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音楽ライター記事

ライター:伊熊│配信日:2017年3月16日│配信テーマ:クラシック  

木のぬくもりを感じるしいきアルゲリッチハウスのすばらしい音響



 3月4日、別府のしいきアルゲリッチハウスに講演に行った。これは別府アルゲリッチ音楽祭実行委員会の主催によるもので、「クラック音楽との出会いによる未来創造事業」の一環として催され、私の講演のテーマは「ピアノと室内楽の楽しみ」である。

 しいきアルゲリッチハウスは、毎年5月に開催される「別府アルゲリッチ音楽祭」の拠点であり、音楽のすばらしさを共有し、未来へ向けて新たな芸術と豊かな心を育む場所として活用されている。

 ピアニストのマルタ・アルゲリッチの名を冠した150席のクラシックサロンで、アルゲリッチ芸術財団の名誉理事、椎木正和氏からアルゲリッチに対する尊敬と親愛の証しとしてこのハウスが贈られることになった。大分名産の杉の木を使用したサロン内部は、まろやかで美しい音響を誇り、ユニークな外観も特徴的である。

 ここには、敬愛を込めてしいき氏から寄贈されたアルゲリッチ専用のピアノ「マルティータ」が設置されている。オープニングは2015年5月15日。以来、別府アルゲリッチ音楽祭の会場のひとつとして、さまざまなコンサートが行われている。

 今回の講演では、講義の間にテーマに沿って数種類のCDとDVDをかけたのだが、その音響のよさは明確に伝わってきた。このサロンの壁面は木材がまっすぐに組まれているのではなく、互い違いになっているというか、一見すると凸凹しているのだが、そこに音が当たり、幾重にも方向を変化させて反響し、聴き手の耳に多彩な音色となって響いてくるのである。

 このような壁は、これまで見たことがなかった。すばらしい職人技を感じるとともに、室内楽ホールならではの温かみとナチュラルな響きが生まれることに深い感動を得た。次回は、ぜひここでナマの演奏を聴きたいと切望してやまない。

 講演には、地元のクラシックファン、音楽ファンが多数集まってくれ、みなさんとても熱心に耳を傾けてくれた。メモを取っている人もいて、話にうなずいたり笑ったり、本当に会場が一体となる空気が生まれた。

 これも、すばらしい雰囲気を生むサロンならではのことだろう。事前に照明や音響など、いろんな打ち合わせをしたが、スタッフ全員が一丸となって場を盛り上げてくれ、無事にしいきアルゲリッチハウスでの初めての講演を終えることができた。

 今年の別府アルゲリッチ音楽祭では、5月8日にチェロのミッシャ・マイスキーが愛娘のピアニスト、リリー・マイスキーとのデュオを行う予定になっている。

2017年3月16日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:伊熊よし子

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