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毎日新聞│配信日:2018年6月11日│配信テーマ:ジャズ  

<POPSこぼれっ話>日本ジャズの自由度加速


 高度な演奏技術が必要で、譜面に書き留めることができる……この点において、クラシックとジャズは血縁である。これは世界中で同じ曲の演奏ができ、国際化が進むことを意味する。

 欧州ジャズの名レーベルECMから「フォー・トゥー・アキズ」(ユニバーサル)でデビューしたドラムスの福盛進也はバークリー音大に学び、ECMの本拠地ドイツで活動していた。サックス、ピアノ、ドラムという変則トリオで、宮沢賢治、滝廉太郎らをモチーフにしたシンプルで知性的な演奏はジャズの新たな地平を開く。

 ピアノとトランペットの“二刀流”という驚きの2枚組みアルバム「インフィニット・クリーチャー」(ポニーキャニオン)でデビューしたのは曽根麻央。バークリー音大大学院修士課程を首席で修了、ニューヨークのグローバル・ジャズ研究所に在籍した。「僕がいろんな表現をするのはたくさんの音が聴こえているから」とさらりと言ってのける。エレクトロもアコースティックも世界最先端が両立する。

 バークリー音大では2人の先輩にあたるバイオリンの牧山純子は、クラシカルジャズの新境地をアルバム「ルチア」(同)で展開。大作「スロベニア組曲」が評判で、6月半ばにはスロベニアでコンサートを開く。

 3人に共通するのはジャンルにも楽器にも国にもまったく「境界」を感じていないところである。それはジャズの本質的特徴と言ってもいいが、秋吉敏子や渡辺貞夫が海を渡った時代とは、環境も気構えも異なる。福盛はECMで美空ひばりを奏で、曽根はクラシックのような楽譜を書き、牧山はコメンテーターとしてテレビ出演もする。日本ジャズの自由度は一気に加速している。(川崎浩・専門編集委員)

毎日新聞2018年6月 4日東京夕刊(1版)掲載 執筆記者:川崎浩

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