音・音楽の技術を生かして、
「交通事故被害の低減」に貢献
-緊急通報システム向け車載通話モジュール-

次世代自動車の標準仕様として、「緊急通報システム」の導入が国際的に進んでいます。事故が起きた時に位置情報を自動通報する装置を車両に搭載し、迅速な救助・救急活動を行いやすくする仕組みで、国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の目標3、ターゲット3.6「2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。」の実現に寄与することが期待されています。
ヤマハも、音・音楽の事業で培ってきた音声処理技術を生かして、高い通話品質の緊急通報システム用の車載通話モジュールを開発。社会からのニーズの高まりによって市場拡大が見込まれるこの分野に参入し、交通事故被害の低減に貢献することを目指しています。


自動車への緊急通報システム搭載が進む、国際的な潮流

緊急通報システムは、エアバッグの作動などから事故を検知し、ドライバーが自力で連絡をとれない状況も想定して、車両が位置情報をコールセンターに自動通報するものです。コールセンターはドライバーとの通話を試みつつ、消防などの機関に通報します。救助・救急機関が事故情報を迅速に把握し、より早く治療を開始できるようになることで、救命率の向上や傷害の重傷化防止につながると期待されています。

この取り組みは、ロシアやEU(欧州連合)が先行しています。ロシアではすでに2017年1月、新型車に緊急通報システム「ERA-GLONASS(エラ・グロナス)」を搭載することが義務化されており、EUでも2018年4月、新型車への緊急通報システム「eCall(イーコール)」搭載が義務付けられました。eCallの導入にあたり、欧州委員会は「交通事故現場に到達する時間が40~50%短縮される」「交通事故の死者数が、年間2,500人の規模で減少する」といった効果を試算しています※1

また2017年11月に、国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム※2で「事故自動緊急通報装置」の国際基準が策定されました。それを受け、2018年7月に国土交通省は同基準を日本国内にも導入し、性能基準を定めています。新型車は2020年1月から、既存の車種は2021年7月から適用される予定です。

  • ※1 European Commission, 11/10/2005, Saving travellers’ lives:Commission urges Member States to improve their responses to 112 emergency calls
  • ※2 自動車基準調和世界フォーラム(WP29):国連欧州経済委員会(UN/ECE)の下にあり、傘下に6つの専門分科会を有しています。安全で環境性能の高い自動車を容易に普及させる観点から、自動車の安全・環境基準を国際的に調和することや、政府による自動車の認証の国際的な相互承認を推進することを目的としています。(国土交通省資料「WP29概要」)
[ 図 ]eCall(緊急通報システム)義務化動向<ヤマハ調べ>
eCall(緊急通報システム)義務化動向<ヤマハ調べ>
[ 図 ]緊急通報システムの概念図
緊急通報システムの概念図

ヤマハの「音の技術」が結晶した、車載通話モジュール

[ 写真 ]マイクモジュール

ヤマハが開発した緊急通報システム向けの車載通話モジュールは、日本の自動車メーカーがロシアや欧州向けに販売する車種に搭載され、実際に利用されています。

ヤマハの車載通話モジュールは、マイクとスピーカー、電子回路で構成されています。ウェブ会議などの遠隔会議向けに提供してきたシステムをコンパクトにして、自動車搭載に耐えられる堅牢性を持たせたものです。

その大きな特長は、緊急時の自動通報やハンズフリー通話といった基本機能に加え、車内の声を拾うマイクとコールセンターからの声を伝えるスピーカーが一体になっており、かつクリアな音質が実現されていることです。また、小型車から大型車まで同じシステムを使うことができて、車内の広さや反射といった環境ごとの個別チューニングが不要というのも画期的な点です。音・音楽を主事業とするヤマハならではの、音声処理・デジタル信号処理・チューニング・音響設計などの各種技術が生かされています。

緊急通報システム向け車載通話モジュールは、機器の性格上、実際に使われる機会はごく稀です。しかし、いざ重大事故が起きた時、クリアな声のやりとりを迅速にサポートできるかどうかが、人命にかかわる可能性もあります。車載通話モジュールには、「音・音楽の技術で、交通事故の迅速な救助や治療活動に貢献できるように」というヤマハの想いが込められています。

[ 写真 ]通話品質認証システム

次世代自動車の音環境を統合制御する、ヤマハ独自の価値創造へ

ヤマハが楽器事業や音響機器事業に次ぐ「第3の柱」として確立を目指す、部品・装置事業。車載部品は、その中核を担う成長分野の1つです。5Gの通信技術の普及、またAI(人工知能)やクラウドネットワークの進化と相まって、インターネットに接続する「コネクテッドカー(つながる車)」が、自動車業界の中心テクノロジーとなる日が目前に迫っており、車載関連機器の需要は、今後さらに高まることが想定されます。

ヤマハも、音・音楽に関する技術を生かして、音声認識率の向上や、車室内会話アシストなど機能の拡充とともに、「自動車に乗っている時間」に新しい価値を付加する「車内のトータルソリューション」の領域へと、その提案を進化させていきます。

[ 図 ]将来の目指す姿(事業のビジョン/部品・装置事業):コア技術を生かした成長を実現し、楽器・音楽に次ぐ第3の柱となる

― 車載部品 ―

車内のトータルソリューション領域へシフト

  • 車室内の音響・音声・騒音の統合制御
[ 写真 ]内装パネル
内装パネル
[ 写真 ]マイクモジュール
マイクモジュール
[ 写真 ]オーディオシステム
オーディオシステム
[ 図 ]車内のトータルソリューション領域へシフト

― 商材・サポート基盤を拡充し、第3の柱確立に向け成長加速 ―

商材を拡大し、成長加速

  • 車載通話モジュールの商材拡充(音声認識率向上、車室内会話アシスト、等)
  • 音声会話、音楽再生の統合制御を強みに、オーディオシステム市場参入
[ グラフ ]車載オーディオ市場規模

協業を通じ、ソリューション拡充

  • 世界初の排熱発電実用化加速
  • 内装パネルの採用車種拡大
[ 画像 ]協業を通じ、ソリューション拡充

サポート基盤拡充による顧客価値向上

  • 車載顧客のサポート拠点を中国に設置
  • 車載マイクの品質規格認証拠点をロシア、日本に設置予定
[ 写真 ]中国サポート拠点
中国サポート拠点
[ 写真 ]通話品質認証システム
通話品質認証システム

いざという時にお客さまに「これがあってよかった」と言っていただけることが、この製品の最終的な価値だと思っています。

ヤマハがこの市場に参入するにあたって、音の品質を高く評価していただけたのがポイントでした。今後、自動運転など自動車を取り巻く環境が大きく変わってくる中で、音楽をはじめとするサウンド、乗っている人たちの会話、あるいは外部からのノイズ除去などを制御する技術が注目されるようになった時、ヤマハの持つ高品質な音のノウハウの応用可能性が、改めてクローズアップされると思います。今回、ヤマハの音技術を生かして新たな社会的価値を生み出す事業に携われたことを誇りに思うと同時に、今後もヤマハの良い音で、未来のクルマはこんなに安全で、素晴らしくなるということを提案していきたいと考えています。

[ 写真 ]IMC事業本部電子デバイス事業部技術部 IMC開発グループリーダー 村木 保之 様

IMC事業本部電子デバイス事業部技術部
IMC開発グループリーダー

村木 保之 様