2024年3月期 決算説明会 質疑応答

Q1:前期の構造改革費用43億円について、どの四半期に何をしたのか整理してください。また、法人税率が低かった背景を教えてください。

構造改革費用は、第3四半期に中国のピアノフレーム工程の減損、加えて第4四半期にインドネシアのピアノ製造工程の一部減損等を計上しました。税率に関しては、過去に買収した企業の清算を決定し、繰延税金資産を計上した関係で税金費用が25億円ほど低くなっています。


Q2:スライドP4の前期の事業利益増減要因で、一時処理費用44億円の中身を教えてください。

製品クレーム引当が約15億円、残り29億円は部品と一部完成品在庫の評価減です。


Q3:構造改革の効果を含め、スライドP7の事業利益の改善要素について解説してください。

増収・増産、モデルミックス他の48億円の中で、海外工場における人員削減も含め、前期に実施した構造改革の効果が約20億円程度あるとみています。残りの部分は、工場の操業効率改善や、利益率の高いデジタルピアノの売上回復によるモデルミックス改善などの要素が含まれています。また前期に生じた一時処理費用がなくなる分を44億円の改善とみています。


Q4:インフレによるコストアップがある中で、今期の販売価格引き上げの効果について教えてください。

従来から積極的に価格の適正化を行っており、これまでのコストアップ分は価格転嫁できていると考えています。ただしデジタルピアノなど、一部に競争力が少し落ちている商品もあり、状況を見ながら値引きや価格の見直しを実施しているため、今期は価格適正化が大きくプラスに働くことはないとみています。


Q5:電子楽器の地域別の市中在庫の状況と、今期の生産の見通しを教えてください。

鍵盤楽器全体に需要が少し落ちていて、特に中国では落ち込みが大きく、市中在庫の整理には時間がかかるとみています。一方、中国以外の地域では、電子楽器は先行して在庫の整理が進んでおり、今期の生産は回復に向かうと考えています。


Q6:北米の管楽器はESSERによる効果がなくなると思いますが、いつ頃から影響が出るのでしょうか。またどの程度のマイナスを想定していますか。

北米の管弦打楽器は10%の減収を見込んでいます。ESSERは上期で終了し、下期から学校の入札需要が減ってくる想定ですが、ESSERに刺激された個人需要が高水準で推移しており、また州単位で新しい予算がつくとの情報もあり、極端に大きな落ち込みはないとみています。


Q7:北米のギター事業は成長しているのでしょうか。また、中国のギターの現状はいかがでしょうか。

北米のギターは市中在庫が過剰気味で、各メーカーの値引きにより思うような成長を実現できていませんが、当社はもともと強かったエントリーモデルに加え、中高級価格帯に評価の高い新商品を投入し、成長の足がかりを築いています。中国では、ギターはEC販売比率が高く、足元でEC自体の苦戦の影響を受けていますが、他社にシェアを奪われているわけではなく、経済回復に合わせて再度成長軌道に乗せていきます。


Q8:中国の底打ちには時間がかかるようですが、どういう状況なのでしょうか。またピアノ製造工程の減損を実施しましたが、今期も追加的な構造改革費用が発生するリスクはないのでしょうか。

中国のピアノ市場は、他社も含めて市中在庫が高止まりしていて、本格的な回復は来期からとみています。想定外のリスクは排除できませんが、一旦、構造改革は完了したと考えています。


Q9:回復は来期からとのことですが、中国市場の今後の見方を教えてください。

教育政策の変化により鍵盤楽器は厳しい状況が続くと考えていますが、市中在庫の適正化を進め、それに応じてセルインも徐々に回復してくると考えています。それ以外の楽器・音響機器については、まだまだ成長できる領域が多く、特に学校での吹奏楽や老年大学というシニア層向けのカルチャーセンターのような場で、管楽器やポータブルキーボードの販売が増えています。今後は、こうしたシニア層や、趣味・エンタメ需要が成長のドライバーになっていくと考えています。


Q10:前期第4四半期の音響機器の事業利益率はかなり高かったようですが、その持続性について教えてください。

第4四半期に一時的な要因があったわけではなく、利益率の高い法人向けの好調が続いていて、一時費用を除くと、かなり高い利益率でした。法人向けはデジタルミキサーを中心に非常に高い成長を実現しており、今期も高水準の売上を継続できるとみています。また、個人向けは中高級品に特化してモデルの絞り込みなどを行い、利益率を上げていくよう改革を進めています。


Q11:前期の楽器の生産高は、その前の期に比べてどの程度減っていて、今期はどの程度の水準になるのか、製品カテゴリー別に教えてください。

前期は楽器全体で約6%程度の減産でした。今期は、ギターや管弦打楽器は大きな変化なく、電子楽器は後半にかけて増産基調に回帰していく見通しですが、ピアノの減産が継続するため、楽器全体ではまだ減産の水準です。


Q12:期末に向けて在庫を減らす計画ですが、在庫減の内訳を教えてください。また、今期末在庫は適正水準でしょうか?

今期末在庫は、為替影響を除くと前年同期比で実質170億円減とみています。製品で100億、部品・材料・仕掛品で70億減という内訳です。ピアノを中心に、まだ若干余剰感がありますが、適正水準に近づいてくるとみています。


Q13:山浦社長が従来路線で継続したいこと、一層強化が必要と思っていることを教えてください。

スクールプロジェクトや、地域ごとの音楽文化に則した商品開発など、今後も音楽普及と事業を両輪で続けていきたいと考えています。また、コミュニティや場作り、コンテンツなど、サービス分野の強化が必要だと考えています。新しいビジネスの種を蒔き、その育成を加速していきたいと考えています。


Q14:次期中計に向けた市場全体の見方と、今中計で当初掲げていた事業利益率14%という目標に対する考えをお聞かせください。

楽器・音響機器とも、市場にはまだ伸びしろがあるとみています。ただし、ハードウェアだけで成長を続けていくのは難しく、サービスを加えることで全体の売上を底上げしたいと考えています。事業利益率は、前期かなり落ち込んだので、一気に14%まで上げるのは困難ですが、構造改革を梃に一刻も早く二桁に乗せたいと考えています。


Q15:今後、中期的な事業成長のけん引役はどの辺りになるのか教えてください。

商品ではギターや電子楽器、車載オーディオなどが成長を牽引していくと考えています。さらにサービスの領域で大きな成長を期待しています。地域ではインドの成長が顕著で、新たに販社を立ち上げたフィリピンなど、人口が多く、経済成長と音楽文化の普及が期待できる新興国市場の成長を着実に取り込んでいきます。


Q16:今後、キャッシュを振り向ける先として成長投資の観点で考えをお聞かせください。

減産で工場投資は一旦低調になっていますが、インドやインドネシアでは敷地も確保しており、市況の回復に合わせて増産投資が出てくると考えています。またM&Aや、サービスの領域で売上を伸ばしていくための投資も考えています。