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読売新聞│配信日:2019年6月24日│配信テーマ:洋楽  

ケイシー・マスグレイヴス カントリー 表現手法の一つ


 ◆今年のグラミー賞「4冠」
 今年2月発表のグラミー賞で、主要部門の最優秀アルバム賞など計4部門で栄冠に輝いた米シンガー・ソングライター、ケイシー・マスグレイヴスが来日公演を行った。カントリーの世界から飛び出した新たなスターに思いを聞いた。(桜井学)
 ライブ会場にはバンジョーやペダルスチール・ギターの伸びやかな音が響き、のどかな雰囲気を醸し出す。やさしく温かみのあるケイシーの声も聴き手の心を和ませる。カントリー色は強いが、スッキリとした味わいで、ポップの市場にもアピールできると思った。
 グラミーでは「ゴールデン・アワー」(ユニバーサル)が最優秀アルバム賞と最優秀カントリー・アルバム賞に。収録曲2曲がそれぞれカントリー部門の賞に選ばれた。カントリーを大切にしながら、彼女はそこに拘泥してはいない。「グラミーでは音楽界のメインストリーム(主流)の作品として受け入れられたことがうれしかった」。より開かれた感覚が彼女の作品にはある。
 「ゴールデン・アワー」収録の「オー、ホワット・ア・ワールド」では、バンジョーなどとともに、エレクトロではおなじみの機械で加工された声も使った。「狙ったのは、伝統的なものと未来的なものの融合。両者のいいバランスを見つけようとした」。また「ハイ・ホース」は「(ディスコサウンドで人気のあったグループの)ビー・ジーズが、カントリーをやったらどうなるか、みたいな感じで作った」と言う。「カントリーの影響は受けているけど、私は第一にソングライター。世界を観察し、それをいろいろな手法で表現している。その一つがカントリーという感じかな」
 現在30歳。カントリーの中心地・テネシー州ナッシュビルで腕を磨き、2013年にメジャー初アルバム「Same Trailer Different Park」を出した。閉塞(へいそく)感に満ちた米国の田舎暮らしをイメージさせる「メリー・ゴーラウンド」や、自由な生き方を説く「フォロー・ユア・アロウ」などの収録曲が人気となった。保守的ととらえられることが多いカントリーの世界で、これらの曲は異質な輝きを放った。
 「ゴールデン・アワー」では、作風が少し変わった。結婚したことが大きく影響したという。「あなたといるとソワソワしてしまう」と歌う「バタフライズ」など、ハッピーな感じの歌詞も目立つ。「最良の人と出会い、恋に落ちて、自分に自信が持てた。愛や幸福を知って、世界をよりやさしい目で見られるようになった」と説明する。「社会問題についてのコメンテーターみたいなところから一歩離れ、感情を前面に出したかった。今はコメンテーターだらけ。気持ちを正直に示した方が共感を得られるはず」。そんな思いが伝わり、高評価につながったのだろう。
 

読売新聞2019年6月13日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:桜井学

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