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毎日新聞│配信日:2018年11月5日│配信テーマ:その他  

<Interview>石川さゆり 「さよなら」より「大丈夫」 「いきものがかり」の水野とコラボ


 「きっとだいじょうぶ」……。石川さゆりの最新シングル曲「花が咲いている」(テイチク)は若者に人気のユニット「いきものがかり」の水野良樹が作詞作曲した作品である。「いきものがかり」は、昨年1月に「放牧宣言」を行って活動休止に入っている。曲の底流には別れの寂しさや喪失感が色濃いのだが、8ブロックある歌詞のたった一カ所に「きっとだいじょうぶ」のフレーズが並ぶ。石川は、この新曲の説明をする時「きっと大丈夫、っていう歌よ」とほほ笑んだ。「さよなら」は10回も現れるのに。

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 石川は、1958年1月生まれで今年還暦を迎えた。73年3月、アイドル歌手として歌謡曲調の「かくれんぼ」でレコードデビューした。アイドル乱立のこの時期、石川が注目されるのは、アルバム「365日恋もよう」に収録された「津軽海峡・冬景色」が77年にヒットしてからだった。以降、常に最前線に立ち続けるのは石川ひとりである。

 「こつこつと不器用に、いろんなものを見て回り、新しいことに出合っている。悲しいさよならもあるけど、うれしい出合いも。『花が咲いている』も新しい出合いから生まれた」と石川は話し始めた。

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 まず、超人気プロデューサー亀田誠治との出会いがある。「私は阿久悠さん、吉岡治さんの言葉に教えられ、三木たかしさんのメロディーに導かれるような歌手生活を送ってきた。日本の言葉で日本人の心情を歌い、人に寄り添える共感の歌を歌いたいと思い続け、亀田さんにもこの気持ちをお話しした」

 その依頼には「今の歌謡界にはそれが難しい」という前提が含まれていると推察できる。亀田はこう返したという。「いえいえ、今の若い人も頑張ってますよ」。そして「例えば」と紹介されたのが水野だった。

 「水野さんは阿久さんを敬愛していたの。水野さんと話していると、阿久さんや吉岡さんといるのと同じ空気を感じた。例えば阿久さんも吉岡さんも手書きの歌詞原稿を送ってくださる。水野さんも原稿用紙にペン書きで書いてくださった。私が教わったことを、水野さんは共感してくれていると実感した」と待ち続けた友人に再会したような喜びようである。

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 新曲は水野が「時を超えて多くの方々に愛されてほしい」と作った曲である。石川はその願いをかみしめて淡々と歌う。大げさではないがふわりと聴く者を包み込む。石川はデビュー45年と60歳を超えて、今を「歌の生まれ変わり」の時と決めている。「まだ『何かある』と思うの。敬意を持って真摯(しんし)に新しい音楽に向かい合う。お金も時間も知恵も必要。でも大丈夫、こつこつやるから」。石川の旅は出合いを求めてさらに続く。【川崎浩】

毎日新聞2018年10月25日東京夕刊(2版)掲載 執筆記者:川崎浩

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