• [ 画像 ] 器楽教育の導入でベトナムの学校授業の充実に貢献

Feature 次代への価値創造 03
人に寄り添う技術で新たな芸術表現を創出

[ 図 ] 価値創造のポイント ユニバーサルデザイン・音楽文化の継承と発展

ヤマハは長い歴史の中で、世界中の人々が良い音・音楽を楽しめるよう日々研究を重ね、独自の技術を開発してきました。ヤマハならではの新しい価値、誰もが音楽を楽しめる機会を提案することで、多くの人に音楽を奏でる喜びを提供しています。
その一環として、ユニバーサルデザインの観点から、より多くの人が音楽を体験できるコンテンツとインフラの開発を推進。
2015年からは「東京藝術大学COI拠点」に参画し、潜在的な社会的課題の解決に向けた技術協力を続けています。

Overview
産学連携で芸術の新たな可能性を追求

2013年度から文部科学省と科学技術振興機構が開始した「革新的イノベーション創出プログラム(COISTREAM)※」。これは、将来あるべき社会の姿、暮らしのあり方などのビジョンをもとに、10年後の社会を見通した革新的な研究開発課題を特定した上で、既存の分野や組織の壁を取り払うことで、基礎研究段階から実用化を目指す研究開発の枠組みです。企業や大学単独の組織では実現できないイノベーションを創出していくために、産学連携のプラットフォームを整備することを目的としています。
このプログラムを推進する拠点の一つが、ヤマハが参画している「東京藝術大学COI拠点」です。同拠点は、物質的な豊かさのみならず、心の豊かさが溢れる社会の構築を目指し、“「感動」を創造する芸術と科学技術による共感覚イノベーション”をテーマとした「文化を育む研究」と、全ての人が共生する社会の実現を目指す「心を育む研究」により、次世代のインフラとなる豊かな文化的コンテンツの開発を進めています。
同拠点では、障がいの有無を超えて美術や音楽を楽しめる空間を提供し、現代社会に適合した芸術の可能性を探求するためのイベント「藝大アーツ・スペシャル 障がいとアーツ」を毎年開催。ヤマハは2015年から同イベントに協力し、保有技術を生かして、手足や聴覚に障がいのある方々のより豊かな演奏表現をサポートしています。
また、同イベントを契機にAIを活用した新たなイノベーションの創造にも取り組んでいます。

  • ※ COI STREAM:Center of Innovation Science and Technology based Radical Innovation and Entrepreneurship Program

Point1 ユニバーサルデザイン
障がいのある方の音楽表現をサポート

[ 画像 ] 演奏サポートのイメージ図
演奏サポートのイメージ図

演奏に合わせて手や足の操作を自動サポート

2015年12月に開催された「藝大アーツ・スペシャル2015 障がいとアーツ」。同イベント内のコンサートで、手や足に障がいのある特別支援学校の生徒たちのピアノ演奏を、ヤマハが中心となって開発した演奏サポートシステムが支え、注目を集めました。
この演奏サポートシステムは、ヤマハの自動演奏ピアノ『Disklavier™』(ディスクラビア)※1と演奏追従技術※2を組み合わせたものです。ディスクラビアを弾く右手の演奏に合わせて左手パートの演奏音を自動的に付与するなどして、演奏をサポートします。このシステムにより、手や足に障がいのある演奏者も一人で、より自在にピアノを演奏することができます。機械が人をサポートすることで音楽表現の可能性を広げ、「大好きな曲を自力で演奏したい」という高校生の夢の実現に貢献しました。

  • ※1 演奏情報を忠実に録音して再生できる、ヤマハの自動演奏機能付きアコースティックピアノ
  • ※2 演奏内容をリアルタイムに解析し、楽譜上における演奏箇所を特定できる技術。演奏に合わせて自動的に伴奏を鳴らしたり、譜面をめくったり、映像を同期させたりすることが可能
[ 画像 ] 演奏サポートシステムでショパンのノクターンを披露
演奏サポートシステムでショパンのノクターンを披露
[ 画像 ] 多くの人に注目されたコンサート
多くの人に注目されたコンサート

ドラム演奏の音量を視覚化

2016年の「藝大アーツ・スペシャル2016 障がいとアーツ」コンサートでは、聴覚障がいのある小学生たちがドラムの演奏に挑戦。ドラムの音量を十分に知覚することが難しい彼らのために、ヤマハと東京藝術大学COI拠点、筑波大学附属聴覚特別支援学校が演奏サポートシステムを開発しました。
このシステムでは、ドラムの音量を検出し、音の強弱を演奏曲の楽譜とともにリアルタイムにiPad上に表示することで、子どもたちがiPadの画面で音量を見ながら演奏することができます。藝大フィルハーモニア管弦楽団との共演では、ピアニッシモからフォルテッシモまでしっかりと叩き分け、見事な演奏を繰り広げました。

[ 画像 ] 音量を視覚化した演奏サポートシステム
音量を視覚化した演奏サポートシステム
[ 画像 ] オーケストラと共演した筑波大学附属聴覚特別支援学校の子どもたち/コンサートスネアドラムと演奏サポートシステム(撮影:平舘平、東京藝術大学)
オーケストラと共演した筑波大学附属聴覚特別支援学校の子どもたち/コンサートスネアドラムと演奏サポートシステム(撮影:平舘平、東京藝術大学)

子どもたちの能力を引き出してくれました

試演を重ねてくださったおかげで、本番ではオーケストラと子どもたちが一糸乱れぬアンサンブルを繰り広げることができました。子どもたちの学習能力も驚異的ですが、それを引き出したのは、自分の出した音を視覚で認識できる演奏サポートシステムだと思います。

[ 顔写真 ] 新井 鷗子 様

東京藝術大学COI拠点 障がいと表現研究グループ
特任教授

新井 鷗子 様

「共通の言葉」を持てました

音がぴたっと重なった瞬間や、緊張感のあるピアニッシモ、言葉にならない感動でした。演奏サポートシステムのおかげで、子どもたちが豊かな表現をし、合奏するメンバー全員が「共通の言葉」を持てたと思います。私たちの目指したものが実現できました。

[ 顔写真 ] 高橋 幸代 様

東京藝術大学COI拠点 障がいと表現研究グループ
特別研究員

高橋 幸代 様

自主的な学習へとつながりました

開発していただいたシステムのおかげで、子どもたちは自分の叩いているドラムの音の強さを視覚的に認知でき、自主的な学習へとつながりました。また、まわりの友だちの音量と見比べることで、客観的に音の大きさを捉えることができるようになりました。

[ 顔写真 ] 山本 カヨ子 様

筑波大学附属聴覚特別支援学校 教諭
山本 カヨ子 様

Point2 音楽文化の継承と発展
AIを活用した新たな音楽表現に挑戦

「藝大アーツ・スペシャル」での協働をきっかけに、ヤマハは東京藝術大学COI拠点においてさまざまな技術協力に挑戦しています。その一例が、時空を超えた音楽表現の実現です。人間の演奏を理解し、その演奏に合わせて自動演奏できる「人工知能演奏システム」を開発しました。このシステムと『Disklavier™』を組み合わせて20世紀のピアノの巨匠・故スヴャトスラフ・リヒテルの演奏を再現、ベルリンフィル・シャルーンアンサンブルとの共演を実現させました。
今後、さらなる研究開発や他機関との技術協力を通じて、ヤマハが持つ技術や製品の新たな可能性を探求するとともに、未来につながる音楽文化の創造や継承に貢献していきます。

[ 図 ] ヤマハが開発した人工知能演奏システム
ヤマハが開発した人工知能演奏システム
[ 画像 ] ベルリンフィル・シャルーンアンサンブルとの共演
ベルリンフィル・シャルーンアンサンブルとの共演