2013年3月期 第3四半期 決算説明会 質疑応答

Q1 : 楽器事業のQ3実績、売り上げ減少幅の割に利益の落ち込みが大きいが、稼働調整の影響など特別なコスト増があったのでしょうか?

A1 : 楽器セグメントの売上高は、対前回予想、為替影響を除外した実質ベースで▲50億円減収となる一方、生産については、ほぼ前回予想通りに推移し、生産高は+2億円でした。実質減収により、売上総利益ベースで▲31億円の減益影響が出ています。実質販管費の減少が+12億円あるため、楽器セグメントの営業利益は全体で対前回予想▲19億円の減益となりました。


Q2 : 中国、新興国の下振れ要因と来期の見通しはどうでしょうか?

A2 : 中国市場が、消費減速と言われるなか、楽器販売は堅調に推移していましたが、反日デモ等の動きの直後である10月は、多少影響が出ました。しかしながら、11月以降は、現地通貨ベースで対前年同月比二桁以上の成長となっており、元のペースに戻ってきています。また1月は前年が旧正月に当たっていたため正しい比較とはなりませんが、対前年150%以上と好調です。このことから中国市場の様相が大きく変化したとは捉えていませんし、反日の影響を大きく受けているとは考えていません。ただ、ピアノ販売については、市場規模も大きくなり、これまでのように年間120%の成長を維持するのは難しくなってきていますが、中国市場で楽器の成長は当面継続すると見ており、ピアノだけでない幅広い商品群の積極的なマーケティング、販売網開拓、音楽教室の展開拡大という基本的な方向性は変わりません。
その他の新興市場は、国毎に状況は異なっています。例えば中近東のイラン、シリアやアフリカでは政情不安の影響があり、中南米のアルゼンチン、ブラジルは成長率が鈍化してきています。インドネシア、タイは当初の想定通り成長していますが、アジアの中での成熟市場である台湾、韓国は、先進国市場と同様に高い成長の実現は難しくなっている状況です。
 市場全体では、今後の急回復は難しいかもしれませんが、中産階級の増加などによる各市場のポテンシャルは依然としてあるため、成長は継続するものと認識しています。


Q3 : 楽器の在庫の中身をくわしく教えてください。(地域別、製品別、流通在庫の状況)

A3 : 製品在庫で膨れているのは、電子楽器です。ポータブルキーボード、電子ピアノの在庫が全世界で増加しています。また流通在庫も11月~12月の販売が当初の期待値に届かなかったことから積み上がってきています。こうした状況を受けて、第4四半期の生産調整を実施することになりました。
 中国のピアノについては、当社からの卸販売は11月、12月と順調でしたが、小売りが伸びず、販売店の在庫がやや高止まりしています。販売店の開拓を継続して進めているため売り上げ全体は伸びていますが、既存店の売り上げ成長率が減速しています。


Q4 : 半導体事業において、今期末に在庫評価減などの特別な費用は発生するのでしょうか?

A4 : Q4において(開発費用の前倒し以外に)特別大きな費用は想定していません。


Q5 : 来期の半導体の固定費削減について、金額、内容を教えてください。

A5 : 構造改革の効果として19億円を見込んでいますが、そのうち人件費を含む固定費の削減は9億円を見込んでいます。


Q6 : 楽器の流通在庫を販売店が処分販売したときにヤマハの損益に影響はあるのでしょうか?

A6 : 販売店の処分販売は場合によっては有り得えますが、それがヤマハの業績に大きな影響を及ぼすことは基本的にありません。ただし当社の販売子会社が処分販売した場合は業績に影響しますが、これについてはQ4の業績見通しに織り込んでいます。


Q7 : 来期に享受するであろう為替メリットは価格政策(値下げ等)に反映させる考えでしょうか?

A7 : 今期は、円高対策として各市場で値上げを実施してきました。Q2までは販売に大きな影響は出ていませんでしたが、Q3以降は市況の変化により、特に新興市場において価格面が支障になって販売がやや鈍化した面もあると認識しています。現行商品を値下げするのは難しい面もありますが、新商品は今の為替水準に応じた値付けが可能になるので、増収の可能性があると考えています。いずれにせよ、今後の価格政策はより慎重な対応を取っていきたいと考えています。


Q8 : 今の為替水準が続いた場合、楽器の収益性は変わると認識してよいのでしょうか?

A8 : 全体の損益としてはプラスに働きます。


Q9 : 楽器事業における、通期営業利益の前回予想からの増減分析を教えてください。

A9 : 対前回予想比較では、実質減収減産▲54億円、値上げ未達成▲1億円、為替+6億円、実質販管費の減少+19億円、以上で▲30億円の減益となりました。
対前年比較では、為替▲25億円、実質減産▲29億円、実質販管費の増加▲6億円、材料費のコストダウン+1億円、退職給付債務+7億円、埼玉統合効果+11億円、値上げ・新規連結+29億円、以上で▲12億円の減益となりました。


Q10 : 減産の決断時期が遅れたことで影響が大きくなったのではないでしょうか?

A10 : Q3の生産調整はブレーキの踏み方が甘かったと言わざるを得ません。Q3は重要な販売時期であるのと同時に新商品の生産・ローンチが進行する時期であることから、結果として対応が甘くなってしまいました。
 在庫が増加している傾向はQ2の終わり頃から認識していましたが、Q3の販売部門における見通しは、前年の震災影響による商品供給不足からの回復も前提要素として捉えており、大きな成長を見込んでいました。実需に応じた迅速な生産対応が今後の課題と認識しています。


Q11 : 在庫状況について販社との情報共有が(ウィークリーベースで)できているのでしょうか?

A11 : AV商品ではウイークリーベースで販売状況の把握ができていますが、例えばピアノでは週単位での確認はできていません。今後の課題として認識しています。


Q12 : 生産調整の遅れは、経営として12月の増売に強い意思を込めたのか、それとも情報の把握が遅れただけなのでしょうか?

A12 : 当然年末の販売目標への期待が前提にはあったことは事実です。そのことよりも、震災影響からの回復や成長などの市場状況の分析が甘かったとことが原因と言わざるを得ないと認識しています。


Q13 : (為替予約していないと仮定したとき)今の為替水準で、どの程度の営業利益が出せるのでしょうか?

A13 : (ドルはドル建ての売りと買いがほぼ均衡しているため、ユーロに限定して回答させていただきます。)Q4の為替レートは115円で想定しているが、予約は105円で、営業利益の算定は105円で実施しています。仮に為替予約をしていない場合、増益額としては、1円当たりの感応度3.7億円×10円×1/4(四半期) = 約9億円と算定できます。ただしQ4は売上高が他の四半期に比べ少ないため、約7億円程度と考えることが適当です。さらに足元の125円との差異では、さらに10円の差額 = 約7億円が見込まれます。


Q14 : 足元の為替水準で換算すると通期の営業利益の実力値はどの程度なのでしょうか?

A14 : 足元125円-今期の平均103円=約22円×3.7億円 この算定値が来期、現在の為替レートが継続すれば、営業利益ベースで増益となります。


Q15 : 当初の予想から大分減益となっているが、営業利益200億円を出す実力はなくなってしまったのでしょうか?

A15 : 営業利益200億円は会社として出来るだけ早く実現すべきレベルと考えています。そのためには、現在進めている構造改革の効果出しを含め、本質的な楽器の利益率を上げていく努力を間断なく継続するしかありません。


Q16 : 販売が下振れしたときに販管費をコントロールして利益を確保するフレキシブルな動きは取れないのでしょうか?

A16 : 今期についていえば、実質売り上げが増加したことで、販管費が増えたという面もあります。
他の楽器メーカーに比べると、例えば当社は世界各国に販売現地法人を持ち現地に根付いた営業活動をしていることで、固定費は高いと思いますが、そうした体制があるからこそ、これまでのシェア、業績があるのだと認識しています。その意味では業績が厳しい時の販管費の調整等のフレキシビリティーは他社と較べて劣っているかもしれません。
 国内のように市場が縮退することが明らかな市場では、今回、希望退職を募集するなどして、固定費を削減する対応を進めています。今後は、ヤマハならではの質の高い商品、サービスを届ける基本的なポリシーを踏まえながら、体制のあるべき姿を慎重に検討していくことが大きなテーマだと認識しています。