MATERIAL ORCHESTRA
子供たちが音の発音原理やその機構・素材そのものがもつ特有音などを学べる、6つの作品群を創出。
プロジェクト概要
ニューヨークのメトロポリタン美術館内に新設された子供向けの新しいインタラクティブ・ラーニング・スペース「81st Street Studio」。ヤマハデザイン研究所は、この空間の一区画であるインタラクティブミュージカルステーションのデザインを担当しました。子供たちが音の発音原理やその機構、また素材そのものがもつ特有音などを学べるように、マテリアルオーケストラと呼ばれる6つからなる音の作品群を創出しました。各作品に組み込まれた弦楽器、打楽器、吹奏楽器の基本的な機構や発音の物理現象を体感することで豊かな音の世界に触れることができ、子供たちの感性を育みます。
「81st Street Studio」という子供たちのために開かれた文化や芸術で満ちた新しい世界で、好奇心に溢れた「音」を通して多くの発見を子供たちにもたらせればと思います。
作品紹介
Marimba Woods
森のように立ち並んだ様々な種類の木で作られた音板を叩いて、心地良い音を奏でます。それぞれの音板は正しい音階で鳴るように調整されていますが、叩いてみると、木の種類によって「音の響き」や「サイズ(長さ)と音階の関係」が様々に異なることに気づきます。これは硬さや密度など、様々な性質が木によって異なるためです。楽しく音を奏でるうちに、演奏者は次第に素材の不思議さに気づき、興味を持つことができます。
Standing String
垂直にそびえたつ木の幹のようなボディに張られた、たった1本の弦をはじいて音を奏でます。押さえる指の位置を変えることで弦の「長さ」が、またペダルを踏むことで弦の「張る強さ」が変わり、それによって音が変化します。楽器の最も基本的な発音体の一つである「弦」が振動して音が生み出される原理を、身体全体で経験し、理解することができます。
Woodpecker Chime
紐を引いてリリースすることで、キツツキを模したハンマーがチャイムを叩き、音を響かせます。音源であるチャイムが天井各所に散在しており、それぞれの鳥が異なる音階を鳴らすため、まるで森の中にいるように、空間に広がる様々な音色や鳥の動きを楽しむことができます。
Wall Castanet
大量のカスタネットで埋め尽くされた、インタラクティブな音の壁です。カスタネットの木の種類の違いにより音質が変わり、壁を切り抜いたリングのサイズにより音階が変わります。全身を使って演奏しながら、カスタネット特有の軽やかな音色を楽しむことができます。壁一面のカスタネットは子供たちの好奇心を掻き立て、材質の違いや切り抜きの大きさによってどのように音が変わるのかを学ぶことができるのです。
Sound Surfboard
揺らすと波の音を奏でる、バランスボードのような遊具です。中に入った小さな鉄球が発泡材と擦れながら移動し、ホワイトノイズのような音を生成します。勢いの良い波から、静かなさざ波まで、体の動かし方で音の表情が変わります。小豆とざるを使って波音を再現する昔ながらの音響技法からヒントを得て、子どもたちに自然と受け入れられる音遊びを目指しました。
Bellows Pipe Organ
整然と並べられた管に風を通すことでパイプオルガンのような音を響かせます。土台にある蛇腹蓋で空気を送り出し、管の排気口で生じる空気振動を利用して音を生み出します。管の長さの違いで音程がどのように変化するかを学べ、また複数管へ同時に空気を送り出すことで奏でられる音の重なりを楽しむことができます。リコーダーのようなフル―管の発音原理と和音の仕組みを遊びながら理解できるのです。