製品・サービスの安全と品質保証

製品・サービスの安全と品質への取り組み

ヤマハグループはお客さまに満足していただける製品・サービスを提供し続けるために、品質や安全性の管理、製品・サービスに関わる情報の適切な開示に努めています。

品質保証

品質マネジメント体制

ヤマハグループでは、製品・サービスを通してお客さまに顧客体験を提供し続ける品質マネジメントを推進するために「グループ品質管理規程」を制定し、それに基づく品質マネジメントシステムを運用し、品質向上に努めています。

グループ全体の品質方針・目標や重要施策は執行役員を委員長とする「品質戦略委員会」での審議を経て、代表執行役社長からの指示によりヤマハ(株)品質保証部長が各事業部門およびグループ企業へ展開します。各部門およびグループ企業は、グループ品質方針・目標に沿って部門目標を設定し、ヤマハ(株)品質保証部が、これらの達成状況の確認と品質監査などによるモニタリングを行い、品質戦略委員会に報告します。

また、重要な品質問題の発生・対応状況をヤマハ(株)品質保証部長へ集約することを規定し、グループ全体における品質管理のガバナンス強化も図っています。

[図] ヤマハグループ全社品質マネジメントシステム

品質マネジメントシステム認証取得拠点

2023年3月末時点で以下の認証を取得しています。グループ全体(グローバル)における取得率は77.4%(従業員人数ベース)です。

ISO 9001:7事業領域で認証取得

IATF 16949:1事業領域で認証取得

  • ヤマハの主要事業である3つの楽器事業、音響機器事業、部品・装置事業、ゴルフ事業にて認証取得しています

品質監査

各事業部門およびグループ企業の品質マネジメントシステムやその結果である製品・サービスがお客さま満足の実現に有効であるかどうかの観点から、ヤマハ(株)品質保証部の監査員が各事業部門およびグループ企業の品質監査を実施しています。品質監査では、品質マネジメントシステムの適合性・有効性に関する対面の監査だけでなく、実際に販売されているヤマハグループの主要製品(年間約20製品)に対し安全性・有用性や表示の適切性を確認する製品審査も行っています。品質監査で抽出された問題点やベストプラクティスは、各事業部門およびグループ企業にフィードバックすることによって、品質マネジメントシステムの維持改善・有効性向上さらにはお客さま満足度向上につなげています。監査は製品事業だけでなく、リゾート事業などのサービス事業におけるお客さま安全の視点でも行っています。さらに監査の結果を踏まえ、必要に応じて全社品質マネジメントシステムの改善を推進しています。

また、各製品事業部門では、事業が所管する国内外のグループ企業を指導・監査し、製品品質の向上に努めています。

[写真] 製品審査

製品審査

製品・サービスの安全性確保

ヤマハグループでは、安全に配慮した製品設計や安全性審査、関係する法令・規格への対応を通じて、製品の安全性確保、向上に取り組んでいます。

安全に配慮した製品設計

開発時のデザインレビューにリスクアセスメントを組み込むなど、ヤマハグループでは安全に配慮した製品設計に取り組んでいます。リスクアセスメントでは、設計段階において、それぞれの製品や使い方に関わる潜在的なリスクを抽出・想定し、これらリスク要因の軽減、排除の検討を設計プロセスに組み入れます。

そのためにリスクアセスメント手法であるR-Map手法の定着を図り、リスクアセスメントの有効性向上の活動を進めています。

  • R-Map手法とは、日本科学技術連盟が提案した、リスクを6×5のマトリックス上で表現する手法。設計時のリスク低減、製品のリスク評価に用いられる。経済産業省/NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)においても、R-Map手法によりリスクを評価している

製品の安全性評価

リチウムイオンバッテリーをはじめとする部品、製品の安全性確保のため、耐火・防爆性能を完備した試験棟を整備しました。安全性評価を社内で完結できる環境を整えるとともに、各種安全性評価方法の開発ならびに劣化寿命予測などの各種研究にも取り組んでいます。

[写真] 試験棟

試験棟

[写真] 研究風景

研究風景

各国の製品法令・規格への対応

製品の品質や安全性、環境保護に関する世界各国の法令・規格を確実に順守するため、各種規制の動向監視や社内方針の決定、運用の体制を整えています。

法規制の拡大・改定や自主基準の付加などにより社内基準を制改定する一方で、現地法人との情報連携により、各国法規制の変化に迅速・適切に対応し、法規制情報を管理する仕組みを強化しています。

近年、電磁波や省エネに関する規制が国際的に強化されていることから、ヤマハ(株)では電磁波測定設備をはじめ各種測定・分析・評価機器を社内に設置し、規制のあるすべての国に向けた製品や部品の試作品評価などを実施しています。また、化学物質に対する規制が世界各国で強化されていることを受けて、製品に含まれる化学物質の管理システムを構築・運用するとともに、「製品に関わる化学物質の含有基準」を制定しています。製品の設計・開発にあたっては、この基準に沿って含有化学物質をサプライチェーン全体で管理し、順法性の確保と環境負荷の低減に役立てています。

[写真] 電磁波測定に使用する電波暗室

電磁波測定に使用する電波暗室

製品事故時の速やかな対応

万一、市場で製品事故が発生した場合、事故を知った従業員が直ちに担当部門や品質保証部門に伝達し、お客さまの安全確保を最優先するための体制を整えています。報告を受けた担当部門は速やかに各事業の品質保証部門に事故発生を報告するとともに、被害に遭われたお客さまへの対応や行政報告、再発防止に向けての対策を推進します。品質保証部門が重要な案件と判断した際には、経営トップにも報告するとともに、ヤマハ(株)品質保証部門長は全社関係部門を招集し、対応を協議します。

製品・サービス情報の開示

ヤマハグループは、お客さまに製品やサービスの内容を的確に伝える広告・宣伝を行うとともに、法令に従い製品・サービスに関する正確な情報を表示することをコンプライアンス行動規準に規定しています。

さらに、製品・サービスや施設の提供により人々の生命、身体および財産に被害を与えることのないよう、安全に関する情報提供・開示を適時、適切に行っています。

製品・サービスの適正な情報開示

製品・サービスに適正な表示がされるよう、確認プロセスを品質マネジメントシステムに組み入れています。

製品・サービスについて仕様などの基本情報のほか、安全に使用していただくためのポイントを取扱説明書やカタログ、ウェブサイトなどお客さまの目に触れやすい媒体に掲載し、事故防止のための安全啓発を行っています。なお、学校用楽器・機器に関する安全啓発情報はウェブサイトの他「学校用楽器・機器カタログ」にも掲載しています。

製品の不具合や、製品・サービスに起因する事故が発生した場合には、法令に基づく関係当局への報告、お客さまの安全に必要なリコールや積極的な情報開示を迅速かつ適正に行うための手順・フローを定めています。重大性や緊急性、購入・使用などの実態に応じて、ウェブサイトへの掲載や記者発表、新聞・専門誌などへの社告掲載、SNSによる情報発信、ダイレクトメール・お電話などによって情報伝達の徹底を図っています。

2023年3月期において、新たに公開したリコールはありませんでした。

製品・サービスの品質・安全管理のための教育

ヤマハグループは、製品・サービスの品質・安全性を向上するとともに、関連する法令や社会要請に対応していくための教育・研修を実施しています。

品質管理・品質意識向上に関する教育

ヤマハグループでは、人事教育に「品質技術」の専門教育と階層別教育を整備して、従業員の品質への意識向上と品質管理のスキル向上を目指しています。2023年3月期は品質工学コース、製品安全リスクアセスメント(R-Map)コースなどの各講座を開催しました。今後は、技術系中堅人材に対する品質関連技術の習得強化を目的とした品質保証教育体系の再整備や、マネジメント層の品質意識向上を目的とした品質マネジメント教育体系の見直しも進めていきます。

2023年3月期は品質不正防止への意識向上に対する施策として、1年間を通し、品質不正に関する事例を学び、未然防止への意識を高める活動を国内全従業員対象に実施しました。

また、お客さまの声や品質対策事例に関して、社内ウェブサイト「顧客体験気づきサイト」への掲載および開発部門のフロアへの物理的な展示を行うことで、それらを通じた従業員の気付きから品質への感度を高め、品質意識の向上を図る取り組みも始めています。

製品安全のための教育

人事教育の中に製品安全リスクアセスメントコースを設けて、事故事例の紹介や、製品開発段階から製品発売後に至るまでのリスクマネジメントなどの教育を行っています。2019年3月期まで実施していた製品安全コースも合わせて、2011年3月期から2023年3月期までの13年間で、開発部門・品質保証部門を中心とした従業員377人が受講し、延べ1,940時間の講義を実施しました。

法規制対応のための教育

各国の法規制に確実に対応していくための教育、人材育成を行っています。2022年3月期からはeラーニングによる、製品に関する法規制の概要とヤマハにおける対応の枠組みの教育を開始しました。

製品・サービスに関する違反などの状況

安全性に関わる不具合・違反などの状況

2023年3月期において、製品の安全面での不具合に関わる市場対応、罰則をともなう法令違反はありませんでした。

表示・広告に関する違反などの状況

2023年3月期において、製品の表示に関する違反は海外で2件(製品または梱包箱へのインポーター住所の記載漏れ、製品への原産地表示漏れ)発生し、指摘に対し適切に対処しました。