[ 写真 ] 人に寄り添う技術で新たな芸術表現を創出

次代への価値創造 02
ICTを活用した「アクティブ・ラーニング」の提案

政府が掲げるICT教育推進を受けて、学校教育でのICT導入が進んでいます。
教育現場が大きく変化し、今後ますますデジタル教材など教育向けソフトのニーズが高まることが予想されます。
こうした中、ヤマハはICTを活用した音楽教育ソリューション「Smart Education System(SES)」を開発。
音・音楽を中心とした新しい学びの仕組みを教育現場に提案しています。

[ 図 ] 価値創造のポイント 子供の成長支援・教育現場のサポート

Overview

豊かな学びを実現する「Smart Education System」

先進技術によるICTは、教える人・学ぶ人をともにワクワクさせ、教育や学びをより豊かにする要素があることから、子どもたちの創造性や論理性を育み、課題の発見・解決に向けた主体的な学びを促す効果が期待されています。日本政府は2016年6月に閣議決定した「日本再興戦略2016」で、学校教育の全教科におけるICT活用を明示。2020年までに、子ども1人1台の端末を整備することや、ICTを活用した指導を要請しています。

教育現場に有効なソリューション「Smart Education System」

ヤマハは2014年から、教育現場に有効な独自のICT音楽教育ソリューションの構築を進めてきました。これまで蓄積したノウハウや技術をもとに、全国の小中学校20校で実証授業を実施。学校関係者と対話を重ねながら、指導における課題を解決する「Smart Education System(以下SES)」を練り上げてきました。
そして2017年2月、新事業としてSESの提供を開始し、その第一弾製品として、デジタル音楽教材『ボーカロイド教育版』『ギター授業』『箏授業』を発売しました。

音楽学習の魅力を高めるデジタル教材

『ボーカロイド教育版』は、ヤマハの歌声合成技術『VOCALOID™』(ボーカロイド)を学校音楽授業用に最適化した教材です。子どもたちが思い浮かんだ歌詞やメロディーをパソコンやタブレット端末に入力して、曲の創作を楽しみながら体系的に学ぶことができます。また、作曲は創造性と同時に論理的思考を養えることから、2020年に小学校で必修化される予定の「プログラミング教育」にも有効と考え、実証授業を重ねています。
『ギター授業』『箏授業』は、動画をベースにした器楽学習の教材です。専門家による充実した解説・模範演奏動画を多数収録しており、再生テンポやアングルを変えることで、演奏ポイントを視覚的にしっかりと確認しながら 学習できます。

[ 写真 ] ICTを活用した授業の様子
ICTを活用した授業の様子
[ 画像 ] 『ボーカロイド教育版』(左)『ギター授業』(中)『箏授業』(右)
『ボーカロイド教育版』(左)『ギター授業』(中)『箏授業』(右)

Point1 子どもの成長支援

アクティブ・ラーニングで創造力を育成

[ 写真 ] 『ボーカロイド教育版』の曲づくり画面
『ボーカロイド教育版』の曲づくり画面

『ボーカロイド教育版』の特長の一つが、画面上で音を視覚化したことです。感覚的な操作でさまざまなメロディーを試しながら曲をつくり、その中で音階や楽譜について学べます。こうした創作学習は、子どもたちの好 奇心や自主性をかきたて、能動的に学ぶアクティブ・ラーニングにつながります。また、子ども同士が意見交換して学び合う協働学習にも最適です。
実証授業を重ねる中で、音楽が苦手な子でも自由に音を並べてみることで分かりやすく学べること、分かりやすさこそが子どものやる気を引き出すということが見えてきました。ヤマハは今後、さらに楽器やネットワーク機器なども含めた包括的なソリューションを提供し、音楽の持つ力とアクティブ・ラーニングによる学びで、新しい音楽教育をサポートしていきます。

[ 写真 ] 創作授業の様子(井伊谷小学校5年生)
創作授業の様子(井伊谷小学校5年生)

<トライアル事例>
「ボーカロイド教育版」を使った学年歌の創作
- 浜松市立井伊谷小学校 -

2016年12月、浜松市立井伊谷小学校で学年歌の創作プロジェクトがスタートしました。きっかけをつくったのは5年生の子どもたち。市内の他校が『ボーカロイド』を使って学級歌をつくったという新聞記事を見て、「自分たちもやりたい」と先生に働きかけたのです。子どもたちの熱意に打たれ、学校がトライアル授業の実施を決めました。
子どもたちは5カ月間にわたり、『ボーカロイド教育版』で作曲の基礎学習、そしてオリジナルの歌づくりに挑戦。皆で完成させた学年歌を、3月の修了式に1年間のお礼を込めて2人の担任の先生へプレゼントしました。

Comments

デジタル教材を効果的に取り入れていきます

私たちは、普段から子どもたちの自主性を大切にしています。今回、子どもたち自らが学年歌をつくりたいと言ってきたことは、良い成長機会だと考え、挑戦しました。
デジタル教材には、チョークと黒板では教えられない技術があります。一方で、じっくり自分の言葉で教えたい部分もあります。それぞれの良さをうまく融合させて、今後も子どもたちが楽しく学べる授業を展開していきたいと思います。

[ 写真 ] 浜松市立井伊谷小学校(当時)教諭:髙林 圭吾 様
浜松市立井伊谷小学校(当時) 教諭
髙林 圭吾 様

教科書では得られないことを学べます

創作活動の中には、友だちとのコミュニケーションなど社会で大切なものがたくさん詰まっていて、子どもたちが力をつけるのに最適だと思いました。音楽学習の面でも、曲づくりを通じて和音や曲の構成などを自然と体得しており、教科書では得られない成果があったと感じています。
また、『ボーカロイド教育版』を使っての歌づくりは、音楽が苦手な子でも参加できます。全員でつくりあげた歌だからこそ「自分たちの歌」という意識が強まったのだと思います。この歌をこれからも大切に歌い続けていってほしいと願っています。

[ 写真 ] 浜松市立井伊谷小学校(当時) 教諭:生熊 祥子 様
浜松市立井伊谷小学校(当時) 教諭
生熊 祥子 様

Point2 教育現場のサポート

授業の充実と指導者の負荷軽減を両立

文部科学省の定める学習指導要領では、日本の伝統的な音楽文化の良さに触れることを目的に、「中学校3年間を通じて1種類以上の和楽器の表現活動の実施」が定められています。『箏授業』は、和楽器の中でも学校授業で最も多く使われている「箏」に着目したデジタル教材です。
器楽教材の開発に際して、ヤマハは学習効果と同時に指導者の負担軽減を追求しました。付属の指導者向け「授業モデルパック」に、学習指導要領を踏まえた授業の進め方、教える際の留意事項などを詳しく記載。演奏に必要な基礎知識も動画で学べるようにしていることから、初めて箏を教える指導者も無理なく授業を進められます。
このようにICTを活用し、授業を充実させつつ実施要領を効率化することで、指導者が授業の準備に割く時間を子どもたちの個別指導やケアに充てることができます。ヤマハでは、こうした教材開発などを通じて、多面的に学校教育の充実をサポートしていきます。

[ 画像 ] 『箏授業』の練習画面
『箏授業』の練習画面

Comment

生徒・指導者ともに知識と技術を高められます

日本の伝統的な音楽文化や美的感覚を生徒たちに伝えるにあたって、「お箏」を選びました。ヤマハの『箏授業』は動画や図で丁寧に解説してくれるので、生徒が視覚的・聴覚的に理解できるため、技能を効率的に高められます。また、箏を弾けなくても授業ができるのも大きな利点です。模範演奏を聴き、練習し、課題を見つけて解決し、技能を向上させていくというやり方はとても効果的ですし、指導者の技術を高めるのにも役立ちます。

[ 写真 ] 静岡大学教育学部附属浜松中学校 教諭:山下 美帆 様
静岡大学教育学部附属浜松中学校 教諭
山下 美帆 様