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読売新聞│配信日:2018年12月24日│配信テーマ:洋楽  

日本大好き クイーンの素顔 公私にわたり親交 渡辺美佐さん思い出語る


 ◆自宅に日本庭園 六義園お気に入り
 映画「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットを機に、英国のロックバンド、クイーンが再び脚光を浴びている。映画ではほとんど描かれなかったが、彼らの人気は世界に先駆けて日本で火がつき、大の親日家でもあった。バンドを日本に招き、公私にわたって深い親交のあった渡辺プロダクション名誉会長、渡辺美佐さんが思い出を語った。(文化部 清川仁)
 1975年4月17日、クイーンの4人が東京・羽田空港に降り立ったとき、約1000人のファンが歓迎。彼らには予想外の熱狂で、機内にも渡辺プロの社員が複数人同行するなど破格のVIP待遇だった。「みんな、無邪気に喜んでいました」と、渡辺さんは振り返る。
 当時、渡辺さんは副社長。夫の晋社長が欧州視察の際、英国の事務所に5組ほどを推薦された中から、クイーンを日本で売り出そうと決めた。渡辺プロは、ザ・ピーナッツらを生んだ芸能王国だったが、海外のバンドを手がけるのは初めてだった。
 ザ・タイガースなどで女性の心をつかんだ渡辺さんは、品のいいクイーンを貴公子のイメージで売り出し、10代女性を中心に人気を得た。日本武道館公演を含む初来日ツアーで自信をつけて帰国した4人は、同じ年に不朽の名曲「ボヘミアン・ラプソディ」を発表。飛躍のきっかけをつかんだ日本に、彼らはずっと恩を感じていたという。
 渡辺夫妻は来日のたびに4人を自宅に招き、庭で高級料理店の屋台を並べて遇した。こうした“おもてなし”は、70年の大阪万博でポピュラー音楽部門のプロデューサーだった渡辺さんが、世界のスターを招いて以来、身につけたものだった。
 特にボーカルのフレディ・マーキュリーと渡辺さんは親しく、来日の際はほとんどの時間を共に過ごした。「インテリジェンスがある人。日本文化に興味を持ち、Tシャツもたくさん買っていました。日本のものは変わっているんだそうです」
 6度の来日公演以外にも、フレディは86年に私的に来日。渡辺さんは、百貨店や京都に同行した。ロンドンの自宅の日本庭園などのため、数千万円もの買い物をした。「庭園は六義園(りくぎえん)(東京・駒込)がお気に入り。私が自宅を訪れた際は、植木屋にも会わせてくれました」
 91年、フレディが死去する直前にも、渡辺さんは見舞いのために渡英。「日本橋の『榛原(はいばら)』で買ったふすま紙がしつらえてある日本間で、着物姿で療養していました」。映画のヒットで、日本人が今、クイーンに注目していることを喜ばしく思っている美佐さん。「不思議な人生の彼らだけど、日本を本当に大好きでいてくれました。フレディは最後まで日本のことを勉強していました」
 ◆映画 世代超えヒット 「ボヘミアン・ラプソディ」
 映画「ボヘミアン・ラプソディ」の興行収入は12日時点で約47億1900万円で、動員数は350万人に迫っている。目標としていた20億円を大きく上回り、配給元の「20世紀フォックス映画」では「100億円も狙えるのでは」と期待する。
 公開当初は男性、特に「クイーン世代」といわれる50代の観客が多かったが、次第に女性や若い世代が増え、大ヒットに。同社マーケティング本部の星野有香本部長は、「音楽への興味から始まり、物語に感動した人が増えていった。今は世代を超えて、楽しんでもらえている」と話す。
 楽曲にあわせ、観客も声を上げたり、手拍子したりできる「応援上映」を行う映画館数も100を超えた。オリジナルサウンドトラックなどの売れ行きも好調だ。

読売新聞2018年12月14日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:清川仁

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