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毎日新聞│配信日:2017年12月25日│配信テーマ:その他  

<Topics>坂本冬美、香西かおり 「演歌」レベルの高さ示す カバーアルバムが注目


 人気実力ともに演歌の第一線を走る坂本冬美と香西かおりがカバーアルバムを発表し、注目を集めている。坂本は「ENKA2〜哀歌〜」(ユニバーサル)、香西が「玉置浩二を唄う」(同)である。

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 坂本の作品は「演歌」の名曲をオリジナルアレンジで衣替えし、別の曲のように新鮮な印象を生み出そうという企画。以前話題を呼んだポップス作品シリーズ「Love Songs」は、カバーが5枚、オリジナル集が1枚という長期シリーズになった。「ENKA」も昨年の「1〜情歌〜」に続くものである。

 「情歌も哀歌も『えんか』と読んでもらうことにしてます。私が歌い続けている演歌は『みな同じ』と批判する人がいますが、実は、いろんな表情を持っています。応援歌もあれば、うれしい出会い、悲しい別れ、深い悲しみと、さまざまな心の動きを描く。この新シリーズでは、名作『演歌』を着替えさせることで、格好良くして、新たな魅力を作り出せないかと考えた」と意図を語る。

 編曲は坂本昌之で、ロック調の「帰ってこいよ」、ファドっぽい「紅とんぼ」など「情歌」に比べさらに凝ったアレンジに変身している。「演歌は私の本道。普段聴かない人がこの編曲で演歌の面白さに気付いてくれれば」と期待する。

 ほかに「雨の慕情」「酒よ」「アカシアの雨がやむとき」など名曲が並び、「居酒屋」は本家・五木ひろしがデュエット相手を務めている。坂本も、一曲一曲歌唱を変えて丁寧に対峙(たいじ)している。

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 香西の作品は30周年の記念アルバム。タイトル通りシンガー・ソングライター玉置浩二の作品を10曲収録している。こちらも、編曲が注目で、アレンジャーにジャズ畑のピアニスト久米大作を起用。彼の選んだギタリスト1人と久米の鍵盤楽器とのデュオでほとんどの伴奏を行うという冒険的な企画である。ギタリストは窪田晴男、古川昌義、白井良明、押尾コータロー、浅野孝已、天野清継という個性派がそろった。

 「記念年で特別なことをやろうというとき、すぐに玉置さんが浮かんだ。彼の作品は懐かしく切なく、それでいて極めてテンションが高い。大好きというだけでなく、作家性が濃く歌いがいがある。30周年にふさわしい作家」とべたぼれ。玉置と香西のコラボは1993年「無言坂」▽97年「すき」▽2017年「標(しるべ)ない道」と3作あり、いずれも「私の節目となる作品ばかり」と香西。

 編曲や伴奏については「久米さんは長い付き合いだから、バックをシンプルにして個性が強く出るように考えてくれた。ギターの名人芸も楽しめます」とPRする。オリジナル3曲のほか「あなたに」「メロディー」「悲しみにさよなら」などが選ばれた。

 坂本と香西の作品は、挑戦というだけでなく、演歌界のレベルの高さを示した点でも、大いに評価されるべきであろう。【川崎浩】

毎日新聞2017年12月14日東京夕刊(1版)掲載 執筆記者:川崎浩

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