デザイン研究所所長
川田 学
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以前はカヌーに、今は家に夢中

ワンゲル時代からの旅好きは継続していて、社会人になって山に登らなくなってからも、夏になると毎週のようにカヌーをやっていました。天竜川の支流に気田川という川があり、この川が大変カヌーに向いていて、学生時代からの仲間と1泊2日の川の旅、広い河原で焚き火で御飯をつくり楽しんでいました。夜空を眺めながら焚き火でお酒を呑むのも大好きです。山旅では焚き火は厳禁でしたし、飲み水が何より貴重でした。川の旅は焚き火と美味しい水が飲み放題で、僕には川の方が向いているかも。でも最近は家が完成したばかりで、今は家に大熱中しています。1階に広めの土間があり、これまで創った様々な作品に囲まれて、次のアイデアを練る毎日が本当に楽しいです。小さな菜園で野菜づくりを始めることも楽しみです。

演奏する姿から人と楽器との関係を観察

楽器のデザインをずっとやってきましたが、僕自身は実はほとんど演奏ができません。演奏できないと楽器デザインはできないのかというと、必ずしもそうではありません。医療機器のデザイナーが全員お医者さんである必要がないのと同じです。僕は音楽が好きだし演奏者と楽器を見るのが大好きです。ひと口に楽器と言っても、楽器と人との関係は実に多彩だと思います。ギターのように抱える楽器は触感で味わう魅力が多く、皮膚感覚に訴える存在だと思います。単音と和音を両方操れて同時に唄を口ずさむことができる。道具と会話を楽しんでいるように見えます。

一方管楽器は直接自分の息を吹き込む、まるで身体の延長、内臓と声帯の延長のように見えます。単音楽器で各楽器の音域は限られていますが、集団で和をつくる姿も見ていて楽しいです。またピアノとドラムはどちらも座って演奏する楽器ですが、ピアノを弾くときの浅く座る姿勢と鍵盤上を戯れるような指の動きは独特の美しさです。ドラムの方は斜めに構えて座ってちょっと行儀悪いところがカッコいい。スティックをくるくる回したり。木管楽器、金管楽器、弦楽器、打楽器、そして鍵盤楽器、それぞれ人間が介在するときの関係性が多彩なのです。さらに忘れてはならないのが、オーディエンスの存在。楽器はプレイヤーに心地良く演奏してもらうことと同じくらい、オーディエンスから見てカッコいいことが必須な道具であり、モノを通した人と人との関係、インターフェイスそのものなのです。音楽ジャンルやカルチャーとの結びつきも強く、専門性が高いため、全く新しいものを提案することが本当に難しい世界でもあります。だからこそ、僕の好きな言葉は「期待は裏切らず、予想は裏切る」。こうあって欲しいという期待には応えなきゃいけない、だけど予想どおりじゃダメですよね。これからも「感動を・ともに・創る」ブランドであるために、良い意味で予想を裏切る展開を常に考えていきたいです。

RCA留学時代の作品 / リズムパレット