた。あまりに長いので時間を計ってみると、30秒を超えていた。その間、吉田は何を思ったのか。気になるエンディングだった。(鶴田裕介)
 ——3日、パシフィコ横浜。

読売新聞2019年7月25日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:鶴田裕介

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