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読売新聞│配信日:2018年1月29日│配信テーマ:その他  

[ALL ABOUT]長瀬智也 グラミー賞 ハンパない興奮


 ◇Pop Style vol.582 
 ジャニーズの人気グループ、TOKIOの一員で、ドラマにバラエティーにと活躍する長瀬智也さん。最もこだわりを持つ音楽活動では、ボーカル、ギター、作詞・作曲・編曲も担当し、無類の音楽好きとしても知られる。28日(日本時間29日)に、ニューヨークで行われるグラミー賞の授賞式には、WOWOWのスペシャルゲストとして現地の模様を中継する。グラミーと音楽への熱い思いを聞いた。
 
 ◆メタリカしびれた
 「感慨深い時間でしたね。色々なことを考えちゃいましたね。アーティストたちは、別に賞をもらうために音楽を作っているわけじゃないけれど、グラミー賞を与えられることで、時代に焼き付けられて残っていく。2010年代は誰々の時代だった——と刻まれていく。それも、音楽のヒストリーのうちの一つの形だと思う」
 昨年、初めてグラミー賞中継のスペシャルゲストとして招かれ、ロサンゼルスでの授賞式の興奮を伝えた。約1年前のことを振り返るのに、体中がいまだ新鮮な感動に包まれている様子。言葉が止まらない。
 グラミー賞授賞式で注目されるのは、賞の行方だけではない。豪華アーティストたちが続々登場し、趣向を凝らしたライブパフォーマンスでも魅了する。昨年、長瀬さんがとりわけ心をわしづかみにされたのは、少年時代から聴いているメタルバンド、メタリカがレディー・ガガと共演したステージだった。
 「昔と変わらずに歌い続けているというのが、僕の目には格好良く映りましたね。演出なんてバンドセットと炎だけ。男らしいなって。『パフォーマンスどうしますか』『そんなもの、火とかバッてやっとけよ!』って。それぐらい言ってみたいですよね。僕は男なのにキュンとしちゃいました。新世代のアーティストたちの中で、1980年代からのスタイルで自分たちの音楽を見せる。そこにからみついたレディー・ガガが、またハンパじゃなかったですね」
 ◆感動トリビュート
 昨年は、ジョージ・マイケルやプリンスなど大物を追悼するトリビュートも見ものだった。「トリビュートが出来るのは音楽だけじゃないですか。改めて音楽の素晴らしさを知りましたし、すごく楽しかったです。アデルがジョージ・マイケルのトリビュートをしたことに、グッときました。すごくリスペクトが感じられて、その思いが美しいなあって。だからなんかもう、なんだろうな……もう音楽のポップシーンの全てがなんかここにあるような気がしますね」。しみじみ語る。
 また、現地の祝祭的な雰囲気にも感じ入った様子。「どこでも音楽が流れていて、どこでも音楽の話をしていて。授賞式会場近くにあるグラミー・ミュージアムでは、僕が見た時はラモーンズの特集展示をやっていて、バンドセットとか、Tシャツとかフライヤーとかが飾ってありました。マイケル・ジャクソンとか、ちっちゃい頃から見ていた衣装もあって、夢みたいでしたね」
 ◆やっぱりバンド最高
 長瀬さんは物心ついた時から音楽、特に洋楽に囲まれていたという。「僕は7歳からスケボーを始めて、その先輩たちが音楽が大好きだったんですね。『これ聴いてみろ』とか言われて、イヤでも入ってきちゃう。1985年だったから、ボン・ジョビやスコーピオンズがはやっていた。中学に入る90年ぐらいの時は、70年代のロックとかを聴いていましたね」
 ロック、ブルース、ジャズと、ジャンルの好みがない代わりに、バンドが好きというこだわりを持つ。「バンドって、それぞれ自分の役割があるところがいい。みんなやってることが違うけれど、一つになって音楽になる。ソロにはソロなりの良さがあるけれど、民族が火の周りに集まってポコポコたたきながら、みんなで歌ってきたのが音楽のルーツですよね。人が歌う、人が楽器を奏でる、これが僕のなかで音楽の絶対条件なんです」
 では、バンドでデビューできたことは、まさに望み通り? 「いやもう、最高っすねえ」
 TOKIOでは最年少ながらボーカル、ギターという華やかな役割で、さらに作詞・作曲・編曲も数多く手がけている。「僕が聴いてきたミュージシャンのようなテクニックは、僕にはない。けれど、それでも音楽はできるし、感動させられると思う」と語る。
 今年、グラミー賞60回を記念し、授賞式は15年ぶりにニューヨークで開かれる。「音楽を作ることがどれだけ大変なことかは分かっているので、リスペクトすべき個性あるアーティストが一気に集まるグラミー賞は贅沢(ぜいたく)。また参加させてもらい、本当にありがたい。ジャズの本場で行われることも興味深いですね」
  
 ◎今年の候補 聴き比べ 
 グラミー賞主要4部門の候補に対する印象を長瀬さんに聞いた。
 ◆ぶれないジェイ・Z ブルーノ・マーズ「まるで指揮者」  
 次世代を担うアーティストが一斉に出てきた感じで、頼もしいですね。そして、ノミネートされたアーティストの多くが、ストリートから育ってきた人たちだと思います。ただ純粋に音楽が好きで活動を続けてきた人ばかり。そんなアーティストが評価される時代が、一周回ってやって来てうれしいです。
 最多ノミネートとなったジェイ・Z(主要3部門を含む8ノミネート)は、僕も昔からよく見ていました。楽曲もミュージック・ビデオもパフォーマンスも、全てのクリエイトが完成し尽くされている。ファッションでも常に最先端をいく人。昔からぶれない姿勢で、男臭さもずっと変わらない。
 ブルーノ・マーズ(主要3部門を含む6ノミネート)は昨年、授賞式の会場で生でパフォーマンスを見ました。その時にも感じましたが、彼はきっと楽曲を作る時に、その曲をどうライブでパフォーマンスするかまで含めて考えているんでしょうね。まるで彼が指揮者になって全てを動かしているような、彼が音楽をその場で鳴らしているように見える。
 ◆「デスパシート」冒険心感じる曲
 年間最優秀楽曲の候補では、「デスパシート」(ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー feat.ジャスティン・ビーバー)に注目しています。この曲、実はすごくシンプルで、ラテンっぽい楽曲ですがポピュラーになるように作られている。豪華なメンバーで音楽好きの3人にしか放てないメッセージが詰まっているのを感じました。もしこの楽曲が受賞すれば、これから、音楽はもっと自由になってもいいんだと感じられるでしょう。それくらいこの曲から、挑戦的というか冒険心を感じましたね。
     ◇
 このほか、主要2部門にノミネートされたケンドリック・ラマー、同じく2部門のチャイルディッシュ・ガンビーノなどが注目されている。女性シンガーのロードは「メロドラマ」が年間最優秀アルバム候補にノミネートされている。 
  
 Q.音楽と芝居の共通点は?
 ●.伝えるということ、人間がやっているということ。そして、どちらも感じるもの。音は目に見えないものだから、聞いた人の頭にしか浮かばないんでね。感受性がないと音楽は聴けないですよね、その曲から何かを受け取ろうとしないと、ただのBGMですから。あと、音楽って、いい音が全てではなく、世界観のためにわざと悪い音にすることもある。マイナスさせることも大事なところは、お芝居にも似ていますね。
 Q.音楽の聴き方は?
 ●.表に出る人たちより、そのレコーディングに携わったミュージシャンを追う。ここのホーンセクション(管楽器奏者のユニット)が、どこどこのアルバムに参加したとか。
 Q.影響を受けた音楽は?
 ●.昨年亡くなったグレッグ・オールマンも好きでした。サザンロックもブルースも大好きで。楽器を持つ人たち、特にギタリストが好きで、僕がレスポール(ギブソン社の人気モデル)を持ったのは、スラッシュ(米国のロックバンド、ガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト)の影響ですね。蓋を開けてみたら、自分が好きなギタリストはみんなレスポール使う人ばかり。つながっているんだなと思う。
 Q.ジャズも聴く?
 ●.好きだし、勉強の材料としても使いますね。レス・ポールさん(レスポールギター開発者)がもともとはジャズを弾いていたからという流れもあって。プレーヤーの音のクセみたいなのを好きになってしまいますね。ジョン・スコフィールド(米国のジャズ・フュージョン系ギタリスト)なんて誰も弾かないようなフレーズを弾く。コンビニとかで流れようもんなら、すぐ『ジョンスコだ』って分かるぐらい。絵がタッチでアーティストが分かるように、音にもそういうものがあるんですよね。
 Q.ロックフェスに行く?
 ●.2015年のフジロックに行きました。モーターヘッド(轟音(ごうおん)サウンドで知られるロックバンド)の日本でのラストライブでしたね。その年末、レミー(同バンドの中心メンバー)が亡くなってしまって。
  
 ◇ながせ・ともや 1978年11月7日生まれ。神奈川県出身。93年に俳優デビュー、94年にTOKIOとしてCDデビュー。テレビドラマ「白線流し」「池袋ウエストゲートパーク」「タイガー&ドラゴン」などに主演したほか、「ザ!鉄腕!DASH!!」などバラエティー番組でも活躍している。
       
 「生中継!第60回グラミー賞授賞式」
   1月29日午前8時半<WOWOWプライム>2か国語版同時通訳
 「第60回グラミー賞授賞式」
   同日午後10時<WOWOWライブ>字幕版
 WOWOWの中継で案内役を務めるのは、ジョン・カビラさんとホラン千秋さん。昨年と同じ組み合わせで中継を盛り上げるカビラさんがコメントを寄せてくれた。
 「前回、長瀬さんが音楽愛にあふれる方だということを知り、その熱い音楽談議を聞いて僕自身もとても刺激になりました。そして、本心を言うと……長瀬さんだけが会場に入れる(※)ので羨ましいです!(笑) 今回もぜひとも会場の熱気をそのままにスタジオに戻ってきていただいて、興奮冷めやらぬコメントをお待ちしています」
 (※案内役のカビラさんは、会場外に設置された特設スタジオから中継する役目なので、授賞式を生で目撃できないのです)
    
  
 ◇文・清川仁

読売新聞2018年1月24日読売新聞記事(1版)掲載 執筆記者:桜井学

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