人権

人権尊重に関する方針について

ヤマハグループの人権尊重に関する方針および行動基準は「ヤマハグループ人権方針」「コンプライアンス行動規準」に定められており、全てのグループ会社に対し、人権を尊重した誠実な事業活動を行うことを求めています。また、取引先に順守を求める「ヤマハサプライヤーCSR行動基準」に、人権の尊重、適正な労働慣行を確保することを定めています。なお、ヤマハグループ人権方針は、専門家からの助言や、全グループ企業からの意見徴収、ヤマハ(株)の経営会議での審議を経て、代表執行役社長が承認しています。

加えて、ヤマハ(株)は人権尊重を原則とする国連グローバル・コンパクトにも署名しています。

体制と取り組み

ヤマハグループは、自らの企業活動による人権への影響に責任を持って対応するために、全社委員会であるサステナビリティ委員会に「人権・DE&I部会」を設置し、自らの事業活動による人権への負の影響の防止と軽減を推進しています。取締役会は、人権を含むサステナビリティについての報告を定期的に受け、取り組み状況を監督しています。

人権デューディリジェンス

バリューチェーン全体を視野に、人権に関する国際的な規範やグローバル・コンパクトのセルフアセスメント項目に照らした点検、ステークホルダーや有識者との対話を通じて人権リスクの抽出・特定を行っています。2019年からはCRT日本委員会のステークホルダー・エンゲージメントプログラムに参加し、業界ごとに重要な人権課題の特定作業を行っています。これらを通じて、原材料調達に関わる人権(違法伐採問題など)、サプライチェーンも含めた労働者の人権、お客さまの人権(製品・サービスの安全性確保、個人情報保護)、事業拠点の地域住民の人権などのテーマが抽出されています。

また、グループ内のルール整備状況を点検し、規程・ガイドラインなどに人権視点で必要な要素を組み入れ、ルールの順守状況をモニターすることにより包括的な人権アセスメントを進めています。

2022年2月より、専門家の協力を得て、ヤマハグループの人権デューディリジェンスプロセスの改善に着手しています。具体的には、人権に関する国際規範やガイドライン※などを基に人権課題のロングリストを作成し、ヤマハグループの主要事業である楽器・音響・教室事業の特性や国・地域のリスクなどに照らして、リストのうちの17項目を重要な人権課題として抽出しました。これらの課題に対して、人権侵害の発生可能性、発生時の影響深刻度、および管理体制・予防是正措置の脆弱性を国内外グループ各社へのアンケートにより評価し、優先的に対応が必要な人権課題の特定に向けて分析を進めています。

  • 参考にした国際規範・ガイドラインなど:国連ビジネスと人権に関する指導原則、国際人権章典(世界人権宣言と国際人権規約)、ILO中核的労働基準、OECD多国籍企業行動指針、国連グローバル・コンパクト10原則、GRIスタンダード、FLA行動規範、CHRB Key Industry Risk、経済人コー円卓会議(CRT)ステークホルダーエンゲージメントプログラム報告書、SASB Materiality Map、UNEP FI Human Rights Guidance Tool

ヤマハグループにおける重要な人権課題(17項目)

  人権課題 ステークホルダー
お客さま ともに働く人々 お取引先 地域・社会
1 差別の禁止と法の下の平等  
2 (法的)救済へのアクセス
3 調達慣行(取引先管理)の徹底    
4 ハラスメントと虐待    
5 女性の権利    
6 児童労働(教育を受ける権利の尊重)      
7 強制労働      
8 労働安全衛生    
9 労働時間(休憩・休日の権利)    
10 適切な労働環境(水へのアクセスを含む)    
11 賃金(十分な生活水準を享受する権利)    
12 結社の自由・団体交渉権    
13 研修と教育の不平等    
14 (知的)財産権  
15 先住民族・地域住民の権利      
16 消費者利益(消費者の安全・知る権利)      
17 消費者の個人情報管理      

相談・通報窓口の設置

ヤマハグループは、従業員(契約社員、アルバイト、派遣社員を含む)が利用できるコンプライアンス相談・通報窓口を社内および社外に設置し、ハラスメントなど人権問題を含む相談・通報に対応しています。窓口には多言語対応のウェブ受付フォームも整備するとともに、日本国内には人事部門内に性的マイノリティに関する専用窓口を設けています。これらの連絡先は社内刊行物や通達、イントラサイトなどで繰り返し周知しています。

相談・通報窓口の運用にあたっては、通報者が不利益な取り扱いを受けることがないよう、通報者保護を定めた社内規程を整備しています。窓口への相談・通報に対しては、相談・通報者に加え、その行為者(加害者)のプライバシーも確保の上、公平かつ速やかに事実調査を実施し、問題が認められた場合は指導などの是正を行います。相談・通報者や被害者が強く秘匿を希望し事実調査が困難な場合でも、可能な限り職場環境の改善を図るなど、是正や再発防止の措置を講じています。

さらに、海外のグループ企業に対し、各々の社外窓口設置と従業員への周知徹底を指示し、同時に通報対応のマニュアル作成や窓口対応教育を実施することで、海外グループ企業における窓口機能の強化を図っています。

従業員以外のステークホルダーについては、ウェブサイトに設けた各種お問合せ窓口を通じて広くご意見・通報を承るとともに、2022年10月に一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に加盟し、同機構が運営する対話救済プラットフォームによる苦情受付を開始しました。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した同プラットフォームの活用により、バリューチェーン全般にわたる幅広い人権問題に適切に対応していきます。

従業員の人権の尊重

公正・公平な採用・雇用

採用・雇用にあたっては、ヤマハグループDE&I方針に基づき、いかなる差別も行わず、公正な選考による多様な人々への就労機会の提供に努めています。従業員の評価・処遇については、各人の職務遂行能力や仕事の責任・成果などに基づき、公正なルールに沿って決定します。

なお、公正・公平な評価ができるよう、評価に携わる管理職層を対象とした評価者研修も実施しています。

労働者の権利の尊重

ヤマハグループは、国際条約や法令に基づき、従業員の結社の自由、組合への加入または非加入、団体交渉、平和的集会などへの参加の権利を尊重しています。従業員が差別、報復、脅迫、またはハラスメントを恐れることなく経営陣と率直な意思疎通を図れる労使対話を確保し、労働協約その他の取り決めを守っています。

適正な給与および労働時間

従業員に対する給与額の設定にあたっては、各地域の最低賃金および生活賃金水準を維持することをグループ規程で定めています。また、労働時間や休日は法令で定められた基準を順守するとともに、長時間労働・過重労働の防止に向けて総労働時間の短縮に取り組んでいます。

ハラスメントの防止

ヤマハグループでは、「コンプライアンス行動規準」で、人権侵害行為であるハラスメントを禁止しています。ヤマハ(株)および国内グループ企業では、ハラスメントが懲戒および公示の対象になることを就業規則に明記し、人権侵害行為に対する厳格な対応を示しています。

ハラスメントのない職場環境づくりを進めるために、コンプライアンス相談・通報窓口を設置・運用し、研修やセミナーなどにより啓発活動を行っています。パワーハラスメントをはじめ、あらゆるハラスメント行為を防ぐため、ハラスメントに関する知識や部下の指導法の習得、上司・部下間のコミュニケーション改善などを図る管理職を対象とした研修を展開しています。

また、行動規準のより一層の浸透を図るための研修ツール(ヤマハコンプライアンスエッセンシャル)の制作や月次の情報発信(コンプライアンス便り)の強化など、従業員向けの啓発コンテンツの拡充を進めています。2022年3月期には、3年に一度実施している国内従業員向けのコンプライアンス・アンケートを実施しました。ハラスメント発生のリスクを診断し、組織別に分析することで、課題解決、風土改善の取り組みに反映させています。

人権および労働に関わるコンプライアンス違反などの状況

2023年3月期のヤマハグループにおけるコンプライアンス相談・通報案件のうち、人権侵害および労働に関する法規制などの違反およびそれらに該当する重大なコンプライアンス違反はありませんでした。

サプライチェーンにおける人権配慮

サプライチェーンにおいて人権尊重を徹底していくために以下の取り組みを行っています。詳しくはリンク先をご覧ください。

  • サプライヤーの選定要件に人権などのCSR取り組みを設定
  • サプライヤーに対し、人権や労働慣行などについて定めた「ヤマハサプライヤーCSR行動基準」の順守を要請(契約書などに明記)。人権デューディリジェンスの一環として、同行動基準に基づくアセスメントを実施。必要に応じ是正を要請。

強制労働・児童労働の禁止

ヤマハグループでは、「コンプライアンス行動規準」で、あらゆる形態の強制労働および就業の最低年齢に満たない児童を就労させることを禁止し、強制労働と児童労働を防止するために、社内規程に基づき定めた「グループ労働・人権規定」に以下の項目を定めています。

  • 外国籍労働者の労働許可証の確認
  • 強制労働を招くような手数料を労働者が負担させられていないかの確認
  • 従業員に対するパスポートなどの身分証明書の引き渡し要求や使用制限の禁止
  • 休憩中や就業後の自由な移動やトイレなどの基本的なアクセスの不適切な制限の禁止
  • 適切な事前通達による自由退職の承認
  • 年齢を確認できる有効な身分証明書の写しなどの台帳管理
  • 18歳未満の若年労働者への健康と安全を危険にさらすような労働に従事させないなどの配慮

また、「ヤマハサプライヤーCSR行動基準」にも強制労働と児童労働の禁止を定め、取引先に順守を要請しています。併せて、取引先に対してアンケート形式の自己点検を依頼し、回答をもとに必要に応じて改善対応を求めています。

人権教育

ヤマハグループは、一人一人が「人権」を自分ごととして捉え、企業の人権尊重責任を実践するための人権教育を進めています。国内グループ企業では、業務上起こり得る人権侵害と防止策について一人一人が学び、考える機会とすべく、「ヤマハ人権ガイドブック」(日・英2カ国語)を用いて、ガイドブックの内容を元にした共通のe-ラーニングを実施しているほか(2023年3月期:3,935名実施)、その他各グループ企業独自の教育施策などを含めると、国内外のグループ企業47社中44社で人権に関する従業員向けの啓発活動を実施しています。

[図] ヤマハ人権ガイドブック(抜粋)

ヤマハ人権ガイドブック(抜粋)

また、「労働と人権に関する規定」で、実施すべき人権教育の内容について定め、国内外のグループ企業がそれぞれ主体性をもって人権教育に取り組むことを推進、モニタリングしています。

このほか、人権尊重への意識を高めるために以下の教育・啓発を実施しています。

  • イントラサイトを使った企業を取り巻く人権課題に関する情報発信やe-ラーニング
  • イントラサイトを使ったクイズ形式のハラスメント防止啓発情報発信
  • 業務に関連した人権テーマの研修・勉強会(購買担当者向けのCSR調達セミナー、広告担当者向けの人権侵害予防に関する勉強会)
  • 広告表現における多様性への配慮について理解を深めるガイドブックの発行(日・英)
  • 役員を含む全社規模セミナー