コミュニケーションデザイン
グループ マネージャー
佐藤 大造
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合理的視点と情緒的視点のバランス

スペースデザイン専攻からヤマハに入社したので「新人にも最初から一つの製品を任せる」ヤマハデザイン研究所のスタイルの洗礼を受け、実務面でかなり鍛えられました。いくつかの製品に携わっていくうちに、インダストリアルデザインはスペックや製造上の制約、マーケットのニーズなど、様々な課題を客観的価値観で解決する「ソリューション」であることが体得できました。しかしある時、スペックに特徴がないため課題解決だけでは魅力が出せないPSR-18というキーボードのデザイン依頼がきました。そこで『楽器を弾く時の気持ちの良さをデザインで実現したい』と思い、ボディや腕木を曲面形状にしたり、スピーカーグリルの表現を工夫したところ好評を博し、後継機種も生まれました。その仕事を通じて合理的ソリューションだけでなく「情緒的価値で魅力を出すこと」の大切さを知ることができました。その後スポーツ事業部に行きスポーツ用品のデザインに長く関わりましたが、スポーツデザインにおいては「プレイヤーの気持ちを鼓舞する」「多大なプレッシャーがかかるその瞬間に信頼できる」ということが最も重要な役割でした。その時代の仕事を通して、特にデザイン価値の情緒的な側面を意識しました。時には自分がデザインしたテニスラケットを使うプロ選手の試合を観て自分のことのようにドキドキしたりしていましたが、使用シーンを目の当たりにすることで選手の気持ちが少しでも理解できたように思います。その後はPA機器やシンセなど様々なプロが使う道具をデザインしました。これらはソリューションとして要求されるレベルが非常に高い機能的な道具ですが、複雑な方程式を解いて情報を整理するだけでなく、時にはちょっと目に入ってくるリズムのような要素を入れたり、今までにない色を使ったりすることで情緒的な部分をプラスし、魅力があるものにしたつもりです。ソリューションはあくまで課題に対して合理的に考えることであり、そのクオリティは、限りなく上限に近づくものだと思います。一方で、プレイヤーを鼓舞する、手にした人をドキドキ・ワクワクさせる、という情緒的なもの、その表現に限界はなくオリジナリティを持つものです。デザインではその両方のバランスを考えることが大切だと考えています。

写真は左上から、キーボードPSR-18、スキーブーツ900-series、テニスラケット PROTO FX-TP、シンセサイザー MOTIF XS7 ステージピアノ CP1 デジタルミキシングコンソール DM2000

佐藤が手がけてきたプロダクト製品群

魅力価値を伝えるコミュニケーションデザイン

現在は主にコミュニケーションデザインの仕事をしています。これは情報を合理的に整理し、伝達するクオリティを高めつつ「情緒的な価値のオリジナリティ」を効果的にお客さまに伝えていく取り組みです。以前から国際デザイン賞の応募やヤマハデザイン展の開催など「デザインの広報」を継続してきましたが、Yamaha Design "Synapses"などをコンテンツとするデザインサイトを広報部や関連会社のWEB制作陣と協力して立ち上げたことが、コミュニケーションデザインの大きなステップとなりました。
デザインは製品が完成すれば終わりではなく、国際見本市の展示や店頭展示からはじまって、製品カタログ・ウェブサイトなど「製品がお客さまの手届くまで」のプロセスも一貫したコンセプトでデザインされるべきです。お客さまはまず広告やウェブなどを通して製品を見て、さらにその向こうにブランドを見ているのだと思います。お客さまとヤマハの製品とのファーストタッチからていねいにデザインしていくこと。それはCI(Corporate Identity)やVI(Visual Identity)を含むブランディングとして大きなテーマです。私たちはいま、そこから手を付ける必要があると考え、現在さまざまな部署と連携して活動を行っています。最近、ヤマハデザイン研究所の英語の表記を「Yamaha Product Design Laboratory」からProductを外し「Yamaha Design Laboratory」と変更しました。これもプロダクトだけに収まらない、コミュニケーションを含めヤマハそのものをデザインしていきたいというデザイン研究所の意志の現れです。