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読売新聞│配信日:2019年2月4日│配信テーマ:その他  

[ALL ABOUT]水谷千重子 歌い上げます 芸歴50年


 ◇Pop Style Vol.633
 演歌の大御所、水谷千重子さん。「あのお笑い芸人が演じるキャラクターでしょ」なんてヤボなことは言わないで。何せ、五木ひろしさんら大物歌手と次々に共演を繰り広げ、NHKホール公演も成功させた“人気歌手”なのですから。2月22日から、145年の歴史を誇る明治座(東京・浜町)で、初座長公演を開催するのも本当です。芸歴50年という設定を真に受けてインタビューを行いました。虚々実々の世界をお楽しみください。
 ◆明治座で座長なんてすごい
 ——50周年記念の初座長、おめでとうございます。
 千 ありがとうございます。あっという間に50周年を迎えました。
 ——数年前には40周年記念ツアーを行っておられたような……。
 千 細かくいうとね、「演歌ひとすじ40年」ということでやらせていただきましたけど、今度は千重子の子役時代から数えて芸能生活50年なのね。やっぱりお祝いごとですからね。お師匠さんの二葉菖仁(しょうじん)が「千重子、周年を迎える頃には必ずお客さんに感謝するんだよ」と教えてくれました。
 ——菖仁先生は、千重子さんをコンテストで見いだした恩師ですね。
 千 千重子が優勝した「歌まね生一本」の審査委員長でしたね。そこから、皆さんご存じのデビュー曲「万博ササニシキ」から始まって、「うんとこどっこいしょ椿」「一事が万事酒」と、菖仁の作詞でスマッシュヒットを飛ばしてまいりました。
 ——明治座は、千重子さんにとってどういう存在だったのでしょう。
 千 もうもう、本当に憧れで。なかなか座長なんて張れないもので、「紅白」に出るよりもすごいことだと千重子は思ってるんです。一回きりじゃなくて、何日もお客さんを喜ばせなきゃいけない。やりたいって言ってできるわけではないですね。
 ——芝居と歌謡ショーの2本立てですが、お芝居の「とんち尼将軍 一休ねえさん」には、二葉菖仁さんが原案にクレジットされています。
 千 基本は、一門の二葉森乃介先生の脚本と、二葉慶太郎先生の演出でやっているので、菖仁の名前は入れさせてもらってますけど、現場にはほとんどノータッチですね。
 ■一門
 ——二葉一門とはどんな一門ですか。
 千 あんまり群れないというかね。同じ考え方の人とか、同じものに向かっている人たちで何か面白いことをしましょう、というような人たちですね。
 ——千重子さんは一門から独立されてますね。
 千 ええ、1993年に個人事務所「千重子プロモーション」を設立させていただきました。師匠は「やりたいことをおやりなさい」って感じの方ですから、理解してもらえましたね。
 ——「一休ねえさん」のチラシは素晴らしい仕上がりです。撮影の苦労は?
 千 耳がね。千重子は、耳のどっちかが立って、どっちかが引っ込んでるんですけど、こういう坊主頭のカツラをかぶると、余計に目立つのね。だから、頭を支える手で耳をうまく立たせるのが大変だったのよ。
 ■引退
 ——50年歌い続けることは大変です。安室奈美恵さんなど引退をされる方が目立ちます。
 千 引退はありますよ、やっぱり。あの恋愛の歌、歌ってる子も休止ってね。
 ——西野カナさん? 活動休止を発表されました。
 千 そう、カナちゃんね。自分の中での区切りを付けることは、勇気がいるけど素晴らしいことです。安室ちゃんは、「CAN YOU CELEBRATE?」がもう皆さん聴けなくなるんで、千重子が受け継いで、コンサートで歌ってますけどね。色々な方の後継者になりたいですよね。
 ——千重子さんが引退を考えたことは?
 千 80年代はありました。このままいくと、もう二度とテレビにも出られないとか、みんなの前に出られないのかなというのはありました。
 ——低迷期で、「丘もち子」という名で、地元・福井の場末のスナックで歌っていたこともあったとか。
 千 もう、アイドルの人たちの全盛期というのも分かっていたのでね。向かい風の時に変に暴れるとエネルギーを消耗するだけだから、追い風の時に行けばいいって。
 ——そこから、見事はい上がった。
 千 千重子から歌を取ったら、美貌(びぼう)しか残らないということで、バカ言ってる(笑)、やっぱり歌で勝負しなきゃっていうことで、もう一度頑張りました。
 ——持ち歌は、80年代のアイドルソングや大映ドラマの主題歌も多かったりと、ジャンルの懸け橋になってますね。
 千 うん、あんまり演歌、ポップスというジャンルにこだわらずね。こういう曲調の歌を歌いたいわというのは歌いたいですしね。
 ——「いきものがかり」の水野良樹さんの提供曲も歌われてますね。
 千 そう、常にアンテナを張ってる子なので、こうやったら面白いのになっていうのも分かる人なの。だから、倉たけしを作詞にしてほしいと名指しでね、水野ちゃんから言ってきたし。すごくいい曲ができてるし、プロデューサーの目を持ってますよね。
 ——読者に向けて新時代を生きるメッセージを一言。
 千 やっぱり、ここ10年ぐらいで思うのは、人生は一度きりなので、やってみたいと思うことには飛び込んでやった方がいい。失敗したら、やめればいいだけの話でね。そんな勇気ないよっていう人もいるかもしれないんだけど、その時に「人生一度きりだよ」って、もう一人の自分がまたささやくようなことを繰り返すと、思いきりが出るかもしれないの。千重子はそういう感じで、いただいた仕事も、やりたいなと思うことも、飛び込んでやるようにしてます。明治座も精いっぱい務めさせていただきます。
 
 ★友人、友近さんのコメント
 「千重子さんは、本当に天真爛漫(らんまん)で明るい人。私がなんだかんだ言っても、千重子さんは前向きなので、『もういいじゃない』『ケセラセラよ』と言って。『会社のこと、やあやあ言うもんじゃないわよ』って、千重子さんによく言われるんですけどね。とにかく、一瞬にして周りを明るくする力を持っているのが魅力かなと思いますね」
 
 ◆虚々実々 千重子の世界
 【キーポンシャイニング】
 「いつまでも輝き続けたい」という千重子さんの座右の銘。豪華ゲストを招く「キーポンシャイニング歌謡祭」にはこれまで、森昌子、中村雅俊、稲垣潤一、根本要、杉山清貴、田原俊彦、中山美穂、PUFFYなどが出演。松村雄基、麻倉未稀、椎名恵など、千重子が大好きな「大映ドラマ」にまつわる出演者も。
 【ジョイン】
 いわゆるデュエットやコラボレーションについての千重子さん独特の言い方。歌謡祭におけるジョインのほか、川中美幸、相川七瀬、山内恵介、田原俊彦らとのジョインを、音源として発表。2017年にはアルバム「ジョインがお好きでしょ」をリリース。秋元康、二葉・マッキー・敬之、岸谷香らから楽曲提供を受けた。
 【時が来ればお話しします】
 千重子さんが1983年、国民投票でトップ票を集め「紅白歌合戦」出演のオファーを受けるも自身のこだわりにより辞退。その際に発表したコメントで、当時の流行語ともなった。
 【豆富開き】
 千重子さんの実家が福井の豆腐屋であることから、成功祈願は「鏡開き」ではなく、手の平に載せた豆富をまっぷたつに割る「豆富開き」を行う。「よいしょ、よいしょ、よいしょー!」の威勢の良い掛け声も千重子さん流。焼き豆富舞踊「越後前舞踊」もコンサートの定番。
 【ヨークシャーテリア】
 愛犬は、ヨークシャーテリア。以前は7匹ほどいたが、今は“サフランちゃん”1匹と暮らす。「ヨークシャーテリアは歩く宝石って言われているのよね。千重子は宝石が大好きなの」。バッグや着物に必ず犬があしらわれている。他に必需品は、オリジナルグッズの「千重子水」。「千重子はいつも飲んでる。サフランにも飲ませてます」
 
 ◆地方公演 熱気が違う 古里・福井 哀愁が魅力
 ——地方公演の魅力は?
 千 地方の方は、テレビを見て千重子のことを知ってくれて、一度生を見てみたいわというエネルギーをずっとためて待っててくれる。その爆発力はすごいんですよ。だから、盛り上がりようは都市と全然違うというか。外歩いていたら誰一人歩いていなかった鹿児島の指宿とか、長崎の諫早とか。ホールの開演時間になったら急に1500人ぐらい集まって、え?どこから現れたのっていうぐらい。
 ——古里、福井の魅力は?
 千 福井はねえ、やっぱり温泉とカニね。あと、北陸っていうとね、ドラマがある、哀愁があるのがいいですね。
 ——平成が終わる感慨は?
 千 そうですねえ。時代が過ぎるのは仕方ないんで、今の世の中で生きていくしかないんですけど、やっぱり昭和というか1970年代、80年代は楽しかったなっていまだに思いますけどね。平成はねえ、SNSがはやりだして、いろんなこと気にしなくちゃいけなくなったから、ちょっと息苦しいところがあるわね。
 ——平成の次の元号は?
 千 「輝く」に「保つ」で「輝保」。輝保元年、どうかしら。キーポンシャイニングね。
 
 【仲間たち】
 ★八公太郎
 二葉菖仁門下で、千重子と同期デビューの仲で、「銀座線の駅は二階」など千重子とのデュエットも多数。最近は「フレンズ音頭」「里波祭(リバーサイ)音頭」と音頭が好評。
 ★倉たけし
 同じく二葉菖仁門下の同期だが全く売れず、一門も破門になった。地方企業のCMソングの仕事が多く、千重子とも共演している。「美女と野獣」のデュエットは天下一品。
 ★六条たかや
 御四家と呼ばれた人気歌手だったが、最近は2時間ドラマの仕事ばかりで歌っていない。数々の浮名を流し、千重子と週刊誌に撮られたことも。
 ★春澪
 千重子が台湾でスカウトしてきたオネエ演歌歌手。愛らしい言葉遣いとは裏腹に、野太い声で熱唱し、聴衆を酔わせる。
 
 「八公太郎と倉とは昔からずっと一緒でね。2人は、どっちかがいないと本当は寂しいクセに、強がっていがみ合っているから、しょうがないよね。六条たかやは、そんな2人を煙たがりながらも、昔からの友達だから助けてはあげてるみたいねえ。春澪ちゃんはお歌がうまいので、ぜひ盛り上げてくれない?ということで助けてもらってます。くだらないことばっかり言ってる八ちゃんが、年々受けいれられてきているので、その成長が千重子うれしいです。去年の仙台公演で、『八コール』がホール中に起きたんです。これには千重子も八ちゃんも喜んじゃってね」(千重子)
 
 ◆水谷千重子 50周年記念公演 2月22日〜3月4日 明治座(東京・浜町)
 お芝居ステージ「とんち尼将軍 一休ねえさん」、歌のステージ「千重子オンステージ 歌えばコブシの花が咲く」の2部構成。
 芝居は、原田龍二、YOU、田山涼成、高橋ひとみ、あご勇、バッファロー吾郎Aのほか、シソンヌ、ずん、ハリセンボン(トリプルキャスト)、尼神インター誠子、ゆりやんレトリィバァ(ダブルキャスト)が出演。昼は小坊主、夜は遊女の顔を使い分け難事件に挑む内容は、映画「吉原炎上」を手がけた五社英雄監督好きの水谷の趣味が反映されている。歌は、春澪、八公太郎、六条たかや、倉たけし、こまどり姉妹が公演日によりゲスト出演する。
 問い合わせ・明治座チケットセンター(03・3666・6666)
 
 ◇みずたに・ちえこ 数々の歌手活動を重ね、2016年にベストアルバム「BAKAITTERU」発売。同年の「キーポンシャイニング歌謡祭」は、東京・NHKホールでも公演を行う。18年には台湾観光アンバサダーに就任し、テーマソング「カラフル〜台湾百色旅情〜」を配信リリース。昨年9月までは、ABCラジオ「友近のサタデーミュージックボックス」内のコーナー「ドンマイ千重子のよっこいしょラジオ」のパーソナリティーを務めていた。
 
 ◇文・清川仁

読売新聞2019年1月30日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:清川仁

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