Yamaha Design “Synapses”
MP-90
2014 / METRONOME
カンケツ簡潔 / Minimal
蓋を装着すると各面が繋がり、シンプルな台形のシルエットが形成されます。本体と同様に蓋に施したシボ加工は、速度表示や振り子の存在感を和らげ、一体感をより際立たせています。
イツマデモ何時までも / Timeless
強く主張しない、しかし信頼のおける一本筋の通った姿。どのような楽器と共にあっても、寄り添い、時にはプレーヤーの演奏を見守り、時にはサポートします。
ジョウヒン上品 / Elegance
アイボリー、ブラック、ブルー、ピンクの4色のラインナップは、いずれも指紋がつきにくいシボ加工を施しています。アイボリーは象牙調鍵盤色とし、ピンクとブルーは控えめで落ち着いた色調に仕上げました。
ショウジキ正直 / Honest
メトロノームを象徴する普遍的なシルエット。速度表示はくっきり読みやすいハイコントラストな配色とし、数字のレイアウトは自然に見せるため末広がりに微調整しています。飽きのこないシンプルさと実用性を両立しました。
- Keizo Tatsumi
- Designer
- Yamaha Design Laboratory
デザインしすぎないこと。
振り子式メトロノームは楽器の周辺機器としてよく定番と言われますが、MP-90はそのなかでも定番中の定番を目指しました。長い間使い続けても飽きがこないのが定番ですから、流行を追った過剰なデザイン表現は適切ではありません。そこで心がけたのは「デザインしすぎない」ということです。
造形的には、メトロノームを象徴する台形のシルエットを基調とし、四隅に大きめの曲面を施しています。昔ながらの木製メトロノームの普遍性に射出成型の造形的自由度をスパイスとして取り込むことで、ありそうでなかったカタチを創作しました。途中さまざまな可能性を模索しましたが、要素を潔く削ぎ落とす手法に気が付いた結果、ここにたどり着くことができました。また、基本形状を簡潔にした分ディテールには細心の注意を払っています。
実用性を重視し、使用中は余計な造形要素が見えないように蓋脱着の機構を合理化し、速度表示パネルの段差や切欠きを無くしました。また、蓋を付けたときの存在感を控えめに見せるため、表面仕上げは従来のような平滑面ではなく、速度表示や振り子が柔らかく見えるシボ加工を採用しました。それにより本体との一体感を演出するとともに、指紋も付きにくいという効果も併せ持っています。また黒の本体にはスモーク、他の色には無色の蓋を採用したことも一体感の完成度を上げるのに一役買っています。
MP-90は、まるでピクトグラムを立体にしたかのような、わかりやすい、ごく普通のメトロノームです。今回、「デザインしすぎない」ことを体感できたのは大きな収穫です。この製品が樹脂製振り子式メトロノームの原形となることを期待しています。