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毎日新聞│配信日:2019年3月11日│配信テーマ:その他  

<らっこ・ライブ・レビュー>近藤等則 IMA21 宇宙と交信する魂


 1977年だったか。昨年秋閉店した渋谷のジャズ喫茶「メアリージェーン」でギターのデレク・ベイリーとベース吉沢元治、トランペット近藤等則のライブが行われた。近藤は、目の前のアルミ灰皿をミュートにして吸い殻をまき散らしながら吹きまくり、異次元のサウンドを聴かせた。“イカレ”た“危ない”ヤツが現れた!と震えがきた。あれから40年。70歳の近藤は、衰えを知るどころか、さらにキレを増して、我々の前に立っていた。それも、80年代に世の度肝を抜いたバンド「IMA」を21世紀版に進化復活させて。

 近藤は、単にフリージャズのトランぺッターではない。森羅万象のシステムとともに呼吸するアーティストである。音楽は、地球への恩返しとして奏でる。IMAを休止しアムステルダムに移り住んで、「地球を吹く」シリーズを展開しているのはその流れであった。最近CDは、このライブとほぼ同じメンバーによる「スペース・チルドレン」(TKレコーディングス)。近藤の精神は、地球を超えて久遠の宇宙へ進んでいるのである。

 山木秀夫のドラムと電子パーカッションのKakueiが作り出すグルーブは体の揺れの基調を整え、富樫春生のキーボードと酒井泰三のギターが頭の中をかき回す。近藤はそれらを増幅器として使い、宇宙との交感へ向かう。音数は少ないが強じんで、客はそのダイナミックな交信のノイズに巻き込まれるという寸法だ。近藤は「25年前は社会や人間と向き合っていた。21世紀は自然、地球、宇宙と対峙(たいじ)せねば」と宣言する。圧倒的な演奏力により近藤の魂は旅に出るのだ。春以降も多くのイベントで魂の声を聴けるはずである。2月18日、恵比寿LIQUIDROOM。【川崎浩】

毎日新聞2019年3月 2日東京夕刊(1版)掲載 執筆記者:川崎浩

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