汚染防止と化学物質管理
環境汚染防止の仕組み
ヤマハグループでは、事業活動における環境汚染を未然に防ぐため、2014年に環境設備の設置や管理・運用についてのグループ基準「ヤマハグループ環境設備基準」を整備しました。生産拠点ごとに定めたロードマップに沿って計画的に適合を進め、2024年3月期中に国内外の全生産拠点での基準適合を完了する予定です。これにより「環境汚染事故ゼロ」の継続を目指します。
2023年3月末現在、19拠点中18拠点で適合を完了しました。
モニタリングと法規制対応
事業活動に伴う環境負荷の低減と法令順守を目的として、ヤマハグループでは、ヤマハ(株)環境部門と各事業所の管理部門が策定した年度計画に沿って、環境測定担当部門が各事業所の排ガス、排水、騒音、臭気などを定期的にモニタリングし、これらの管理状況の確認と順守評価を実施しています。モニタリングにあたっては、法令基準値よりも厳しい自主管理基準値を設定しており、基準値の超過や異常が発見された場合は、速やかに応急処置を講ずるとともに是正措置を展開しています。
また、法令などの改正にも迅速に対応できるよう、体制を整備しています。法規制の制改定の最新情報をグループで収集し、ヤマハ(株)環境部門が情報を集約・チェックし、グループとしての対応を各事業所に周知する一方で、各事業所に管理部門・生産部門をメンバーとする「リスク低減ワーキンググループ」を設置し、施策を講じています。国内外の現地法人との連携による順法体制を整備し、特に、環境法の改正が近年頻繁である中国では、現地法人との連携を強化しています。
環境監査
ヤマハグループでは、環境事故や法令違反の未然防止を目的に、ISO 14001統合マネジメントシステムに基づく内部環境監査に加え、「ヤマハグループ環境設備基準」に則したヤマハ(株)環境部門による専門的知見からの環境監査を実施しています。監査スタッフはISO 14001に基づく内部環境監査員としての資格に加え、公害防止管理者、作業環境測定士など環境保全に関わる公的資格を取得しています。
各事業所の設備基準適合状況および環境リスクをグループ共通のチェックシートで点数化し、対応すべき事項と優先順位を明確化することで、効率的に改善を進め、さらなるリスク低減を図っています。
なお、監査の頻度はリスク度合いによって設定し、定期的に実施しています。2023年3月期は、2事業所の環境監査を実施しました。緊急事態への備え
災害や事故などの緊急事態への備えとして、事業所からの有害物質や油分の漏えいによる環境汚染を未然に防ぐための仕組み整備、訓練に取り組んでいます。グループ統一の評価基準によるリスク抽出を行い、その結果浮かび上がった各事業所の緊急事態について、改善や手順を整備しています。また、万一事故が起こってしまった場合の応急措置の手順や設備・備品を整えるとともに「緊急事態対応訓練」を実施しています。
汚染、有害物質への対応
ヤマハグループでは、事業所からの排出水によって水域および関連生息地に悪い影響を与えないよう、常に排出水の監視を行うとともに、排出先の水域の水質や生物への影響についての調査も定期的に実施しています。過去、塩素系有機溶剤による土壌および地下水汚染が発生した2つの事業所について浄化対策を実施してきました。地下水についてはすでにヤマハ(株)豊岡工場で浄化を完了、ヤマハ(株)本社事業所についても基準値近くまで回復し、現在も継続的に浄化を実施しています。 土壌汚染については、両事業所とも浄化を完了しています。
(株)ヤマハミュージックマニュファクチュアリング本社工場では、処理能力および耐震性向上を目的に2018年に廃水処理設備を更新しました。この設備は従来の2倍の廃水を処理することができ、震度6強~7の地震に耐えられるよう設計されています。
事業所 | 内容 |
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豊岡工場 | 廃水処理困難なために濃縮処理を行っていた廃酸、廃アルカリの処理工程を導入し、廃液由来の特別管理産業廃棄物をゼロにしました。 |
掛川工場 | 廃水処理施設を増設し、ピアノ製造工程から出る接着剤を含む廃水を社内で処理。廃棄物削減効果約90t/年 |
接着剤を含む廃水の処理能力を増強し、廃棄物削減効果約270t/年 | |
北見木材(株) | 液状廃棄物減容設備CDドライヤーを導入し、廃水汚泥などの廃棄物排出量を約50%削減 |
化学物質の管理と排出削減
ヤマハグループでは、化学物質の使用による人や環境への悪影響を最小化するために、「ヤマハグループ化学物質使用基準」に沿って、PRTR※1法対象物質などの化学物質管理の徹底と生産工程や製品からの排出削減に取り組んでいます。国内グループにおいては、使用する化学物質含有材料の安全データシート(Safety Data Sheet/SDS)※2をデータベースで一元管理し、危険有害性や環境への影響の評価および必要に応じたリスク低減措置を行っています。
現在、ヤマハグループの生産工程から排出される化学物質は、製品の塗装・接着時に発生するVOC※3(揮発性有機化合物)が中心です。VOCの排出量については常にモニタリングし、代替化や処理施設導入による排出削減に努めています。(VOC排出量については、ESGデータのページに掲載しています。)
また、中国の全工場でVOC処理施設の導入を完了し、排出量を約90%削減しています。インドネシアのヤマハ・ミュージック・マニュファクチュアリング・アジア(YMMA)でも、使用済みシンナーの再利用に取り組み、排出量を約70%削減しています。
塗装工程における化学物質の排出削減
楽器や自動車用内装部品などに外観の美しさと耐久性を与える塗装工程において、塗料の使用量や有機溶剤の排出を抑え環境への影響を少なくする塗装法を研究、導入しています。これまでに静電塗装、粉体塗装、フローコーター塗装などを自社製品に合わせて用途開発し、生産に使用しています。
(株)ヤマハミュージックマニュファクチュアリングでは、ピアノの生産工程で、部品の塗料を有機溶剤含有のものから水性塗料に切り替えを進めています。水性塗料は作業環境の改善効果もあります。
また、ヤマハファインテック(株)では、型の内部で被膜を形成する「型内塗装」工法を開発、自動車用内装部品に採用しています。従来のスプレー塗装から型内塗装に切り替えることで、90%以上の塗着効率※4を得ることができ、塗料使用量と有機溶剤の大気排出量を削減するとともに、作業現場の換気稼動を大幅に削減、省エネルギーにも寄与しています。この工法によって2022年3月期は約11.9tのスチレンを削減しました。
オゾン層の保護
ヤマハグループでは、オゾン層保護のためにフロン類の使用量削減に取り組み、特定フロン、代替フロンの使用を全廃しています。1993年度に生産工程で使用する特定フロン(CFC類)を全廃した後、金属材料の脱脂洗浄工程において特定フロンに比べてオゾン層破壊係数が小さい代替フロン(HCFC類)を洗浄剤として使用していましたが、地球温暖化への影響が大きいことから、2006年3月期までに全廃しています。
環境関連の事故・訴訟について
2023年3月期において、環境にかかわる重大な法令違反や罰金、科料、訴訟はありませんでした。また、外部に影響を及ぼす事故や重大な苦情などもありませんでした。