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読売新聞│配信日:2018年7月9日│配信テーマ:ジャズ  その他  

想像力で世界は変わる 米サックス奏者 カマシ・ワシントン新作


新時代のジャズを先導する米国のサックス奏者、カマシ・ワシントンが新作「ヘヴン・アンド・アース」(ビート)を出した。独自の思想を反映させた作品で、大編成による迫力あるサウンドを聴かせる。(桜井学)
 「このアルバムでは、現実の世界と想像の世界という二つの世界を表現した。想像力を発揮し、理想を思い描くことで、我々は求める世界を現実にすることができると思う」とカマシ。
 背景には差別や排外主義といった昨今の問題がある。「現在のアメリカは岐路に立っている。憎しみをあおる人々が存在する。けれど、すてきな社会にしたいと思っている人の方が多いはず。みんなが自分の力を信じて動けば、世界を変えることができるはずなんだ」
 アルバムには「アース」のパートと、「ヘヴン」のパートがある。現実の世界を描く「アース」の1曲目は「フィスツ・オブ・フューリー」。ブルース・リーが出演した映画「ドラゴン怒りの鉄拳」の音楽のカバーだ。「果てしない苦闘を表現した。生きていくことには、乗り越えなきゃいけない葛藤がつきまとう」。重厚な響きから、厳しさのようなものが伝わってくる。リーが演じた戦うキャラクターに魅力を感じたという。「信じる力、みたいなものを体現している。それは僕の表現したかったものでもある」
 一方、想像の世界を描く「ヘヴン」の1曲目は「ザ・スペース・トラベラーズ・ララバイ」。こちらは聴き手を天空への旅にいざなうようなロマンチックな曲。「人間の無限の可能性みたいなものを表現した」。この2曲、そして二つのパートは、表裏一体の関係だという。「葛藤がなければ、人間の可能性も広がらない。可能性が広がらなければ、葛藤を乗り越えられない」
 オーケストラやコーラス隊を使ったゴージャスなサウンド。そして、どこへ連れて行かれるのか分からないスリリングな展開に圧倒される。カマシのエネルギッシュな演奏も耳に残るが、アレンジの緻密(ちみつ)さも光る。トランペット奏者のフレディ・ハバードの曲のカバーにはアフリカ的なビートを加えた。「未来に向かうために、自分のルーツを理解したかった。祖先へのつながりという意味でアフリカのリズムを取り入れ、先人のハバードの大好きな曲をやってみたんだ」
 父親もミュージシャンで、カマシは若くしてロサンゼルスの音楽シーンで活躍。2015年のアルバム「The Epic」が高い評価を得た。ジャズ界の大物から人気ラッパーのケンドリック・ラマーまで、共演者は数多い。
 8月には、音楽フェス、サマーソニックに出演。ビルボードライブ東京での単独公演もある。 

読売新聞2018年6月28日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:桜井学

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