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音楽ライター記事

ライター:山崎│配信日:2017年3月9日│配信テーマ:洋楽  

エアボーンが「イッツ・オール・フォー・ロックンロール」でモーターヘッドをリスペクト




オーストラリア出身のハード・ロック・バンド、エアボーンが2017年に公開したミュージック・ビデオ「イッツ・オール・フォー・ロックンロール」が話題を呼んでいる。

彼らの最新アルバム『ブレイキン・アウタ・ヘル』(2016)からのこのナンバーは、2015年12月28日に亡くなったモーターヘッドのレミー・キルミスターに捧げる曲だ。“ハードで速く、自由なロックンロール”をプレイし続けたレミーを讃える歌詞が、ハードな曲調に乗せて胸にズンと来るが、ビデオにはさらに彼への敬意を込めている。

レミーの映像を挿入しているのに加え、このビデオで注目なのはエアボーンが“ボマー”を頭上にして演奏していることだ。“ボマー”はモーターヘッドのステージでお馴染みの爆撃機型の照明機材で、1970年代以来バンドを照らし続けてきた。全英チャート1位を達成した名盤ライヴ・アルバム『極悪ライヴ』(1980)のジャケットでも、この“ボマー”を見ることが出来る。

エアボーンは「イッツ・オール・フォー・ロックンロール」ビデオのために、レミーが亡くなってから封印されてきた“ボマー”を遺された関係者から借り受け、使用しているのだ。

実はエアボーンとモーターヘッドの交流は長い。エアボーンのデビュー・アルバム『ランニン・ワイルド』(2007)から第1弾シングルとしてリリースされた「ランニン・ワイルド」のビデオはトラックの荷台でバンドが大音量で演奏し、パトカー軍団に追いかけられるという内容だが、トラックを運転しているのがなんとレミーだった。

ただ、レミーは車を運転できないため、実際にはただ演技しただけだった。

ちなみに彼は「1966年以来一度も運転をしていない」そうで、「ロサンゼルスに住んでいて、車がなくて困らないですか?」という筆者(山崎)の問いに対して、こう答えている。

「女の子が俺に会いに来てくれるから問題ない。女の子と会う以外、大した用事なんてないだろ?普段世界中を飛び回っているから、家にいる時ぐらいゆっくりしたいんだ。歩ける距離にある酒場とストリップ・バーぐらいにしか行かない」

なおレミーは2011年、フー・ファイターズの「ホワイト・リモ」ミュージック・ビデオにもカメオ出演しているが、このときもリムジンを運転する役柄だった。もちろん実際には運転していない。

2008年に『ラウド・パーク08』フェスで初来日、約40分間の火を噴くようなステージで観衆を吹っ飛ばしたエアボーンだが、そのときのインタビューで筆者にこう語っていた。

「俺たちはアイアン・メイデンやモーターヘッドのような、ラジオに尻尾を振らない、誇り高いロックンロール・バンドを尊敬している。だから俺たちも妥協したことはないし、これからもあり得ない。彼らからの影響はエアボーンの音楽性の血となり肉となっているよ」

最後の来日となった2015年の『フジ・ロック・フェスティバル'15』で、レミーは最後の生命エネルギーを振り絞るようなライヴ・パフォーマンスを我々の心に刻みつけ、その5ヶ月後に旅立っていった。だが、その精神は後進のロックンロール・バンド達に受け継がれていく。エアボーンが「イッツ・オール・フォー・ロックンロール」で歌っているように、“彼の魂は今なおステージ上にいる”のである。

2017年3月 2日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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