Making Fun Serious
Royal College of Art Exhibition
ヤマハとRCAの学生によるコラボレーション。
プレーヤーと道具の「真剣な」パフォーマンスを提案。
出展概要
プレイヤーが楽器演奏やスポーツをしている姿には視覚的な美しさが伴う。それでは楽器やスポーツ用品は彼らを更に、より「真剣」にさせる最高の瞬間を提供し得るのか?プレイヤーの動きは見る者をその世界に強く引き込み、一方で聴衆の反応はプレイヤーのより素晴らしいパフォーマンスを促す。このエキシビジョンを通し、我々はRCA の学生に対し、それらを誘発する「真剣さ」とは何なのかを問い、またそれらをより大きく増幅する要素とは何であるのか、との疑問を投げかけた。このプロジェクトで我々は、プレイヤーとその道具が創造する、より「真剣な」パフォーマンスの数々を紹介する。
'Making Fun Serious' Concept
この「メイキング・ファン・シリアス」プロジェクトは、ヤマハ・デザイン・スタジオ・ロンドン:代表 竹井邦浩と、公共デザインの中での創造性と問題提起、我々を取り巻く現実を視覚化する能力で知られるユルゲン・ベイとマティーノ・ギャンパーが指導するRCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)デザインプロダクツ科プラットフォーム2、そしてこのプロジェクト・チューターであり、ヨーロッパと日本の両方で活躍するプロダクト・家具デザイナーの安積朋子氏の3者によってオーガナイズされた。
最初に29人の学生がこのプロジェクトのためのリサーチに応じ、その後、その道具はどのように人々からパフォーマーとしての能力と才能を引き出すか、どうしたらデザインは人々に日常生活の中のパフォーマンスを容易に見い出せるか、などの評価基準を経て、9人の学生が選考された。リサーチは様々な手法で行われ、ある者は本やタイプライターなどごく日常的なものを再考察しそれらのアイデンティティに音楽性を加え、またある者はデジタルミュージック演奏のクオリティーそのものを高めることを考えた。これらの提案は公共スペースのサウンドデバイスにまで及んだ。
このRCAとヤマハのデザインプロジェクトは2007年のミラノ・サローネにて展示された、「デザインはいかに音楽リスナーをプレイヤーに変えるか」という企画に続く2回目のコラボレーションである。前回は最終的に6人の学生が発表し、リズムマシンを含む様々なオブジェクト、例えばあらゆるものを音源として利用してしまうユニークなリズムマシンや、音楽から遠ざかっていた人々をもう一度バンドに参加することを促す家具、などの幅広い提案がなされた。
作品
Physical Sequencer
Giuseppe Guerriero

このプロジェクトは、エレクトロニックミュージックにおける視覚と動きの関連性を再考し、それに具体な形を与えること、オーディエンスとプレイヤー両方にエレクトロニックミュージックがどのように創り出されるのか体験してもらうことを目的とした。この楽器はステップシーケンサーの技術を応用し、プレイヤーが自身の体を使って作曲することを可能にした。表面に配置された50個のセンサーがプレイヤーの動きを感知し、演奏されているエレクトロニックミュージックの成り立ちをダンスやシアターのように具体的な体の動きに変換することができる。
Furniture for the Musical Human
Vahakn Matossian

FM4H(ファニチャー・フォー・ミュージカル・ヒューマン)はステージ、パフォーマンス空間、サウンドシステムをコンパクトに内蔵し、誰もが自分自身の声域の可能性を探ることができ、上級ヴォーカリストから音楽全般の初心者まで楽しむことが可能な楽器だ。この快適なラウンジチェアには、マイクとジョイスティック、サウンドホーンからの音声を処理する「頭脳」が内蔵され、プレイヤーはほんの少しのジョイスティックの動きで煌びやかで複雑な音楽的効果を得られる。そして自由且つ繊細・正確に自身が自由に創作した音声を表現し、マイクを通して普通のコミュニケーションでは試したことが無いような音作りに没頭し、喋ること、囁くこと、息をすること、あるいは物悲しい声を出すこと、歌うことなどを楽しむことが出来る。
A Minor Library
Lucia Massari

「生きるための本、それは必ずあるはずだ」
バベルの図書館ーホルヘ・ルイス・ボルへス1941
私はこのプロジェクトにあたり、本はすべてを可能にする道具である、というテーマ設定をした。あなたは音楽を本に書き込み、音楽を本から読む。私のプロジェクトでは、回り道なく誰もがそれを楽しむことが出来るように、本がダイレクトに楽器・音楽に変化する、ということを試みた。人々が普通の本で行っているアクションを少しだけ変えることで、私はその意味を素晴らしい音楽を創造するパフォーマンスへと変換した。
Chromophone
Benjamin Newland

クロモフォンは我々が普段目にしている色から様々な音を作り出すことを可能にする装置だ。ここでは多様な色と音の組み合わせを設定することができ、プレーヤーはそれらを一緒に使うことで色と音、両方への理解を深めることができる。クロモフォンのキットには、色のサンプリングの為に、音を風景や環境から採集できるカメラ、絵や写真から色をサンプリングするペン、様々な場所で音楽を創造・パフォーマンスできる杖、の3つのツールが備わっている。
本体のユニットは採集したカラーを音楽の音色に変化させ、それらをスピーカーユニットから鳴らすことができる。このクロモフォンはプレーヤーを取り囲む環境や風景から音楽を創りだし、視覚的な作曲、そしてそれらに物語、音楽、絵を組み合わせられる可能性を持っている。
Typing the Sound
Fabien Cappello

タイピング・サウンドは私たちが持っているタイピングの能力を音楽的な技能に変え、文章を音楽に変換できるツールだ。
- あなたに音を「読んで」欲しい。
- あなたに文字を「聞いて」欲しい。
描かれた言葉がミュージックパフォーマンスのインターフェイスになる。そこから多くの可能性が想像できる・・・。
音が紙の上に轍となって残り、私の音楽は読むことができる。
- あなたに音を「読んで」欲しい。
- あなたに文字を「聞いて」欲しい。
恐ろしい物語すら、とても美しい音楽に生まれ変わることができる。そしてそれぞれの言葉がお互いの意味を心地良い音に変えてゆく。
Faraday Drone
Matthew Plummer-Fernandez

1831年、マイケル・ファラデーは電磁石の機器を使い、電気は人力によって作ることができることをデモンストレーションした。このいわば人力による楽器と電気機器の中間に位置するような機器は、私に何かを発見することの基本へ立ち帰ることと、それらをある種の人力による電気楽器の創造に応用することを思い起こさせた。手で巻き上げ、作動された電気モーターは、電気と磁界を発生する。これらがスピーカーから鳴るとき、コントロールされてできたドローン・サウンドの音程・音量と、プレイヤーのニュアンスとが同調される。このアナログとデジタルによって創られた人力による電気信号は、より新しい操作の感触と音色を創造することができる。
Ceramic Sound Landscape
Jozephine Duker

柔軟性のあるラバーの脚によって支えられた磁器のボウルから成るこのサウンド・ランドスケープは、手そのものや、ペンのような日常の道具を使い、人々に音楽的な楽しみとパフォーマンスすることの楽しさを感じさせる。このツールは、例えばオフィスや学校などの、ある場所から他の場所へ移動する通路のような場所にも置くことができ、人々に音楽的な楽しさを提供する。一つの鋳型から違った厚さと大きさの磁器のボウルが作られ、これらはグリッドの中で高い音から低い音までの様々な音程を創り出す。プレイヤーはそれら磁器の表面を探りながら心地よい音の出し方を上達させてゆく。
Daily Tempo
Yiting Cheng and Ting-Chung Cheng

人々はそれぞれ違った生活のリズムを持っている。我々はその中から「服を着重ねてゆく」という日常の行為を通じてユーザーの日常習慣・リズム・感情・音楽のテイストを映し出すようなウェアラブルな楽器を創りたいと考えた。そのためにボタンやファスナー・ベルクロ・ピンにビートや調子・エフェクト・音楽のジャンル選択など、それぞれ違う機能が割り当てられた衣服のパーツを使った。ユーザーは心地よい音のコンビネーションを見つけるために練習をし、最終的に彼らの体の動きで作り出され視覚化された音やパフォーマンスを創造することができる。
Knitting Scanner
Azusa Murakami

ニッティング・スキャナーは衣類に編まれたパターンを読み、音楽に変換するツールだ。私は、編み物と音楽がリズム・パターン・構造という点と、継続的な練習を通じて上達する、という点で多くの共通項を感じたので、音楽の楽しさを視覚的に表現する一つの方法としてこの「ニッティング」というテーマを選んだ。プロジェクトの初期では、編み棒の動きの面白さとニッティングパターンそのものの楽しさという、編み物の大きな2つの要素を音楽的なパフォーマンスにどう昇華できるか、を試みた。いくつかの試作品による両案の研究の後、パターンリーダーを製作し自分が創作したパターンを読み取らせる案を、ニッティングの文化的、あるいはインタラクティブな側面を探索するためのより効果的な方法として選択した。