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読売新聞│配信日:2018年4月16日│配信テーマ:Jポップ  

新作はロック一色 及川光博 歌詞の世界を演じる


 及川光博の新作「BEAT & ROSES」(ビクター)は、前作のファンキーな作風から打って変わってロック一色。ビート感あふれる力強い楽曲が並ぶ。俳優としての評価が高まるにつれて、曲作りや歌唱といった音楽活動にも深みが増しているようだ。(鶴田裕介)
 「僕は歌うというより、演じるんです。歌詞世界の主人公を、役として」。ミッチー流の表情豊かな歌唱の極意を明かす。
 「年齢のこともあるんでしょうか。激しい音楽で、激しいステージを展開したかったんです」。来年50歳を迎えるのを前に、今しかできない音楽を作りたい。それがロックだったという。「ビートがあれば、体は揺れる。何とも原始的で、楽しいことだと思います」
 激しい曲調に乗って、それぞれの歌の世界の主人公と化す。「恋にうつつをぬかしたい」では、夏、刺激的なファッションに身を包む女性に見とれるあまり、やがて「女子になりたい」という願望に発展してしまう。昨今のアイドルブームを眺め、「そう思っている男子は多い」と感じたことから着想を得たという。
 作品を通じて、愛と欲望を巡る過激な歌詞がいたるところに。「スレスレを攻めることをやめてしまったら、音楽の楽しみが減ってしまう。僕にとっては」。1曲1曲が及川のエッセーであり、短編小説だ。
 俳優としてドラマに、映画にと引っ張りだこだが、どんなに多忙でも毎年のように作品を発表し、全国をツアーで回る。作詞作曲は撮影のない日に家で行っている。「お風呂ですね。浴槽につかっていると、詞やメロディーが浮かびます。紙とペンがあればものは作れるんですが、風呂では使えないんですよね。何かいいグッズ知りませんか?」と逆質問された。
 音楽と演技の両立は「難しくない」という。「ミュージシャンは『どうしたいのか』の自問自答。俳優は『どうあるべきか』。自分の中の切り替えは年々シンプルになっています」。両立を巡る課題は、やはりスケジュールだ。「趣味がなくて本当によかった。釣り、ゴルフ……。趣味があったら時間割きたいですもんね」
 今年も春から夏にかけ、ツアーで全国を回る。女性ファンを「ベイベー」と呼び、距離感の近い熱狂的なパフォーマンスで知られる。「シンプルに、愛ですよ。愛という感情、心の作用に照れちゃダメ。いつの日か死ぬんだから、愛し合うべきですよ」
 ミッチーにしか言えないセリフが次々と飛び出しそうだ。

読売新聞2018年4月 5日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:鶴田裕介

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