Yamaha Design “Synapses” Make and Play!

2020 / MAKE YOUR OWN MUSICAL INSTRUMENTS

KIDS DESIGN AWARD


身近な材料を使った楽器づくり体験。
日本でのプロジェクト名称:楽器工作「つくろう、ならそう!」

モツヨロコビ持つ喜び / Pride

自分で楽器をつくることで、ならす喜びはいっそう大きなものに。楽器や音楽に触れる原体験をより多くの子どもたちに届けるため、小さな子どもでも作りやすく、楽しくならせる仕組みをデザインしました。

アジガデル味が出る / Appreciate

好きな色でいい。形も自由でいい。音をならす楽器の本質だけを残したら、子どもたちー人一人の個性を引き出す余白が生まれました。体験の場には、いつも子どもたちの奏でる音や笑い声があふれています。

スグツカエルすぐ使える / Instantly-usable

家の中にある材料で簡単につくることができたら、楽器はもっともっと身近な存在になれるはず。見てわかりやすい「つくり方」と、手軽に取り組める「型紙」を用意したことで、国内だけでなく、海外の子どもたちにも楽器工作の魅力が広がっています。

ヒクスガタ弾く姿 / Dual-View

「つくろう、ならそう!」が目指したのは手づくりした楽器を夢中になってならす子どもたちの姿。そんな様子を想像して、演奏がもっと楽しくなる伴奏音源も制作しました。自分の手でつくり上げた楽器を持って、思い思いに音をならす子どもたちは、誰もがミュージシャンです。

ショウジキ正直 / Honest

「弾く」「吹く」「叩く」という基本的な動作でならせて、できるだけ少ない材料や工程でつくることに挑戦したら、楽器が本来持っている音をならす楽しさがいっそう広がりました。


Ryo Suzuki
Ryo Suzuki
Designer
Yamaha Design Laboratory

子どもたちが教えてくれた、余白のある楽器の面白さ。

企画のベースには、プライベートで取り組んできた災害遺児とのものづくりワークショップや自宅でできる工作を発信する活動がありました。自宅で過ごす時間が増えた世の中に向けてできることはないか。2020年コロナ禍で初めての緊急事態宣言が発令されたころ、温めていたアイデアと社内で実現する機会が結びつき、楽器工作「つくろう、ならそう!」プロジェクトが生まれました。

この工作は、段ボールや身近な素材から手軽に楽器をつくれるもので、ホームページから型紙をダウンロードして制作します。発案からリリースまでにかかった期間は約3ヶ月。細部を作り込みたくなる気持ちを抑えて、子どもたちが夢中になれる「つくる」と「ならす」を届けることに注力しました。自粛期間が長引く中で開発を急ぐために、同僚のお子さんに実際に遊んでもらいながら試作を重ねました。子どもたちのリアルな反応をすぐに設計に反映させるライブ感のある開発は、理想的なものづくりでもあったと感じています。

楽器は、小さな子どもにも演奏しやすい「弾く」「吹く」「叩く」の基本動作から、ギター(弦楽器)、ラッパ(管楽器)、ドラム(打楽器)を選びました。シンプルな構造を目指すと、自ずと楽器の本質を見つめ直すことにつながります。ラッパであれば、吹いた息が変化して反対側から出てくる点が管楽器らしいポイント。だとすれば、2つのメガホン状の紙を重ねて片方を動かし、息の流れを変化させることで音質や音量を操る体験を提供できないかと考えました。また、家で手軽につくれるという条件も、企画に柔軟性を与えてくれました。ドラムは最初、丸い形を目指していましたが、子どもには作業が難しくなってしまいます。試行錯誤を重ねる中、ネット通販などでご家庭に溜まっている段ボール箱をそのまま使えないかと考えたことで、いろんな音が鳴るドラムを手軽に実現することができました。

このプロジェクトが日の目を見てから約一年の間、楽器店や保育所など様々な場所でワークショップを開催しています。驚いたのは、子どもたちが思いも寄らないアレンジを加えていったこと。ドラムの箱の穴を増やしたり、中にビーズなどを入れて音を変えたり、遊びながら独自の表現を発見していく子どもたちの姿は、あえて完成をさせていない余白のある楽器の面白さに気づかせてくれました。発案がヤマハの活動としてカタチになっただけでなく、喜ぶ子どもたちの姿を直に見られたことは、この取り組みをしてよかったという気持ちを何倍にも膨らませてくれました。教材やワークショップに使いたいというお声もいただいているので、この活動がさらに成長していくことを願っています。

  • 補足の写真1
  • 補足の写真2
  • 補足の写真3
  • 補足の写真4