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音楽ライター記事

ライター:山崎│配信日:2013年5月30日│配信テーマ:洋楽  Jポップ  その他  

洋楽サイドから見た『Ozzfest Japan 2013』


 2013年5月11日・12日、幕張メッセで『Ozzfest Japan 2013』(以下オズフェス)が行われた。両日それぞれ2万人の観衆を動員、ブラック・サバスやスリップノット、トゥール、スラッシュなどがステージに立ったこのフェスティバルは凄まじい盛り上がりを見せ、終わってみればきわめて満足度の高いものだった。

 思えば、さまざまな論議を巻き起こしたフェスティバルだった。1996年にアメリカで始まったオズフェスは、ヘヴィ・ロック/メタルの祭典として認知されてきた。そのため、日本での開催が発表された時点では、同様のラインアップを予想していたファンが少なくなかった筈だ。第1弾・第2弾として告知されたのは海外アーティスト勢だったが、結果としてラインアップの半数以上を占めたのは、邦楽アーティストだった。DIR EN GREYやマキシマムザホルモンのようなヘヴィなサウンドで知られるバンドはともかく、MAN WITH A MISSION、Fear, and Loathing In Las Vegas、NAMBA69らの出演が決まった時点で、オズフェス・ジャパンがいわゆる”洋楽ヘヴィ系フェス”ではないことが明らかになった。

 この人選によって、2006年から毎年行われている『ラウド・パーク』フェスとの差別化が図られることになった。より幅の広いスタイルのバンドが出演することで、”フェス=お祭り”色が濃くなったことは確かだ。チケット先行発売が11月26日、邦楽勢の出演が発表されたのは12月25日だったため、洋楽ヘヴィ系フェスを期待していち早くチケットを押さえたファンにはお気の毒だが、やや勇み足だったことも事実だろう。

 だが、それ以上の論議を呼ぶことになったのが、フェス開催から1ヶ月を切った4月14日に発表された、ももいろクローバーZだった。ブラック・サバスやスリップノットのファンからは「ジャリタレなんか出してんじゃねえ!」などという否定的な意見もあったが、 彼女たちが出演するにあたって、主催者側が細心の注意を払っていたことが判る。

 出演陣ではトップ級の日本国内CDセールスを誇る彼女たちだが、このフェスでの出番は17:10から30分間という短いもの。ザ・トリートメントなどと同じ持ち時間で、あくまでアウェイ扱いだ。フェス全体の雰囲気を左右するものではなかった。30分だったら、食事やトイレに行くだけで終わってしまう。

 1997年の第1回フジ・ロック・フェスティバルではTHE YELLOW MONKEYのために早い時間からステージ前方に彼らのファンが集まり、そのせいで他アーティストの演奏時、観客のノリが悪くなるという例があった(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやフー・ファイターズのファンが後ろから押し寄せたせいで、イエモンファン数人が救護室送りとなる結果にもなった)。オズフェスでも、昼12時頃には若干のももクロファンが最前列に陣取っていたが、2つ並んだステージで、デフトーンズとは別ステージだったおかげで、ノリが悪くなることはなかった。ももクロが終わると、彼女たちのファンはすぐに撤収したため、スラッシュのファンは前方に集まることが出来た。

 ももクロがフェスの初日に出演したことも功を奏した。この日のトリだったスリップノットは、これまで1曲目になったことのない「ディザスターピース」からショーをスタート。全20曲のフル・ライヴは凄まじいテンションで、アンコール「(sic)」、「ピープル=シット」、「サーフェシング」を畳みかける頃には、観衆は虚脱状態。心身共に蹂躙されまくり、不満を垂れるどころではなかった。

 2日目のトゥール〜ブラック・サバスという流れも完璧以上の素晴らしいものだったが、サバスの演奏曲目が大洋州ツアーから数曲カットした”短縮版”だったため、もしももクロが2日目に出演していたら、「あんなのを出すからサバスの持ち時間が短くなったんだ!」と文句を言うファンがいたかも知れない。オジー・オズボーンが復帰して日本初上陸となるサバスは、ヘヴィ・メタルの始祖の貫禄と殺気ただようライヴを披露したが、ファンというのは贅沢なものだ。

 もし彼女たちが出演したことがオズフェスに害をもたらしたとしたら、「チケットの売れ行きが悪いからアイドル・ファンを呼び込もうとした」という誤解によるマイナス・イメージを招いたことだろうか。実際に2日間、足を運んでみて、初日はももクロファン(とホルモンファン)が目立っていたことは確かだった。だが、彼らが出演しない2日目も、大観衆で賑わっていた。もし初日に彼らが出ていなくても、十分以上の観客動員は望めただろう。

 それに、仮に「チケットが売れないからアイドルを出演させた」のが事実だとしても、ブラック・サバスとスリップノットとトゥールが出演する歴史的フェスが実現したのだ。奇しくもオズフェスと同日、味の素スタジアムでは、ブラーやマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、プライマル・スクリームらが出演する『TOKYO ROCKS』フェスが予定されていたが、開催中止となっている。それと較べたら、オズフェスは天国である。いや、出演バンドを考えると、”地獄”の方が褒め言葉になるだろうか。とにかく大音量のライヴ・パフォーマンスに全身を貫かれ叩き伏せられる、至福の2日間だった。

 ところで2010年9月にテルアビブで行われた『Ozzfest Israel』も日本と似通った構成で、オジー・オズボーン、KoЯn、ソウルフライに加えて、イスラエル出身のアルマナ・シュコラ、ベツェファー、ビハインド・ザ・サン、お笑い芸人でもあるタル・フリードマンが出演したが、地元での反響がどんなものだったのか、興味がある。好意的に迎えられたのか、それとも「イスラエルのバンドばっかじゃん!」「お笑いなんて出すな!」という否定的意見もあったのだろうか。

 フタを開けてみれば、第1回『オズフェス・ジャパン』はとてつもなく激しく、とてつもなく楽しいフェスティバルだった。今回の”洋楽ヘッドライナー+邦楽人気バンド+α”というフォーマットが今後踏襲されるかは判らないが、ぜひとも第2回、第3回へと繋げていってもらいたい。

2013年5月30日音楽ジャーナリスト&ライターの眼(1版)掲載 執筆記者:山崎智之

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