だれでもピアニスト だれでもアーティスト

日時 2019年3月2日(土)
会場 横浜みなとみらいホール 小ホール
備考 主催:横浜みなとみらいホール(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)

Disklavierで指⼀本でピアノを演奏

「ピアノを弾いてみたい」。誰かの胸に宿るこんな想いを実現するための社会包摂イベント『だれでもピアニスト、だれでもアーティスト』が2019年3⽉2⽇、横浜みなとみらいホールの主催で⾏われました。

ミニコンサートや来場者体験会

この⽇集まったのは、横浜市⽴中村特別⽀援学校の⽣徒・保護者や、地域の⾃⽴⽀援協議会のメンバーら約300⼈。この日のために特別に練習を重ねてきた中村特別⽀援学校の⽣徒らが順番にステージ上のDisklavierに向かい、SmartKey(スマートキー)機能を使って指⼀本で「きらきら星」を演奏した後、ピアノを通じた「脳活」を提唱しているピアニスト蔵島由貴さんによるミニコンサートや来場者体験会を実施。多くの⼈たちにDisklavierがアシストするピアノ演奏を愉しんでもらう貴重な機会となりました。

ピアノ演奏のバリアフリー化

さらに⼩ホールのホワイエでは、電子ピアノ(クラビノーバCSP-170PE)に開発中の新しい演奏アシスト技術を加えたシステムを特別に出展し、参加者に体験してもらいました。

「弾けない⼈にも、名ピアニストのように、たくさんの⾳を弾いている愉しさを味わってもらうこと」。開発中の演奏アシストシステムとは、演奏者が⼀本指で弾いた⾳以外の部分を、演奏者の⾳に合わせて自動的に鳴らすことのできるもです。演奏者の常に変動するテンポや強弱に歩み寄り、必要な⾳を瞬時に選択し調整し発⾳するという、より⼈間的な伴奏を志向したものです。

体験者の中にはピアノ演奏経験のない⼈たちも数多くいましたが、延べ50⼈以上が「ピアノ演奏のバリアフリー化」の可能性を体感しました。

さまざまな⼈に多様な愉しみ⽅を提供

弾き終えた後、思わず「楽しい…」と呟いたのは、これまでピアノを全く弾いたことがないという20代の⼥性。「もっと難しい曲にもチャレンジしたい」と、引き続き演奏にチャレンジしていました。「伴奏(左⼿)が⼊るのがいいのよね」と語ったのは、「『荒城の⽉』が好きすぎる」というマダム。⼀本指で「荒城の⽉」を演奏し、弾きながらハミングまでして、⼀体感のある演奏体験を何度も愉しんでいました。プロのピアニストからは「このシステムは、動きにブレスが感じられるのが新しい」との声も寄せられるなど、さまざまな⼈に多様な愉しみ⽅を提供することができました。

さまざまな⼈に多様な愉しみ⽅を提供

システム開発者は、「今回の出展でいくつもの気付きが得られた」と振り返ります。アシスト技術は楽をする⼿段にすぎないという批判も想定していたけれど、「弾けないけど弾きたい」と切に願う⼈にとっては、夢を叶える⼿⽴てとして受け⼊れられるという気付き。さらに、普段からピアノを演奏する⼈とピアノ未経験者が連弾する場⾯も⽬の当たりにし、「アシスト技術がもたらすものは、ピアノが弾ける愉しさにとどまらない。⼤切な誰かと⼀緒にピアノ演奏を愉しみ、関係を深められる喜びなのだ」という気付きも得られました。

今回は弾けない⼈を想定し、演奏アシストの振舞いを⼤きく変更し、蓄積された技術ノウハウを活⽤しつつも、アシストはこういうものという枠を⾃ら壊す挑戦をしましたが、結果として、体験者の満⾜度はこれまでで最も⾼く、演奏アシスト技術は障がいの有無やピアノ経験の有無によらず、誰もが、誰とでもいっしょにピアノ演奏を愉しむための⼀助になる、と感じました。