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毎日新聞│配信日:2019年8月5日│配信テーマ:その他  

<Interview>遠山一 60年の歌声残す ダークダックス自選ベスト盤


 日本の男性コーラスの草分け、ダークダックスの最後のメンバー、ぞうさんこと遠山一(とおやまはじめ)が、1950年代からの活動を振り返ってまとめた2枚組みベスト盤「ぞうさんが選ぶ 我ら60年の歩み」(ユーキャン)を発売した。ダークの思い出というだけでなく、戦後日本大衆音楽史の一つの系統樹を明らかにする貴重な記録となっている。遠山に語ってもらった。

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 ダークは、慶応大学のワグネル・ソサィエティー男声合唱団に所属するメンバーで51年に結成。当初は、バスの遠山と、佐々木行(とおる)(リードテナー)、喜早哲(きそうてつ)(バリトン)の3人でスタート、後に高見澤宏(ひろむ)(トップテナー)が加わった。2000年代まで不動の4人で活動を続けたが、10年代に入って、遠山以外の3人は次々と鬼籍に入ってしまった。

 遠山は「僕の好きな歌、歌いたい歌を選んで、ダークの魅力を残しておきたかった。ハーモニーとは美しいものだな、おしゃれなものだなと感心して、コーラスを始めたが、これが自分たちなりの結果だなと思う」と振り返る。

 最初期のレパートリーは、グループ名の由来となった黒人霊歌やジャズ、バーバー・ショップ・コーラスの作品。「オーラ・リー」「時には母のない子のように」「16トン」などの米国大衆音楽が、新しい文化に飢えていた日本人の心をとらえた。それが落ち着くと、代表曲の一つ「ともしび」などロシアをはじめとする世界の音楽が浸透し始め、その後はダークに似合う「山男の歌」「北上夜曲」など国産の音楽がレパートリーになる。この流れは、まさに日本大衆音楽の潮流をたどるものである。

 後発のボニージャックス、デューク・エイセスらとともに貧しかった日本にコーラスブームを巻き起こし、「雪山讃歌」「北上夜曲」などを発掘して、余裕のできた大衆社会に広め、積極的に海外に進出し、格調高い「合唱組曲」シリーズでキャリアの高みに至るダークダックスは、戦後大衆史の貴重な象徴とも言えるだろう。

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 「ダークを介して、名曲が世に知られたことは誇りです。あとは、ちょっと格好良かったかな」。洒脱(しゃだつ)に気負わず思い出を語る89歳は、今も現役である。9月29日には東京・代々木上原のけやきホールで「ぞうさん&しゅうさえこ 歌の玉手箱3〜思い出を今、ここに〜」コンサートを開く。しゅうは、NHK第14代うたのおねえさん。ダークの歌や叙情歌、ミュージカルナンバーなどを披露する予定。【川崎浩】

毎日新聞2019年7月30日東京夕刊(2版)掲載 執筆記者:川崎浩

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