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毎日新聞│配信日:2018年10月8日│配信テーマ:クラシック  

<Topics>イザイの新発見ソナタ初演 後世に残る美しい曲 バイオリン界に大きな影響


 ベルギーのバイオリニストで作曲家、ウジェーヌ・イザイの新たな《無伴奏バイオリンソナタ》が、今春、ブリュッセルで発見された。18日からイザイ生誕160周年記念として東京、福岡で開かれる「イザイ音楽祭ジャパン2018」(日本イザイ協会、ベルギー大使館共催)で日本初演される。バッハ《無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ》の旧約聖書に対し、新約聖書にも比せられる6曲のイザイの《無伴奏バイオリンソナタ集》に加えて新たにソナタが見つかったことは、バイオリン界に大きな影響を与えるだろう。

 この無伴奏ソナタは3楽章の構成で、今年、ベルギーのバイオリニストからブリュッセル音楽院図書館に寄贈された多くのイザイのスケッチの中から発見された。5月には、緩徐楽章がバイオリニストのフィリップ・グラファンによって世界初演され、その後、全楽章が復元され、このほどレコーディングも行われた。

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 新発見ソナタはどのような曲なのか、校訂したグラファンに聞いたところ「とてもしっかりした第1楽章、歌曲のような第2楽章、そして第3楽章は3分の2まで作曲されていたが未完成だった」という。未完成の部分は「実存する六つのソナタの構造を分析し、同じように完成させた。この素晴らしいソナタは98%がイザイの手によるので、彼の新しいレパートリーとして認められる」。

 作品番号が27の6になっていることから《無伴奏バイオリンソナタ集》(作品27の1〜6)の中に含まれるのだろうか。

 「このソナタは《無伴奏バイオリンソナタ集》の第6番のソナタと同様に、バイオリニストのマヌエル・キロガにささげられ、内容的にも第6番のソナタで見られたいくつかのアイデアが共通している。しかし《無伴奏バイオリンソナタ集》の6曲目はホ長調で終わっている。これはバッハの《無伴奏バイオリンのためのソナタとパルティータ》の終わり方にイザイが合わせたものと思う。新発見されたソナタはハ長調なのでホ長調とは釣り合わない」

 ということは、新発見のソナタは従来の6曲のソナタ集の一環ではないのだろうか。現行の第6番は単一楽章なので、その異稿とも言えないだろう。あるいは、当初第6番として「新発見ソナタ」を作曲し、その後、現行の第6番に差し替えたのだろうか。謎は深まる。

 グラファンは「新発見のソナタは現行の第6番とは全く異なっているが、大変に美しい曲。私はこのソナタは《無伴奏バイオリンソナタ・遺作》として後世に残ると思う」と言う。

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 日本イザイ協会(永田郁代会長)によると、新発見ソナタはドイツでのラジオ放送などで取り上げられているが、全楽章がコンサートで弾かれるのは日本が初めて。グラファンによって18日(福岡・福岡銀行本店FFGホール)、20日(東京文化会館小ホール)、22日(東京・桐朋学園大学仙川キャンパス333室)で日本初演される。ほかに《無伴奏ビオラ「序奏」》などさまざまなイザイの室内楽が日本初演される。出演は加藤知子(バイオリン)、今井信子(ビオラ)、岡本侑也(チェロ)、水本桂(ピアノ)。詳細はhttps://ysayemusicfestivaljapan5.webnode.jp/【梅津時比古】

毎日新聞2018年10月 1日東京夕刊(1版)掲載 執筆記者:梅津時比古

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