中期経営計画「YGP2010」説明会 質疑応答

Q1 : 2007年3月期の楽器事業損益が、前回の中期計画「YSD50」目標の310億円に対し、100億円の減益となる見込みですが、減益要因を要素別に説明していただけますか?

A1 : 前回の中期計画「YSD50」では、3年間で190億円の収益改善を計画しました。内訳として、増収に伴う増益を150億円見込んでいましたが、為替影響による増益も含めて計画半分の77億円に留まりました。一方、積極的な広告宣伝費等による販売管理費の増加は28億円(28億円の減益)を見ていましたが、4億円の増加に留まりました(4億円の減益)。製造改革によるコストダウン計画32億円に対しては、減産に伴う操業度ダウンや原材料価格の上昇もあり、4億円の増益に留まりました。また、要員の構造改革による人件費の削減は36億円の計画に対し、28億円の効果となっています。これは、技能伝承を進めるため、計画よりも前倒しで、新卒採用に踏み切ったためです。


Q2 : 今回の中期計画では、ピアノ全体で100億円増収の計画となっていますが、具体的な市場や商品群に分けて説明いただけますか?

A2 : アコースティックピアノの総需要は、現在の1,650億円から3年後、1,690億円と見ています。北米は少し伸び、欧州は横ばいないし少し調整、中国市場が伸びると思います。一方、デジタルピアノは、690億円から760億円へ伸びると見ています。こうした中で、当社としては、マーケットシェアを拡大し、100億円の成長を目指します。


Q3 : ヤマハのブランド戦略として、中国で売られているような低価格帯の商品からコンサートホール用の楽器まで、今後も、従前どおりのヤマハという単一ブランドで事業展開されるのでしょうか?ヤマハブランドの位置付けをお聞かせください。

A3 : ゴルフクラブでは、「inpres」というサブブランドを使用しているように、ヤマハ単一ブランドだけでなく、サブブランドを含めたブランド戦略展開を進めています。今後は、市場ごと、商品の特性ごとに、トータルのシェアアップや利益維持向上のために、買収したブランドをそのまま使用することもあると思いますし、複数ブランドやサブブランドの活用を進めていきたいと思っています。


Q4 : 中期計画でのピアノの100億円増収を、国、市場別に説明してください。

A4 : アコースティックピアノは、北米では20億円の増収、欧州では、現在の31%のマーケットシェアを33%にアップ、中国は、45億円から70億円へ伸ばす計画です。一方、日本はマーケットシェア向上を図っていきますが、総需要自体が下がると見ており、現在の150億円から135億円と減収を想定しています。デジタルピアノの分野では、北米で90億円から110億円へ、欧州では、120億円から140億円へ各々20億円伸ばします。また、中国では、10億円の売上目標、日本では、60億円から64億円への増収を目指します。


Q5 : シリコンマイクを強化することになっていますが、売上規模を教えてください。また、このために、追加的な設備投資は必要となりますか?また用途としては、携帯電話が中心のようですが、現在のコンデンサマイクと比べた優位性を教えてください。

A5 : シリコンマイクで40億円、デジタルアンプで30億円、モバイル用非音源で60億円の増収を見込んでいます。このために、追加的な設備投資は要りません。0.18μ微細化投資は終了し、生産が始まっています。今後は、この0.18μをフル活用するとともに、先端部分は外部ファンダリーの利用をしていきます。今後3年間では「YSD50」の総投資額130億円に対し、90億円程度を予定しています。
シリコンマイクは携帯電話メーカーから、小さくて携帯電話内部での装着性や加工性がいいとの評価をいただいています。


Q6 : 業務用音響機器事業で120億円を伸ばす計画となっていますが、具体的に伸ばす市場や領域を教えてください。また、競合他社に比べての優位性は何ですか?

A6 : 業務用音響機器では、ミキサーを130億円から140億円へ、スピーカー等の出力系商品で50億円の増収を計画しています。既存のデジタルミキサーの強みを活かしながら、スピーカー、アンプ系など新しい分野をチャレンジしていきます。当社が強みとする操作性の良さや信頼性、システム性を高め、単に売ることだけでなく、各顧客ニーズに適した納入、サービスなどのソリューション提案を進めていくことが、この事業の成長の鍵だと思っています。


Q7 : サプライヤーの立場から見て、楽器市場は、これからの3年から5年で市場の変化をどのように見ていますか?売り方なども変わると思われますか?また、強い財務体質をどのように活かしていきますか?

A7 : 楽器市場の変化は、商品や市場によって、異なると思います。日本では少子化、中古ピアノの流通などで、この20年でピアノ市場が1/10になりましたが、ようやく下げ止まってきたのではないかと見ています。日本の楽器店は音楽教室や個人レッスンなども展開していて、市場の変化に対応してきており、また、若い世代も含め、音楽、楽器に戻ってきている現象も見えてきて、今後少し市場が上向いてくると見ています。米国では買収を重ねた楽器店チェーンが大きな比重を占めており、今後、この楽器店との取引が重要になってくると見ています。欧州ではハウスブランド品を発売している楽器店に対し、ヤマハブランドの強みを更に活かす市場政策の展開が必要だと思っています。商品面では、アコースティックとデジタルは別ではなくシームレスに考えるべきと思っています。また、商品力を上げ、マーケットシェア向上を図るために、業務提携やM&Aを進める専門部署を設置します。


Q8 : 何故、ギターのシェアが低いのですか?商品力の問題でしょうか?どうしたらシェアを増やすことができると思いますか?

A8 : 工場・生産体制をしっかり強化する一方、遅れているアーティストリレーションズを強化していきます。米国のノースハリウッドにあるギターとドラムのR&D拠点のスタッフを増やし、アーティストモデルの製作や商品開発の強化を図っています。日本では、ヤマハミュージッククラフトという高級品を作る子会社を強化整備しており、中級普及品を製造するインドネシア、中国の製造力の一層の強化も進めています。また、商品戦略としては、米国で市場拡大をしているエレクトリック・アコースティックギターを更に強化していきます。この分野では当社の持つ技術力が発揮できると思っています。このような取り組みを進める中で、ギタービジネスを強化していきます。ともあれ、この3年間で基礎体力をつけて、次の2~3年に繋げていきたいと考えています。


Q9 : 半導体での増収を計画していますが、売上目標は個別のアプリケーションを積み上げた計画ですか?それとも、これくらいは期待したいという目標なのでしょうか?

A9 : 過去に開発を進めてきたアプリケーションを個別に積み上げて、計画を立てていますが、実際にやってみなければ、分からない部分もあります。その意味では、今回の計画は、これ位はやりたいという目標といってもいいと思います。


Q10 : この中期経営計画の為替の前提を教えてください。また、減価償却制度の変更に伴う影響は織り込まれているのでしょうか?

A10 : 115円/$ 、148円/ユーロを前提としています。また、減価償却制度変更の影響を20億円、計画の中に見込んでいます。


Q11 : 2007年3月期から2010年3月期へ楽器事業の営業利益が90億円増益となっていますが、その要因を教えてください。

A11 : 売上成長に伴う営業粗利益の増加が116億円、製造損益改善が41億円、為替益等が28億円となり、一方で市場の活性化のため、販売管理費100億円程度増加させる計画です。結果、2010年3月期で300億円の営業利益目標としています。


Q12 : AV・IT事業は前回の中期計画で大きく未達となっています。今回の中期経営計画では増収増益の計画となっていますが、価格下落等、厳しい市場環境を考えると、今回の中期経営計画でも未達にならないのでしょうか?前回と何が違うのでしょうか?

A12 : 前回の中期経営計画では、主力製品であるホームシアターが予定通り伸長しなかったほか、高級Hi-Fi機器や業務用カラオケ機器の後退、また、新商品として期待した映像プロジェクターやMusicCastが苦戦したことで、計画未達となりました。今回の中期計画では、高級Hi-Fi機器の再強化を図るとともに、薄型テレビ対応のフロントスピーカーの伸長、携帯電話やPCユーザー向けの小型スピーカーや照明メーカーとの協業となる新規商品のPLCなどを強化し、目標達成を目指します。
この事業に付いては、1年ごとに評価をしながら、必要な見直しもしていきたいと思っています。


Q13 : 「The Sound Company」という組織を実際に作ったのですか?あるいは作る予定ですか?

A13 : そのような名称の組織は作っていません。組織としては楽器・音楽ソフト事業統括と、サウンド・IT事業統括という大きなくくりにしています。また、AV機器事業の販売部門を、楽器事業の販売部門と一体化しました。


Q14 : 今回の中期経営計画の中で、一番の柱の考え方は何だとお考えですか?

A14 : 「The Sound Company」領域で、音に集中することです。前期までに懸案事項を大部分整理しました。今後は、音に集中し、ここに一本筋を通したいと思っています。


Q15 : 楽器事業の増収計画について、ピアノ、ギター以外での増収計画を教えてください。また、その先の3年間の楽器事業はどのように進めていきますか?

A15 : 3年間で380億円の増収を目指しています。ピアノで100億円、ギターで20億円伸ばすほか、PA商品で120億円、管楽器、ポータブルキーボードの増収も見込んでいます。今回の中期計画の3年間で楽器事業の生産体制整備も進め、その先の3年間では、安定的な利益成長を目指していきたいと思っています。


Q16 : ギター事業での20億円の増収では、大勢には影響は無く、非連続な施策が必要と思われます。市場でのヤマハのポジショニングを上げるために、M&Aを含めて、収益を上げられるような売上規模について、お聞かせください。

A16 : 確かに、100億円から120億円にしても大きな数字ではないと思います。その先で100億円を増やすようにしたいと思っています。そのための基盤・基礎づくりをこの3年間で進めていきます。また、機会があれば買収も視野に入れていきます。ともあれ、次のステップ、将来ビジョンを見据えたギタービジネスの再構築を進めていきます。次が見えない限り、この事業の存在価値は無いと思っています。


Q17 : 多角化事業の営業利益率が「The Sound Company」の営業利益率を下回っていますが、多角化事業について、事業存続のためのどのような事業評価基準を持っていますか?

A17 : 2年連続赤字が続いた場合は、事業存続評価のテーブルに載せます。直ぐに撤退ということにはなりませんが、収益を上げるためにどうしたらよいかを議論していきます。


Q18 : 共通のブランドを持つヤマハ発動機との資本関係は、今後どうするつもりですか?また、相互のブランド戦略についても教えてください。

A18 : 非常に重要なテーマと考えており、話し合いを続けています。何か報告するようなことが決定すれば直ちに発表いたします。トップレベルで、ヤマハという共通のブランドを、お互いに大切に使っていくための話し合いの場を持っており、ブランドの希薄化するようなことはしません。