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読売新聞│配信日:2019年3月11日│配信テーマ:洋楽  

聴かせる詞 リアルな表現 フィービー・ブリジャーズ 高まる期待


 ヒップホップとダンス音楽がヒットチャートをにぎわせる中、シンプルなサウンドに乗せ、しっかりと歌詞を聴かせるスタイルの作品も根強い人気を保っている。米国のフィービー・ブリジャーズもそんなタイプの若手女性シンガー・ソングライターで、フォークロックの世界を先導している。来日したフィービーに聞いた。(桜井学)
 初アルバム「ストレンジャー・イン・ジ・アルプス」(ホステス)は2017年に発売。評論家に高く評価され、一気に注目を集めた。「ずっと自分がやりたかったことだったから、うまくいってよかった」
 プロデューサー陣には、「スクイーズ」などの作品を手がけた大物トニー・バーグが加わった。「初対面でいきなり9時間のギターレッスンになっちゃった」。ストリングスのアレンジはロブ・ムースが担当。ポール・サイモンの作品にも参加した俊英で、これらスタッフの顔ぶれからも期待度の高さが分かる。
 「それまでの自分の人生を全て反映している」と語るように、アルバムには実体験に基づいた物語がつづられる。デヴィッド・ボウイら近年死去したロックスターに言及しながら、一つの恋愛の終わりを示唆する「スモーク・シグナルズ」。ままならぬ愛に対する葛藤を「時々自分は殺し屋かと思う あなたの家で脅かすし 話していて自分でも怖くなった」と歌う「キラー」。表現は詩的でリアルだ。
 ◆「コラボ大好き」
 昨年は、同じく若手女性シンガー・ソングライターのジュリアン・ベイカー、ルーシー・ダカスと組み「ボーイジーニアス」として作品を発表。今年も「ブライト・アイズ」の活動で知られるコナー・オバーストとのバンド「ベター・オブリヴィオン・コミュニティー・センター」のアルバムを出した。「コラボレーション(共同制作)は大好き。1人でやっていると、迷ったり、アイデアが出なかったりする」
 「コミュニティー・センター」とあるように、こちらは架空の福祉施設を思わせるバンド名。「自分たちにとってバンドはそんな場所。曲作りの苦悩を分かち合っているから」。英国の著名な詩人の名を冠した楽曲「ディラン・トマス」は「正直でいるのはもうウンザリ」などと、冷めた主人公の心情が描かれる。「国の状況について失望するというか、そんな感じの歌。私たちは諦めないけど」
 それぞれサウンドの趣は違うものの、歌詞を重視している点は変わらない。「トム・ウェイツ、レナード・コーエン、ジャクソン・ブラウン、ジョニ・ミッチェル……。そういう音楽をずっと聴いてきたからね。今も(フォークに影響を受けた)コナーら友人たちの作品が最高だと思う」。音楽的知識も豊富。今後が楽しみな逸材だ。

読売新聞2019年2月28日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:桜井学

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