[ 画像 ] 今週の音楽記事から 音楽ジャーナリストの眼 毎週月曜更新

新聞記事

読売新聞│配信日:2019年6月17日│配信テーマ:Jポップ  

[評]松任谷由実 公演 ステージ版の「ベスト盤」


 その名も「TIME MACHINE TOUR」。45年を超えるキャリアを振り返る選曲はもちろん、過去のコンサートで見せた演出や衣装までもよみがえらせる、ベスト盤ならぬ“ベストコンサート”的内容だった。
 360度を見渡せる円形のステージ。輝く燕尾(えんび)服姿の松任谷由実が、ピアノの弾き語りで聴かせるのは「ベルベット・イースター」だ。舞台がゆっくり回転し、どの席でも正面から歌唱風景を眺められる。
 「Happy Birthday to You」では、なんと象に乗って登場。これは、1979年の中野サンプラザ公演の一場面をヒントにしたそう。その後、80年代を思い出させる派手なジャケットにソバージュ姿で、バブリーなダンスを披露した。ほかにも、ドラゴンが登場したり、華やかな着物に身を包んだりといった、各時代の象徴的な衣装や演出をよみがえらせた。
 新潟・苗場でのリゾートコンサート、シンクロナイズドスイミングやサーカスとの共演など、音楽にとどまらない、あらゆる要素との融合を果たしてきたユーミン。「歌に自信がなかったので、早くからショーアップに走りました」と冗談めかして語ったが、今回のツアーはそんな彼女のショー哲学を一挙に、浴びるように感じられる、貴重な機会だった。
 アンコールでの「ひこうき雲」は、よく知っているはずなのに、初めて聴くかのようにしみ込んでくる深みある歌唱。「いつか、誰もが知っている歌を作れたらいいな、と夢見ていました。ふと気付いたら、私の曲をみんな知ってくれている自覚が、近年持てた」とユーミン。予定になかった追加のアンコールでは、夫の松任谷正隆の伴奏で「卒業写真」と、まさに誰もが知っている名曲を歌った。
 遊園地のようなコンサートの地盤には、確固たる音楽があるという主張と受け止めた。(鶴田裕介)
 ——5月16日、東京・日本武道館。

読売新聞2019年6月 6日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:鶴田裕介

Jポップ   のテーマを含む関連記事