持続可能な資源の利用

省資源、廃棄物の削減

環境破壊や資源枯渇をもたらす大量生産・大量廃棄から脱却し、持続可能な生産および消費行動へ移行することが求められる中、ヤマハグループは製品の小型・軽量化や複数製品の一体化、梱包材・緩衝材の縮小化・削減など、さまざまな資源使用量の削減施策を進めています。また、省資源につながる製品の長寿命化やメンテナンス・修理サービス体制の整備、ピアノリニューアル事業など製品を回収・再活用するサービスの展開、地球温暖化や自然環境汚染につながるプラスチックの使用見直しや紙などの再生可能資源への代替、製造工程における廃棄物の排出削減や再資源化など、限りある資源の有効活用に取り組んでいます。

省資源・長寿命化につながるユニット方式の導入

ヤマハでは愛着のある一台を長く弾き続ける設計思想に基づいて、省資源・長寿命化につながるユニット交換・追加方式を導入しています。エレクトーンではユニットを交換するだけで、上達や用途に合わせ上位モデルに進化させる事のできる“グレードアップ”と、旧モデルを最新モデルと同等の性能が実現できる”バイタライズ”で、愛着のある一台を長くお楽しみいただくことを可能としています。ピアノにおいては、消音機能をプラスできるユニットや、自動演奏機能付きピアノに豊富なコンテンツと多彩な機能を加える「ディスクラビアコントロールユニット」など、お手持ちのピアノを幅広く、長く楽しんでいただける後付けユニットを販売しています。

楽器メンテナンス・修理サービス体制の整備

良質な楽器は適切なメンテナンス、部品の修復や取り替えなどで長期にわたって使用が可能になります。ヤマハではピアノや管楽器などのアコースティック楽器のメンテナンス・修理サービス体制を整備しています。

修理技術者の養成

ピアノ調律師養成のための「ピアノテクニカルアカデミー」、管楽器の専門技術者育成を目的とした「管楽器テクニカルアカデミー」がそれぞれ各工場内に併設され、楽器を知り尽くしたヤマハの講師陣がノウハウを活用したきめ細かなカリキュラムで、専門技術者を目指す方々をサポートしています。研修終了後は、全国のヤマハ特約店で修理技術者として日々のアフターサービスを担っています。

楽器ユーザーに向けたメンテナンス支援

楽器が常に良い状態に維持されるよう、メンテナンスガイドブックの整備やメンテナンスワークショップの開催などを通じて、楽器に関する知識や技術を提供しています。

製品の回収・再生による有効活用

ヤマハはご家庭などで使用されなくなった楽器の回収・再生による有効活用に取り組んでいます。ヤマハピアノサービス(株)ではヤマハ製ピアノを補修・再塗装・調律し、また消音機能を付加するなどして、リニューアルピアノとして再び市場へ送り出しています。(株)ヤマハミュージックジャパンでは「ヤマハに返そうヤマハの楽器」の呼びかけで、使われなくなったヤマハ製楽器を査定、買い取りする「音バトン」を行っています。買い取った製品に技術者によるメンテナンスを実施し再生・再活用することで、限りある資源の有効活用につなげています。

持続可能な原材料やリサイクル材の活用

希少木材に代わる素材の開発や、バイオマス由来樹脂など再生可能な素材を製品に採用する取り組みの推進に加えて、リサイクルポリスチレン材料をスピーカーボックスの一部に利用するなど、リサイクルプラスチックの製品への採用も進めています。

プラスチック包装材の使用削減

地球温暖化や自然環境汚染防止の観点から使い捨てプラスチックの使用が見直される中、ヤマハは包装材のプラスチック使用削減に取り組んでいます。2025年3月期内に新規小型製品の梱包材プラスチックを廃止する計画です。

[写真] プラスチック緩衝材を廃止したワイヤレスイヤホン

プラスチック緩衝材を廃止したワイヤレスイヤホン

[写真] 管楽器用クリーニングスワブの包装をプラスチックから紙製に変更

管楽器用クリーニングスワブの包装をプラスチックから紙製に変更

木材資源の有効活用

木材加工において、歩留まり向上によるロス削減を進めるとともに、工程から出る木くずの再利用・再生利用を進めています。端材の他部品への転用や、原材料・堆肥・燃料としての利用(売却もしくは処分)のほか、国内ピアノ製造工場の木材加工工程から排出されるおがくずを、牛の寝床となる敷料に活用していただくというユニークな取り組みも行っています。

[写真] 従来は廃棄していた端材を隅木(ギターボディ内部の補強材)に転用

従来は廃棄していた端材を隅木(ギターボディ内部の補強材)に転用

木材資源への取り組みについてはこちらで詳しく紹介しています。

「『楽器の木』展」で「アップサイクリングギター」を展示

2022年12月よりヤマハ銀座店にて、楽器に使用する木材についての情報や当社の木材や森林保全への取り組みを紹介する企画展「『楽器の木』展」を開催しています。試作品として、さまざまな楽器づくりで発生した未利用材※1からの「アップサイクル※2」で製作した「アップサイクリングギター」を展示。これは材料の希少性に頼らずに楽器自体の価値を高める研究の一環で生まれたもので、ヤマハが良い楽器を提供し続けるために新たに行った実験的な取り組みを、木の特徴と音の関係性など楽器作りの中での知られざるコラムや木材の実物展示などとともに、ご紹介しています。

  • 1 木材を厳選し加工する過程で発生し、楽器づくりに使用されなかった材料や端材のこと
  • 2 捨てられるはずだったものに新しい価値を与え、より高い価値のものに生まれ変わらせること
[写真] アップサイクリングギター

アップサイクリングギター

[写真] 銀座店の展示の様子

銀座店の展示の様子

廃棄物の排出削減と再資源化

ヤマハグループは、工場や事業所から排出される廃棄物の削減と再資源化を推進するため、回収・分別などのシステムを確立し、環境マネジメントシステムの中で目標を設定して取り組んでいます。

2023年3月末現在、ヤマハグループ(国内)における再資源化率は約99%です。

また、廃棄物の処理責任を確実に果たすために、廃棄物処理を委託している業者について、現地確認を定期的に行い、廃棄物が適正に処理されていることを確認しています。

取り組み事例

事業所 内容
豊岡工場 研究開発部門から出る希少金属含有廃棄物を有価物処理に切り替え、資源を有効活用
掛川工場 2021年より木材加工工程から排出されるおがくずを猫砂として有効活用
蕭山ヤマハ楽器 楽器の塗装ブースで用いる循環水を清浄に保ち、長持ちさせることで塗装工程廃棄物を削減。廃棄物削減効果約120t/年
ヤマハファインテック(株) 設備不良や品質不良の改善によってカーパーツの不良品を削減。工場全体での廃棄物排出量を16%削減するとともに、生産性の向上によって省エネ・省資源も実現
[写真] CDドライヤー(豊岡工場)

CDドライヤー(豊岡工場)

[写真] CDドライヤー(北見木材)

CDドライヤー(北見木材)

廃棄物関係のデータについては、ESGデータのページに掲載しています。

製品や容器包装の再資源化

EUのWEEE指令をはじめ、各国、地域における製品や容器包装などのリサイクル法令に対応するとともに、日本国内では使用済みエレクトーン製品の回収拠点を全国に整備し、回収・リサイクルを行うなど資源の有効活用に努めています。

水資源の保全

ヤマハグループでは、製品の洗浄工程や設備の冷却などで水資源を使用しています。水資源に関するリスクについてはグループ全体で実施する総合リスク評価に加え、全ての拠点について水リスク判定ツールやアンケート調査により「物理的な水ストレス」、「水の質」、「水資源に関する法規制リスク」、「レピュテーションリスク」を評価しています。現在、水資源に乏しい地域での大規模な生産活動はしておらず、取水による環境への大きな影響はないと認識しています。また、水を大量に使用かつ取引金額の多いサプライヤーに対し、取水量や水リスクの認識、被害事例などの報告を求めるなどし、バリューチェーンでの水リスク把握にも努めています。水資源の持続可能な使用に向け、2020年3月期分よりグループ全体の取水量について第三者検証を実施し、さらなる管理向上を実現しました。現在ヤマハでは管楽器のめっきや洗浄工程において冷却水の循環利用や逆浸透膜(RO膜)装置などによる工程廃水の再生利用、用水設備の漏えい対策など、水使用量の削減に取り組んでいますが、2031年3月期に15%以上削減(2018年3月期比)する目標を設定することで、さらに水使用の効率化を推進していきます。

取水量

[グラフ] 取水量
  • 取水量…地下水のくみ上げ量、水道水・工業用水購入量の総計
  • GHG、取水量データの集計範囲はヤマハ(株)本社事業所および全世界の主要生産工場、リゾート施設(ヤマハグループ全拠点の95%以上と推測)

取水量や水の再生利用に関するデータについては、ESGデータのページに掲載しています。

節減や再生利用の取り組み

蕭山ヤマハ楽器

管楽器、打楽器の製造を行っている中国の蕭山ヤマハ楽器では、純水レベルまで再生する性能を備えた廃水処理施設を導入して以来、廃水の約80%を工程用水として再利用しています。(浙江省電気めっき企業汚染改善検収方案※1適合)また、管楽器の銅管部品の熱処理に使用する焼鈍炉の冷却を、循環水で供給可能な方式に変更し、年間約5,700トンの水を削減しています。

  • 1 電気めっき工場における環境保全のための浙江省の法律。電気めっき工程を持つ企業に、環境保全体制や設備などに関する56項目の要件を課しており、銅、ニッケルなどの金属については、一般の工場排水基準よりも厳しい基準が設定されています
[写真] 廃水処理施設

廃水処理施設

[写真] 循環水で供給可能な冷却装置

循環水で供給可能な冷却装置

ヤマハ・ミュージカル・プロダクツ・インドネシア

管楽器の製造を行っているヤマハ・ミュージカル・プロダクツ・インドネシアでは、廃水の60%以上を再利用できる廃水処理施設を導入しています。また、廃水処理プロセスの合理化によって、薬品使用量の削減も図っています。

リコーダー生産工程では、洗浄水を循環再生利用できる設備を導入し、年間約12,000トンの水を削減しました。2019年には他工程にも展開し、さらに1,300トンの水を削減しています。

[写真] 廃水処理施設

廃水処理施設

杭州ヤマハ

ピアノ、ギターの製造を行っている杭州ヤマハでは、厳格化する排水基準に対応すべく、廃水を再利用可能なまでに浄化することが可能な廃水処理設備を導入しています。同設備で処理した廃水を冷却水などとして再利用することにより、年間約10,000トンの水資源を節約しています。

[写真] 廃水処理施設

廃水処理施設

[写真] 廃水を冷却水などに再利用

廃水を冷却水などに再利用

ヤマハ・ミュージック・インディア

2019年に竣工したヤマハ・ミュージック・インディアでは、完全クローズドの廃水処理設備を導入しています。工程から排出される廃水は100%再利用され、工場外へ排出されることはありません。

[写真] 廃水処理施設

廃水処理施設

[写真] 工程廃水を100%再利用

工程廃水を100%再利用

ヤマハ・ミュージック・マニュファクチュアリング・アジア

電子楽器の製造を行っているヤマハ・ミュージック・マニュファクチュアリング・アジアの廃水処理施設では、2019年にRO設備を導入し、処理水を工程用水に再利用している他、チラーに噴霧し冷却効果を高めることで年間約120,000kWhの節減を行っています。

[写真] RO設備

RO設備

ヤマハ・ミュージカル・プロダクツ・アジア

2020年度に生産開始したヤマハ・ミュージカル・プロダクツ・アジアでは、工程水への再利用を考慮した最新の廃水処理施設を導入しています。

[写真] 廃水処理施設

廃水処理施設