展示作品の紹介
DESIGN RECIPE
What is “DESIGN RECIPE” ?
デザインは『思いをカタチにする』行為である。その『思い』はデザイナーの勝手な願望ではなく、企画意図や、ブランドメッセージ、つまり商品価値の根幹となるコンセプト(抽象概念)であり、『カタチ』はそれらを一瞬にして直感的に伝える力を持っている。我々はコンセプトを具体的デザインに展開する際の『考え方を考える』姿勢を大切にしたい。本企画展では、味付け(テイスト)ではなく、調理法(レシピ)を語ってみたい。
1 intention & 3 recipes
もはや完成されたと言われて久しい楽器、例えばバイオリンでも、そこに新たな価値を提供できればデザインは進化しうる。新しい電気バイオリンをデザインするケースでは、必要最低限の要素だけで構成されたミニマルなデザインを追求する際も、「ミニマル」の解釈や造形手法は様々に展開できる。一つの「思い」は考え方(=レシピ)の違いで複数のカタチとして結実する。
Histrical context & 6 recipes
楽器の歴史は人類史と同じくらい長く、そのカタチは様々な試行錯誤の末に、今日我々が常識的に思い描く形態へとたどり着いている。現代のデザイナーは、それぞれの楽器に特有な歴史的背景や伝統を踏まえて、継承するものと、変えるものを取捨選択せねばならない。また、最初に開発されたときは「常識はずれ」で「異端児」だった楽器が、現在はスタンダードとなっていることも多い。一見、突飛かもしれないが理にかなうから生き残る、時にはそんな考え方(=レシピ)を見出していく必要がある。
Silhouettes
継続的にリファインが積み重ねられてきた楽器は既に完成された明快なシルエットを持つものも多い。同様に今までにないモノをデザインする際は、新たな価値を一目で伝える必要がある。また楽器のシルエットはプレイヤー視点とオーディエンス視点から見る2種類があり、オーディエンスから見てプレイヤーと楽器が一体となったシルエットが美しくなくてはならない。その明快で印象深いシルエットは、道理にかなった視覚的なオリジナリティによって形作られる。
Colors
永く使われる楽器や機器のカラーリングは、使用者本人の感覚だけでなく、周囲にも多大な影響を与える。インテリアのアクセントになることはもちろん、背景にある音楽文化を色へ置き換えるなど、感情移入するための素地であることも多い。また質感との相乗効果で、様々な表現が可能となっている。人々の感性に訴えるカラーはモノが持つべきアイデンティティと周囲との関係性として表現される。
Interactions
触る、押す、引く、つまむ、ねじる、廻す、、、、そして弾く、そのすべてが触感を介した人からモノへの思いのインプットである。同時にモノはそれに呼応したタイムリーなレスポンスを返し、次のアクションを誘う。経験を経た操作は、艶や深さを増して表現されたものとなり、そうしたエモーショナルな好循環で優れた音や音楽が生まれる。操作系のデザインは人とモノの間で、思いの誠実な媒介者であると同時に、次の思いを誘発するものとして具現化される。