2012年3月期 決算説明会 質疑応答

Q1 : 今期の売上予想について、特に先進国で強気に見ているようですがその理由を教えてください?

A1 : 先期は震災による部品調達難で、適切な時期での市場への商品供給不足があり、デジタルピアノ、ポータブルキーボードといった電子楽器に売り逃しが発生しました。今期については、欧米市場でシェアダウンしたデジタルピアノについての挽回を計画しています。また、設備音響の新製品として3月に発表したデジタルミキサーの評価が高く、久しぶりの大型商品として期待していることも先進国での高い伸びの見通しにつながっています。
全体の傾向としては、北米の緩やかな回復を期待しており。欧州は多少強めの見通しですが、是非やり切りたいと考えています。一方で、中国は多少保守的に見通しをたてています。


Q2 : 今期の営業利益予想の増減要因に占める販管費の比率が大きいが、その背景と削減可能な内容かどうかを教えてください。

A2 : 今期の販管費は対前期74億円増の計画ですが、内訳は広告宣伝費が30億円増、電算費用が20億円増、支払研究費が10億円増などです。
広告宣伝費については、これまで継続して削減を進めてきていますが、今期は新製品展開に向けて積極的な計画を立てています。しかしながら、業績の状況に合わせた対応は必要であり可能だと認識しています。
電算費用では、BCP(事業継続計画)の観点から東海地震などに対するリスク分散を図るため、情報システムのサーバー移転を計画しています。この計画に15億円を見込んでいることも販管費の増加の大きな要因となっています。


Q3 : 国内の構造改革について、もう少し詳しく聞かせてください。

A3 : 事業構造の変化に伴う単体の損益改善は、重要なテーマと認識しており、固定費削減はその改善の為の基本的な施策の一つと考えています。今後、定年退職者数が年間200~250名で推移する見込みなので、減耗不補充による人件費削減等、様々な施策について検討を進めているところです。
半導体の構造改革のポイントは以下の3点と考えています。
商品については、地磁気センサー、アミューズメント、車載の領域に集中的に資源を投入すること、低利益率の商品の生産販売を縮小とともに固定費を削減すること、鹿児島セミコンの製造品目をセンサー中心にシフトすることに今期取り組みたいと考えています。


Q4 : 繰延税金資産の取崩しについて、収益性の見通しがどのように変化したのか教えてください。

A4 : 繰延税金資産の取崩しについては、ヤマハ㈱単体の課税所得が将来十分に見込めるかどうかが判断基準でした。従来、前期はマイナス、今期はプラスと見ていましたが、円高の影響等により今期の見通しをマイナスに見直したことで、繰延税金資産を取崩すことが必要との判断になりました。
具体的には2009年3月期、2010年3月期の繰越欠損金が、繰越期間内(9年間)に解消できるだけの課税所得が見込めないことが主な理由です。


Q5 : 国内事業構造改革で、単体黒字化を進めることが連結業績に与える影響をご説明ください。

A5 : 国内市場の変化、海外生産の拡大を背景として、国内でどう収益を高めていくかが課題と認識しています。適切な連単バランスの確保に向けた対応をしていくことは勿論ですが、基本的には楽器事業の営業利益率をあるべき水準に高めるなど、全社の資本コストに見合ったリターンを得ることに取り組むということが基本的な考え方です。


Q6 : 国内の事業構造改革は、現行中計YMP125の数値計画達成を目指すものですか?

A6 : 現行中期経営計画YMP125の利益目標については、為替前提も大きく異なるため残念ながら未達となります。今期の事業構造改革プロジェクトで検討する施策は、今期での損益改善の要素もありますが、本質的には、来年度からのスタートする中期計画での成長につなげるためのものと考えています。


Q7 : 楽器の価格改定について、もう少し具体的にご説明ください。

A7 : 楽器については、欧米を中心に市場環境、競合関係などを勘案し、昨年も数回に分けて実施しました。今年も引き続き商品毎に慎重に検討した上で、実施していく考えで、1月に続き、今後も状況を見ながら一部の商品について値上げをする計画です。
昨年末から今年初めに掛けて、欧米では、概ね全ジャンルの商品で3~5%値上げを実施しましたが、今のところ市場から受け入れられ、販売にブレーキがかかるような要因にはなっていないと認識しています。


Q8 : その他の事業の今期予想が、対前期40億円の増収に対し、1億円の増益に留まる理由を教えてください。

A8 : 今期は震災影響からの回復が見込めるものの、レクリェーション事業、FA事業の損益については、前期よりも利益率を厳しく想定していることが主要因です。しかしながら、多少保守的な見通しであることも認識しています。


Q9 : 為替レートは1ドル80円を想定する企業が多いが、75円で設定した理由を教えてください。

A9 : 今期予算編成および前期Q4業績見通しを検討していた時点では、ドル75円、ユーロ105円が適切な水準でした。その後、不安定な為替変動が続き、同レートのままで今期計画を策定した為、ドルについては結果的に多少厳し目に見込んだ形となっています。


Q10 : 通貨別の為替変動による感応度を確認させてください。

A10 : ドルについては1円の変動で7千万円、ユーロは同3.8億円の営業利益影響となります。


Q11 : 北米楽器販売がリーマンショック以前の水準に戻っていないというのはどういうことでしょうか?

A11 : 当社は総合楽器メーカーとしてグランドピアノからギター、管楽器など様々な製品を扱っています。北米で需要が戻ってきているのは、市場規模が大きいエレキギター、エレクトリックアコースティックギターです。当社も、エレトリックアコースティックギターを中心に売上を伸ばしていますが、まだまだシェアが低く、フェンダー、マーチンといった有力ブランドに追いつくべく努力を継続している状況にあります。
一方で、当社が強みを持つ自動演奏機能付きグランドピアノをはじめとする鍵盤楽器は、かつてのITバブル、住宅バブルの際には大きく売上を伸ばしましたが、その後、バブルの崩壊によって、大きく需要構造が変化し、現在は売上が停滞しているのが現状です。
このように商品別に状況が異なりますので、リーマンショック前と同様な需要を見込むことは難しいと認識しています。


Q12 : 繰延税金資産の残高と今後の取崩しの可能性はあるのでしょうか?

A12 : 前期321億円の取崩しを実施しましたが、一部の国内子会社の地方税部分等の10数億円を除きほぼ全額取崩し済みです。海外は20億円程度の残高がありますが、現状見通しでは取崩しの必要はないと認識しています。


Q13 : 前期末100億円程度の繰延税金資産残高に対して321億円を取崩したということの説明をしてください。

A13 : 貸借対照表における前期の繰延税金資産の残高については、約230億円の繰延税金負債とのネットで表示していますので繰延税金資産の残高そのものが表示されている訳ではありません。繰延税金負債は、有価証券評価差額金および土地再評価差額金に関するものであり、取崩しの対象にはなりません


Q14 : 半導体事業における今期30億円の研究開発費は売上の2割を占めるが、これは最低限必要な水準でしょうか?

A14 : 前期Q4で開発費を前倒し計上した部分があり、今期の研究開発費の減少要因になっています。基本的考え方として、開発費の水準をどう見るかは今後の事業構造改革プロジェクトで検討していく予定です。今後、製品構成の集中と選択を図る中で、社内の人件費として必要な部分と社外へのアウトソースが可能な部分を見極めていく必要があると考えています。


Q15 : 研究開発費の削減によって黒字化するというコミットメントはできますか?

A15 : 黒字化に向けては、研究開発費の削減とともにヤマハ鹿児島セミコンダクタの製造コスト低減という課題に取り組んでいくことになります。前者については約30名程度の他部門への異動など既に着手し始めている施策もあります。


Q16 : 今期の四半期別利益予想において、Q2から急激に回復する理由を教えてください。

A16 : 前期Q1と今期Q1との比較では、電子部品の利益水準が厳しいことがあります。 またQ2、Q3は昨年の震災影響からの改善が見込まれることに加え、今期期待する新製品の導入時期も勘案し、Q2から対前期増益を見込んだ計画としています。